提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


若手雇用・女性の活躍...さまざまなアイデアで地域を盛り上げる

2008年10月10日

株式会社 ウィング甘木 松岡 吉寛さん(福岡県朝倉市)


 福岡県中南部、筑後川流域に位置している朝倉市。「三連水車」や「博多万能ねぎ」で知られる朝倉市で、さまざまなアイデアを駆使し、地域の農業を盛り上げている会社がある。水田農業経営と産業用無人ヘリ防除などの農作業受託を行っている株式会社「ウィング甘木」だ。


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 :ハローによる代かきのようす /  :女性による田植え作業


 同社は、個人経営と会社との新しい仕組みを展開。また、若手の育成や女性活躍の場の創出、新たなビジネスへの挑戦など、人を育て、地域を育むため、数多くのアイデアを打ち出し、実行に移してきた。
 現在、経営耕地面積は、水田33.5ha、畑0.2haに及ぶ。水稲(11ha)、麦(32ha)、大豆(12ha)の生産販売のほか、作業受託や燃料等の配達など経営は多岐にわたっている。今後の地域農業の形として注目を集める同社の代表取締役である松岡吉寛さん(59)に話をうかがった。


経営の原動力は地域の人材
 ウィング甘木は、平成8年に農事組合法人として設立された。無人ヘリ1機を導入し、個人経営者から作業を受託する形での船出となった。しかし、当初は、受託量も少なく、経営は厳しかった。

 そこで、松岡さんが打ち出したのは、「毎年1つずつ改善する」というアイデア。1年目の冬には、閑散期を利用して、燃料の受託・配送を開始。2年目には、女性だけのアスパラガス栽培をスタートさせた。こうしたアイデアが、次々と経営の成果へとつながった。


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 :オクラの調製作業 /  :アスパラガス収穫


 大きな原動力となったのが、「地域の人材」だ。松岡さんの奥様をはじめとした女性たちによる、アスパラガス栽培につながった。「ただ家族の一員として手伝いをするより、経営に参画する方が女性たちのやりがいにもつながる」
 九州で女性初の無人ヘリの免許を取得したのも同社の女性。オペレーターとして大型機械にも乗る。同社にとってなくてはならない人材だ。

 女性だけではない。将来を担う若手も大事な柱だ。ブロッコリー栽培を担当したことで、長期間出荷が可能となり、同社の経営を支えている。もちろん、積極的に社員に採用。役員にも若手を入れ、経営手法の面での育成にも力を入れている。


個人と法人の「新たな二階建て」方式
 同社の経営の一番の特徴は、個人(理事)と法人の「新たな二階建て」方式を確立しているということだ。あくまでも、個人(理事)の経営確立が基本である。土地の利用調整は、個人(理事)が担当する。そして、その個人経営者(理事)から受託する形で、法人が作業を行うといった仕組みだ。そうすることで、顔の見える借地ができ、各地区の土壌や水利条件を十分理解した上で生産が可能となっている。

 実際、同社の事業は、無人ヘリの防除が中心だ。今では3機のヘリで市内の防除を延べ2024ha行っているほか、福島から鹿児島まで水稲防除受託も行っている。その面積は、設立当時より4倍にも拡大している。


 松岡さん自身は、作業受託は、いずれ減っていくと予測しているが、今から受託を減らすことはしない。「受託を減らすのではなく、そのほかの生産を倍にすればいい」と考えているからだ。

 そのため、経営の多角化を図ることにより、経営を安定させている。新商品・新市場開発のため、赤米、黒米を生産しているほか、契約農家に苗を供給し、収穫・生産の買い取りをしている。ほかにも、稲わらの買い取り、販売や機械利用組合へのオペレーターの派遣など、常に新しいビジネスに挑戦し続けている。


計画的な農業機械の利用
 「いかに利益を出すか」。こうしたさまざまなアイデアの裏側には、松岡さん流の経営哲学がある。「なるべく負債は作らない。どんぶり勘定では駄目。経営学を勉強しなければならない」。こうした哲学があるからこそ、経営の安定につながっている。

 巨額な費用がかかる農業機械に関しても同じだ。
 同社は、無人ヘリをはじめ、トラクター、サブソイラー、フォークリフト、コンバイン、野菜移植機など毎年、機械を導入している。必ず機械更新計画を立て、計画的な資金留保に努めているだけではなく、メンテナンスもできるかぎり自分たちで行うようにしている。こうした一連の農業機械の利用が評価され、今年の「全国農業コンクール」で見事、クボタ賞に輝いた。


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 :全国農業コンクールで表彰される松岡さん
 :ウイング甘木メンバーの方々。前列中央が松岡さん


 同社は、社名であるウィング(翼)のごとく、飛躍し続けている。今年5月には、農事組合法人から株式会社へと移行した。次世代の人材へ経営を引き継ぐ体制をさらに整備し、事業拡大を目指すとともに、地域農業をますます発展できるよう努力を続けていく。
 常に心にあるのは「今からでも遅くない」という気持ち。松岡さんのチャレンジ精神は、さらに翼を広げながら、ますます羽ばたいていくことだろう。(杉本実季 2008年9月16日取材)