提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


何でもやってみよう! で起業を展開 牛肉の直売とカフェの経営を楽しむ

2007年04月02日

re0606271255-00002.jpg
竹原智恵子さん(栃木県大田原市 ミートショップ前田牧場/ファーマーズカフェ)


 栃木県大田原市若草で牛肉販売店とカフェを経営する竹原智恵子さん(37)。実家の前田牧場で育てた牛の肉を直接消費者に売り、カフェでは牛肉を使ったカレーやローストビーフなどのメニュー、デザート類、お茶を提供している。
 同市奥沢にある前田牧場は、智恵子さんの父、前田昭さん(61)が牛1頭から始めた牧場で、ホルスタイン種のみ2,500頭を肉牛として肥育している。エサは飼料工場の専用ラインで前田牧場仕様に作られたものだ。牛舎の敷料にはバーク(木の皮を細かく砕いた木くず)を使うので、牛舎特有の臭いはそれほど感じられない。この敷料は、引く手あまたでいつも完売するという良質の堆肥15,000t(年間)に変わる。前田牧場では父、母の悦子さん(58)とスタッフ13人が働いており、牛のほかに米20ha、野菜(アスパラガス、ブロッコリー、サツマイモ、イチゴ)等12haの栽培も行っている。


現場での貴重な体験で道を見いだす
 経理の専門学校を卒業した智恵子さんは就職のため実家を離れたが、10年ほど前に実家に戻った。経理を手伝い、その後現場にも積極的に入っていった。現場で何かをつかめるのではと思ったからだった。子供の頃にした牛の世話や、牛のかわいさ、愛らしさを思い出すなかで、一生牛に係わりたいと思い始めたという。同年齢のスタッフたちが、汚れながらもキラキラと輝く目をして仕事に熱中する姿も刺激になった。


 BSEで牛の値段が暴落した5年前、父が「この状態が半年続いたら、牧場はやめる」と言い出した。やめるなら、その前に何でもやってみよう! と、牧場の牛肉を使ったレトルトカレーを売り出したところ、おいしいと評判になった。同じ頃に交通量のある道路沿いの空き店舗を使わないかという話があり、2002年8月に「ミートショップ前田牧場」を、翌月「ファーマーズカフェ」を開店した。


カフェとミートショップは人気店!
re0607071253-00001.jpg 智恵子さんは元々ケーキ作りが大好き。今ある材料を工夫して作るのが得意で、牧場を継ぐと決めてからは、引退後の楽しみにレシピをストックしていたほどだ。カフェのメニューのコンセプトは「おいしい」「誰でも同じものが作れる、覚えやすい簡単なレシピ」であること。おすすめの野菜カレーハンバーグセットをはじめ、牧場の牛肉と地元で取れた食材を使ったメニュー数種類と、デザートはシフォン、レアチーズケーキを基本に、地元産の季節野菜や果物を使った季節限定メニューもある。


 一方、地域でいくつもある牧場の中でも牛肉の直売は初めてで、本当に売れるのか不安があったが、開店と同時にその心配も吹き飛んだ。前田牧場の牛は、すべてホルスタインの去勢牛。ホルスタインは脂肪がつきにくい品種で、さっぱりとして食べやすいのが特徴だ。胃にもたれず、牛肉特有の肉臭さで敬遠していた人もこれなら食べられる、とファンが増えている。また手作りハンバーグは予想外の売れ行きで、100個以上売る日が月に3回はあるという。直売は金、土、日の週3日だが、電話やインターネットで宅配もしている。


法人化で次のチャレンジを
 智恵子さんは現在(有)前田牧場の代表取締役をつとめ、2店舗の経営管理、全体の経理もする多忙な毎日だ。智恵子さんの強みは「創業者の視点で経営をする姿勢」を初めから意識したことだ。甘えを持たないよう自ら戒め、全ての責任は自分が取るという気持ちで自分の考えで行動してきた。わからないことは本を読んで勉強する一方、スタッフとのコミュニケーションを大切にするよう心がけたという。もともと、企画を立て、あれこれ考えるのが大好き。「スタッフが育てば販売促進に専念できるし、いずれは牧場の仕事を中心にしたい」と考えているそうだ。


re0606271255-00001.jpg  reIMGP0553.jpg
「ファーマーズカフェ」。この右隣にミートショップがある


 来年、すべての経営を合わせて法人化する話があり、父に代表の肩書きを譲り、智恵子さんは事業の新たな展開を考えている。「肉直売店は毎日開き、インターネット販売は自前のHPを作って、肉だけでなくハンバーグ等加工品も扱っていきたい。また、カフェで惣菜や菓子も売りたいし、宇都宮か東京にカフェをもう一店舗出すことも考えています」。法人化に合わせて、夫の正信さん(41)も会社を辞め、経営に参加するという。前田牧場の今後の展開が楽しみだ。(水越園子)
(月刊「日本の農業」2006年8月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)