提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


カブ作りひとすじに50年 直売所開設にも参画、生涯現役を日々実行

2007年04月02日

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木村多喜雄さん(千葉県柏市) 


日本一の産地でカブ作り
 園芸部門の粗生産額全国一位の千葉県で、カブ生産日本一を誇る産地が柏市にある。柏市は昭和40年代からベッドタウンとして、と同時に東京近郊の農業地帯としても発展してきた。カブ栽培の歴史は古く、大正10年頃、栽培が始まった。
 その柏市豊四季で、カブ栽培ひとすじの木村多喜雄さん(69)。小カブ250a(うちハウス面積60a)を妻の和代さん(68)、長男祐一さん(42)、妻の美智子さん(40)の家族四人と繁忙期のパート2名で作る。木村さんは長く柏農協カブ共選部会長をつとめ、現在は柏市農業委員会会長職にある。


 木村さんは昭和50年代前半からカブ専作となり、50年近くカブを作り続けてきた。夏場にキュウリやヤナカショウガを作った時期もあったが、作業が重なるのでやめた。出荷は8月を除いて週5日(年間220~230日)。品種は白涼、夏の雪など4、5種類を、季節や場所で使い分けて、年に3作する。播種は年間40~50回。カブ畑に入れる堆肥を以前は作っていたが、今は完熟堆肥を入手して、年間4t/10aまで投入している。


re播種後1カ月のカブ.jpg カブは「計算しやすい」作物だそうだ。収穫の時期を考えて、また、売上高を考えて作付けすることができるので、計画や目標をたてやすい。反面、播種から収穫までの期間が夏場で40日(冬場は100~120日)と短いため、気象の影響を受けやすく、天候が変わると修正しにくい。「カブ作りはむつかしい。葉は良くても土中の玉が虫にやられていることもあります。毎年6~7haのカブを作っているが、満足できるカブは、そのうち10~20aくらい」と、木村さんは言う。
右 :1カ月前に植えたハウスカブ圃場


 産地のカブは、柏農協カブ共選部会が市場に委託販売している。生産者が自分で集荷場に持ちこむが、そこでの待ち時間が農家同士の情報交換の場となっており、若い生産者でも一人前になるのが早いとか。機械化や種の購入などで技術が均一化し、ある意味、技術が必要とされなくなった面もある。また、共選部会員の8、9割には後継者がいるといい、産地としての活気にもあふれている。


仲間と共に会社設立、直売所を経営
 柏市高田に平成16年5月にオープンした直売所「かしわで」には、毎日800人を超える買物客が集まり、活気があふれている。市内と近隣の農家200名が出荷会員となり出荷、地元産の農畜産物と加工品、惣菜等、約130品目が店頭に並ぶ。地産地消を掲げて地元産の新鮮な商品で消費者をひきつけ、スーパー等大型量販店もある激戦地で健闘している。昨年は年間売上目標5億円を達成した模様だ。開業5年目での黒字を目ざしている。全国から注目を集めており、視察も多い。


 「かしわで」は、直売所としては珍しく株式会社が経営している。(株)アグリプラスは柏市内の農家15名が出資して設立されたが、木村さんはそのひとりとして会社と直売所の立ち上げに加わった。「計画から開業まで2~3年かかりました。開業半年前には従業員、パートを雇い、全員が研修にでました。年商5億といっても借入金もあり、社長はいまだに無報酬です。売るのはむつかしい」。とはいえ、直売所のほかに、市内の学校給食に食材を提供しているし、東京のスーパーにも出荷している。病院へ食材納入をする業者とも近いうちに取引する予定もあるそうで、販路を確保し、事業の展開も着々と進んでいる様子だ。


reIMGP0432.jpg  re出荷調製作業.jpg
長男夫婦とともに出荷調製作業をする木村さん


小学生が問う「なぜ柏がカブ日本一?」
 木村さんの畑には、市内の小学校5、6校から3年生が授業の一環で訪れ、農業を学んでいく。10年以上前から続いているが、小学生の思いがけない質問には答えに詰まることがある。「なぜ柏がカブ生産で日本一なの?」と聞かれたときは「日本一、カブのことを勉強したからだよ」と答え、小学生も納得したそうだ。


 木村さんの目下の最大の関心事は、「かしわで」の成功だ。カブ作りのプロにとっても、販売や経営は一筋縄ではいかない大きな課題のようである。そして、経営主を祐一さんに譲った今でも、木村さんは毎日畑に出る。「生涯現役が私の目標です。毎朝起きて、畑を見回り、作物の心配をして・・・一生カブを作りたいですね」
「かしわで」の発展と、木村さんの丹誠込めたカブ作りが続くことを祈りたい。
(水越園子 協力・千葉県東葛飾農林振興センター振興普及部改良普及課)
(月刊「日本の農業」2006年5月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)