提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


借地による規模拡大で「前向き」に取り組む水稲専業経営

2007年04月20日

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池本孝吉さん (山口県柳井市)


 2007年2月22日、東京都新宿区のフィオーレ東京で開催された、平成18年度農業改良資金活用全国交流会議での池本孝吉さんの発表要旨を紹介する。

 池本さんは、稲作経営、ことに専作は厳しいといわれるのに対し、「前向きに、楽しく、精一杯取り組めば米単作で成り立つ」との考えのもと、山口県田布施農林事務所管内の柳井市で、17haの水稲専作経営を行っている。 

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 私は3年前、55歳の時に、30数年間勤めた会社を退職して、本格的に就農しました。退職時、7haで稲作をしておりましたが、このまま7ha規模の状態を続けようか、それとも経営規模を拡大しようか、随分思案しました。
 稲作を取り巻く状況をみると、米価は下がり続けるし、消費量も最盛期の年2俵から半分以下に減っている。高齢化でリタイアする農家も増えている。農業の中でも、とりわけ稲作は厳しい状況に見えます。

 けれども、発想を転換してみると、国・県・市町村の各段階で支援が非常に充実している。ならば、前向きに取り組むならやっていけるのではないかと考え、規模を拡大することとし、無利子の改良資金1800万円を借りて、60坪の鉄骨倉庫と乾燥機4台を導入しました。
 これにより、それまで利用していたJAのライスセンターでの乾燥調製に伴う費用が低減されたばかりか、計画的な収穫作業が行えるようになり、さらに他から乾燥調整の依頼もくるようになるなど、経営的に安定しました。

 ちなみに農業改良資金についてはインターネットで調べて市に相談したところ、県の田布施農林事務所を紹介されて融資を受けることになりました。


美味しい米は売れる

 現在、耕作面積は約17haですが、私が住む柳井市で約6ha、隣の田布施町で11ha耕作しています。
 現在、有機質肥料を主体とした2種類の米を一部圃場で生産し、3kg、5kg、10kgの3サイズを直売所等で販売しています。味がいいと評判で、そこそこ売上があることから、美味しければ売れると確信を持ちまして、今後はコイン精米で出る米ぬかを活用した有機質肥料による米の生産量を増やすとともに、自らどんどん販売していきたいと考えています。


若者がやってみたいと思う農業に

 息子が3人いて、それぞれ手伝ってくれるのですが、特に29歳になる次男が興味をもっており、田植機はいつのまにか次男が操作して作業するようになりましたので、私は乗ったことがありません。とにかくわきあいあいと息子達と仕事をしています。

 トラクターは、今から10年前に導入したエアコン、CD付で33馬力のものがあるのですが、昨年、新たに65馬力のものを入れました。もちろんエアコン、CD付です。
 機械に乗っても楽しく稲作をやろうという考えが私にはあります。雨の中嫌々雨合羽をきて仕事するのではなく、楽しくCDを聞きながら雨降りでも圃場に出て一気に仕事する。まあ、割高ではありますが、しかし、若者が、稲作でも「こういう農業ならやってみたい」と思う、魅力ある方向で今後もいきたい。


「前向きに」「楽しく」「目一杯」

 農機具展示会には息子と一緒によく出かけるのですが、会場に来ているのは70歳前後の年齢の人が多いように感じます。それを見ると、5年、10年経ったら稲作はどうなるのだろう、水田には背高泡立草が茂っているのだろうか、などと考えることもあります。
 けれども、今後、若者に魅力のある農業であるためにも、前向きに、楽しく、けれど目一杯やっていく必要があります。目一杯やれば、やはりそこで何かが見えてくる。
 将来的には20haまで規模拡大し、乾燥調製機をフルに活用して経営を軌道にのせていきたい。それから現在隣町の圃場への移動はトラクター等を走らせていますが、重量が3t近くあるので、キャリアカー(農業用車両運搬車)を導入して、運搬するようにしたい。


 最後に、農業関係機関には、今後定年退職する団塊の世代の中で、農業に対して前向きな、意欲のある方、才能のある方の掘り起こしをお願いしたいと思います。 (三上宜克)
(月刊「日本の農業」2007年4月号(全国農業改良普及支援協会)から一部修正の上転載)