提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


巧みな補助金活用で体制整備・強化

2007年11月01日

耕畜連携で粗飼料≪稲わら+飼料用イネ≫自給率の向上に取り組む


はじめに

inawara_map1.jpg 静岡県西部、天竜川左岸の3市1町(袋井市・磐田市・浜松市、森町)一帯は、耕地面積にして10,991ha(県全体の約14%)、うち水田面積が3,610haと同県有数の農業地帯であり、また、県内唯一の穀倉地帯とも言われています。中でも周智郡森町は、昭和33年に水田裏作としてレタス栽培が始まり、さらに昭和62年からはレタス後のスイートコーンも導入されるなど、水田の高度利用が確立している地域です。

 今回は、当該地域を管轄するJA遠州中央、及び稲作/レタス農家、畜産農家の連携による粗飼料生産の取組みをご紹介します。


1.「JA遠州中央稲わら供給組合」の成立ち

 水田作を行った後、レタスを栽培するに際しては、その作付前に栽培の障害となる稲わらを圃場外へ搬出する必要があります。森町の場合は当初、この作業を個々の農家で行っていましたが、栽培面積の拡大や天候等により、徐々にこれが農家の負担となりつつありました。


 そこで平成12年、国産稲わらが注目される状況もあり、中遠農林事務所から「国産稲ワラ緊急対策」の活用を働きかけて、地域の酪農家15戸、肉用牛農家1戸により、耕種農家に代行して稲わらの収集作業を請け負う「JA遠州中央稲わら供給組合」が設立されました。

 設立当初は、組合員が所有する機械を借り受けて、稲わらの収集、梱包等の作業を行っていましたが、平成14年に組織体制整備についても支援がなされることとなり、「生産総合対策事業」を活用して自走式ロールベーラを導入。平成16年には、栽培面積が増加している飼料用イネの収穫を補完するために、「強い農業づくり交付金」を活用した機械整備として、2台目の自走式ロールベーラの導入が図られ、稲わらの活用に加えて飼料イネ栽培、稲発酵粗飼料への調製にも力を注ぎ、その両面から粗飼料自給率の向上に積極的に取り組んでいます。


2.飼料用イネ栽培の取組み

 組合による飼料用イネ栽培は、平成12年に中遠農林事務所で実証展示圃を設置し、同畜産及び耕種担当者と森町農林課及び農協農畜産課とが連携して、飼料用イネとはどういうものであるのか、また、その転作作物としての有利性について、畜産農家及び地域の耕種農家に説明を行うところから始まりました。

 それまで、稲わら収集での実績もあったことから、森町役場との連携により飼料用イネの団地化栽培に向けた重点的な推進を実施した結果、耕畜連携の補助金利用で、ブロックローテーションで転作している団地と3年間の契約を結ぶことができました。


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 飼料用イネを作付けすることで転作にもカウントされ、また通常の食用稲同様に水田から稲わらが搬出されるので、レタスの作付けもスムーズに行われています。


 飼料用イネの作付作業の分担は、
●耕種農家からの注文によりJAの育苗センターで育苗
●苗の植え付けは耕種農家が行い、苗代、基肥代ほか機械、燃料代等経費については耕種農家の負担
●組合は移植後、耕種農家から作業を引継ぎ、生育管理等を行い、収穫適期の判断を行った上で収穫調製作業を行います。


 収穫調製作業はモアーコンディショナーで刈取り後、数時間予乾した後にロールベーラにて収集・成形し、できあがったロールはホイルローダで圃場外に搬出されて、各組合員所有のダンプで各地区に設けられた保管場所に運搬。その後にラッピングマシーンで梱包され、その場で2段積みして静置し、稲発酵粗飼料となります。保管場所は管内に7ヵ所あり、注文数と生産量に見合った数量で配分され、各畜産農家は必要に応じて保管場所に取りに行くこととしています。


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 特に今年(2005年)は、8月下旬から雨が続き、食用稲では適期収穫のため、無理をして水田にコンバインを入れたことからその後の圃場排水が悪く、レタス作付けに向けた耕起作業が遅延しましたが、圃場の乾燥を待って収穫作業をした飼料用イネの圃場では、すぐに耕起作業ができました。こうしたことからも、レタス農家からは飼料用イネの栽培拡大に向けた要望が強くなってきています。

 中遠農林事務所では毎年、農協が主催する乾草・サイレージの共励会で、生産された稲わらや稲(WCS)ホールクロップサイレージについて、畜産試験場と連携して分析、評価を行い品質の向上に努めています。


おわりに

inawara_image6.jpg JA遠州中央稲わら供給組合は、確実で丁寧な作業で地域における信頼を築き、生産された稲わら、稲発酵粗飼料は、事務局のJA遠州中央農畜産課を通じて、稲わらは主に管内及び近隣の肉牛農家へ、稲発酵粗飼料は管内酪農家と繁殖和牛農家へ供給されています。

 JAが事務局として、注文や配分、代金徴収を行い、農家の煩雑な作業を軽減し、収集作業や収穫作業に専念できる環境を整えていることが、組合のスムーズな運営を可能にしています。


 組合では来年度、「強い農業づくり交付金」の活用による稲わらストックヤードの設置を計画しており、中遠農林事務所では、事業として円滑な推進が図られるよう事業主体との調整を図る等、これからも組合の活動をバックアップしていく考えです。

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(執筆者  静岡県中遠農林事務所園芸畜産課主任 青山 東一)
(くるみ会情報誌「ニューインプルNo.87」 2006年4月号から転載)