提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


「からり」で町も女性も元気! 農業に生きる喜びを農村女性に伝えたい

2007年04月02日

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野田文子さん (愛媛県内子町 内子フレッシュパークからり)


 内子町は愛媛県のほぼ中央に位置する、町並みや内子座で有名な歴史ある町だ。昨年合併して人口約2万人、うち農業人口は2割強を占める。四国山地の中山間地であるこの内子町で、野田文子さん(59)は夫の忠義さん(65)と原木シイタケ25~30万個(菌)、直売用の畑10ha、原木クヌギ1.5haを経営している。また、文子さんは、内子フレッシュパークからり(以下、からり)直売所運営協議会会長や(株)からり取締役でもあり、平成16年には「観光カリスマ」にも任命されている。


 中山間地の農業はきびしい。急傾斜地に所得を確保する作物をつくらなくてはいけない。文子さんが嫁いだ当時、野田家では葉タバコ、シイタケ、果樹、水稲等を作っていた。男性がリーダーで、女性は夫が決めた農作業を黙々とこなし、家事や育児に追われて町中にいくこともままならない。文子さんはそんな生き方に従ってきたが、直売を始めたことで毎日の暮らしが劇的に変わったのである。


直売で自分のやりたい農業に開眼
 きっかけは、「手伝い農業」ではなく「自分の考えで作業、収穫し、収入を得た」ことだった。葉タバコ収穫後の畑の作付をまかされ、このとき初めて農業が楽しく、夢を抱けたのである。その頃、内子町が地域おこしの一環として直売の実験施設・内の子市場を開設した。平成6年のことだ。規格外のシイタケが売れるといいくらいの気持ちで、文子さんは会員第1号になった。


 売れる農業の楽しさや仲間やお客との交流など、今までと違う農業を味わわせてくれる直売に、文子さんはのめり込んだ。シイタケやユズの規格外品など、市場流通では売れないものや花などを毎日直売所に運んだ。1年目に売上は目標の倍、200万円を超えた。夫婦二人で大規模シイタケ栽培を考えていた夫とは、その間衝突が続いたが、真剣な文子さんに忠義さんも理解を示してくれるようになった。「ちょうど子育てが一段落し、20年以上農業をしてもいた。町の施設もでき、夫との葛藤を乗り越えて、全てタイミングが良かったのだと思います」と文子さんは語る。


ドライフラワーが直売所で大人気に
 花が好きな文子さんは、農作業の合間に空いた土地に花の種を植えて楽しんでいた。本格的に直売所に出荷するようになってからは、生花を中心に栽培した。売れ残りをドライフラワーにして売り出したところ、人気商品になった。現在は麦、粟、キビ等の穀物や、色が美しい鷹の爪を中心にドライフラワーにしている。穀物は寿命が長く、特に麦は緑から秋色に色が変わるのを楽しめる。試行錯誤して茎を長く育てるノウハウを得て、毎年種から育てている。


 また、ラベンダー15aは、からりのラベンダー摘み取り体験用で、参加者が文子さんの畑へ足を運び、花の摘み取りを楽しむ。文子さんはこう言う。「都会からやって来る人は、都会では手に入らないものを求めているのです。野菜や加工品だけでなく、言ってみれば、農家の生活が売りになる。だから直売では女性が主役になれるのです」。


フレッシュパークからりの誕生と発展
 平成8年5月、内の子市場からからりに移転し、文子さんは直売所運営協議会副会長となった。その頃、毎日農業記録賞に応募して優秀賞をとったことで、直売所の経営にかつぎ出されるようになった。その後の文子さんの活躍とからりの発展ぶりは、毎日農業コンクール名誉賞(平成14年)、オーライニッポン大賞(17年)、第35回日本農業賞食の架け橋賞審査員特別賞(同)を次々に受けたことでも明らかだ。

 いまやからりは直売所、レストラン、観光農園、農業体験、あぐり亭等を経営し、売上高6億2,000万円(16年)を誇る。農産物直売所は売上が4億2,500万円と売上の3分の2以上を占める、からりの大黒柱だ。規格外品も並んでいた初期とはうって変わり、現在は「内子産を販売する」誇りを持って作られた、こだわりのある自慢の農産物や商品がたくさん並ぶ。それだけではない。からりに人が集まるようになり、町全体も活性化するなど、地域に大きな影響を与えている。


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からり内の特産物直売所


 観光カリスマとして講演等で全国を飛び回る文子さんだが、原点は直売所だ。「農村女性に、自分の経営を持つ楽しさ、素晴らしさを教えたい。一歩踏み出せば出会いがあり、人とのつながり、縁ができる。自分の農産物や加工品にファンが付く喜びは言葉に表せません。自分が明るくなれば農村も明るくなる、そんな生き方をしてもらいたい」とともに「内子町には町の施設があったから実現できた。個人経営ではやれない部分は、ぜひ行政に力になってほしい」と語ってくれた。(水越園子 協力・愛媛県農林水産部農業振興局農業経営課)
(月刊「日本の農業」2006年9月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)