提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


選ばれる産地づくりへの取り組み 「れいほく八菜」「ISO」で新たな地域像をえがく

2007年04月02日

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窪内勉さん(高知県土佐町)


平成17年度日本農業大賞受賞の産地
 高知県嶺北地域は県都高知市の北に約20km、徳島県に接する標高300mの中山間地にある。吉野川源流域であるこの地域は水に恵まれ、米、肉用牛、夏秋野菜等の生産が行われてきた。環境保全型農業推進の活動や、ISO14001取得など特色ある産地づくりの実績が認められ、平成17年度日本農業大賞集団組織の部大賞を受賞した。


 地域では、「このままでは産地を維持していくのがむつかしい。山間地ならではの特徴を出した農業ができないか」という声が上がっていた。危機感を契機に、豊かな自然や環境を守りながら、自然や環境を活用する農業の展開ぶりを、活動の中心となってきた窪内勉さん(53)にうかがった。


 窪内さんは、高知県土佐町東石原で米ナス21aの雨除け栽培を行っており、現在JA土佐れいほく園芸部米ナス部会長をつとめている。ある日、「環境担当の責任者になってくれ」と突然の電話がかかってきた。即答を迫られ、考える間もなく、大役(のちのISO部会長)を引き受けることになった。


できることからやる」でISO認証取得
 嶺北地域では、平成11年から減農薬栽培や地域内での有機資源(牛ふんや生ごみ等)の循環に取り組んできた。13年には減農薬で作られた野菜8品目(シシトウ、赤ピーマン、米ナス、ミニトマト、トマト、レタス、ホウレンソウ、スナップエンドウ(現在は11品目))を「れいほく八菜」と名付けブランド化。販売にも力を入れ、消費者との交流や対面販売、市場関係者への現地紹介等をおこなってきた。


 平成13年6月、農家、農協、行政が一体となって地域宣言(地域資源の循環と環境の保全について)を発表。意識が高まる中、環境に配慮した農業の取り組みとして、ISO14001取得をめざすことになり、14年7月にJA土佐れいほく園芸部ISO部会を結成した。

 参加農家からは、最初、「ISOって何?」「ISOをとったら儲かるのか」「減農薬だけではいけないのか」など戸惑いの声も聞かれた。実際、ISOの学習会や視察を行い、圃場での実践をはじめたところ、「毎日の記帳はしんどい」「廃資材の分別保管や残渣処理など面倒だ」などの不満がでた。しかし、「とにかく決まりを守っていこう」「できるところからやってみよう」を合言葉に、できるところから手をつけ始めたところ、高齢の男性たちや女性生産者たちが、「あんた、きれいにしゅうかえ」「あたしはこうやって工夫しゆう」と声をかけあうようになり、意識が高まっていった。


 そして、毎月1回、生産者同士、お互いの取り組みの様子を点検し合い、ハウス内の整理整頓、記帳、リサイクル等をすすめた。そして同年11月、園芸部ISO部会は、11品目の各部会員205名でISO認証を取得した。
 ISO取得のカギを、窪内さんは「園芸産地としては条件が悪く、県の認証だけでは足りない、プラスアルファが必要だということを産地のみんなが認識していたからだ」とみる。また、認証をとったことで、生産者たちの農産物への責任感や産地への誇りの気持ちが強くなり、生産者どうしのつながりが生まれ、「れいほく八菜」の知名度や販売額アップだけでははかれない、かけがえのない地域の財産となっている。


「れいほく八○構想」で地域おこしへ
 窪内さんはイベントや出前授業にも進んで出かけていく。対面販売も、必要ならば調理の実演もする。「米ナスの料理、僕もしますよ。産地PRのためには何でもします。県外にだって喜んで行きますよ」。男性であっても、自分で作った野菜を自分で料理できれば、実演ができるしレシピの話もできる。なにより説得力がある、と窪内さんはいう。「何をしたら生き残れるかを考えたときに、積極的に出ていけば必ずファンができます。地元でも、収穫体験や天敵の観察会など、どんどんイベントを打って、産地に人がやってくるよう知恵をだしています」。

 今では環境保全型農業の取り組みが地域全体にも広がり、JA土佐れいほくの他の生産部会でも、ISO認証取得に向けて挑戦中だ。さらに地域の林業、観光、商業、学校等の他産業もまきこんで、「環境にやさしい地域れいほく」実現のために、「れいほく八○(マル)構想」が生まれている。「八稲、八恵、八花、・・・」と、次々に地域で誇れるものが誕生しつつあり、「知りたい、行きたい、買いたい、住みたい」地域を目指す。


 「ISOに取り組んだことで、減農薬栽培など、かえって昔の農業の姿に戻っているように思います。原点に帰ることで、健康な食生活や食育へのとりくみなども認知され、さらに、新たな農業や地域の姿をえがくことができたように思います」と窪内さんは話してくれた。(水越園子 協力・高知県中央東農業振興センター嶺北農業改良普及所、高知県農林水産部農業技術課、高知県農業改良普及協会)
※画像はすべて、嶺北農業改良普及所提供
(月刊「日本の農業」2006年12月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)