提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ハスカップにかける! 生食用としての品質を追求

2007年04月02日

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山口善紀さん(左)と奥さんのさゆりさん(北海道厚真町 山口農園)


「不老長寿の妙薬」
 古来、アイヌの人々が「不老長寿の妙薬」として珍重してきたというハスカップ。鉄分、ビタミン類を多く含み、ブルーベリーに比べポリフェノール、アントシアニンが多いことが確認されている。貧血症や緑内障の予防などに効果があるとされ、注目を集めるようになった。味は甘酸っぱく、主にジャムやソース、ジュースなどに加工されている。


 ハスカップは、シベリアのバイカル湖周辺が原産地とされる、スイカズラ科の落葉低木樹である。本州にも自生しているが、群生しているのは北海道だ。北海道では道立林業試験場や道立中央農業試験場が試験を行い、栽培技術・品種改良とも確立しており、1992年には大果多収、早生で酸度の低い「ゆうふつ」が品種登録されている。全道的に栽培されており、栽培面積は約86ha・生産量は114t(平成11年)。収穫は6月末から7月中旬頃である。


市場では高値の厚真町産
 ラムサール条約登録地・ウトナイ湖を擁する勇払原野の広がる苫小牧市東部と厚真町は境を接する。町のハスカップ生産は、苫東開発に伴い、勇払原野に自生していた天然木を移植したのがきっかけで、1982年頃から本格的な生産が始まった。現在約60軒の農家が生産しており、栽培面積は約10ha、年間生産量は10tである。

 市場では常に高値で取引される厚真町産の中でも、とりわけ品質が高く、平均単価がトップクラスのハスカップを生産している山口農園を訪ねた。


30年に及ぶ自家選抜により生食用の高品質ハスカップを生産
 代表の山口善紀さん(35歳)は、3年前、サラリーマンをやめ、家業を継いだ。就農すると、それまで主体であった米の生産からハスカップ一本に絞り、農協を通じて市場に出荷する一方、つみ取りの観光農園を始めた。お母さんのハスカップへのこだわりを見て育ち、こだわりの味を広めたいと思ったからだ。

 山口農園では、現在120a・約2500本の樹を、善紀さん、奥さんのさゆりさん、お母さんの美紀子さんの3人で管理している。
 山口農園のハスカップ生産は古く、30年前にさかのぼる。美紀子さんが勇払原野に自生していた20本の天然木を移植し、苦みや酸味が少なく食べやすい実、より大きな実のなる木をこつこつと自家選抜してきた。その大粒でおいしい実は町内では有名だったという。「実は、母はハスカップの酸っぱさや苦さが苦手でほとんど口にしたことがなかった。そこで、自分が食べてもおいしいと思えるものを育ててきたのです」と善紀さんは笑顔で話す。

ハスカップ.jpg それだけに、品質には絶対の自信を持っている。実際、実が大きく、味は甘さと酸っぱさのバランスがとれていて、にがみのない同園のハスカップのファンは多い。収穫シーズンが到来する6月末頃になると、札幌や苫小牧からマイカーで多くのファンが訪れるといい、来客数は年々増加しているそうだ。インターネットを通じてPRもしているが、口コミが大きいという。ちなみにインターネットによる販売は、冷凍もの。ハスカップの実が傷みやすく日持ち期間が短いことによる。
右 :山口農園のハスカップの実は大粒で、甘くおいしい


 善紀さんは、自らも試行錯誤しながらより高い品質のものを目指して自家選抜を重ねている。善紀さんの大きな夢は、サクランボの"佐藤錦"のような、ハスカップの品種を作ることだ。北海道胆振農業改良普及センター東胆振支所でも、種苗登録を視野に入れて、農業試験場と連携しながら品種比較試験を行うなど支援している。


ハスカップだけで成り立つ新しい経営を模索
 最後に、経営について、善紀さんは次のように話してくれた。
「ハスカップだけで成り立つ新たな経営を確立したいですね。ハスカップはこの土地の気候風土に適していますから、ハウスなどの設備投資はほとんどかからない。その分売り上げ自体はたいしたことがなくても、所得の幅は大きいはずです。また、規模拡大に走って管理に手が回らなくなるより、高い品質のものを作ってハスカップ自体の価値を高めていきたい。そのためには産地としての評価が大事で、自分の経営にもかえってくると思います」。
 ハスカップをメジャーに。善紀さんの前向きな挑戦は続く。(三上宜克 協力:北海道胆振農業改良普及センター東胆振支所)
(月刊「日本の農業」2006年7月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)