提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


「価格は自分たちが決める」「新商品を提案」消費者ニーズも取り入れ園芸の新分野を拓く

2007年04月02日

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岩見悦明さん(京都府城陽市・(株)杜若園芸)


水生植物のパイオニア企業
 京都府城陽市寺田でカキツバタ、ハス等の湧水花き切り花約10種と、水生植物約300種を国内(京都府、滋賀県)5ha、海外(タイ)2haで生産、販売に取り組む岩見悦明さん(42)。父良三さん(73)が社長、悦明さんが専務取締役を務める(株)杜若園芸は、役員4名、社員8名、常時雇用5名(繁忙期は臨時雇用約20名)で、水生植物の国内シェアトップを誇っている。平成17年度全国農業コンクール全国大会で、名誉賞と農林水産大臣賞を受賞したところだ。


 京都市中心部から南に30kmほどのこの地域は地下水に恵まれ、古くから湧水花き栽培が盛んにおこなわれてきた。岩見さんの祖父が地域の先駆者としてカキツバタ、ハナショウブ等を広く栽培し、また、父の良三さんはカラー(オランダカユウ)を地域に導入したといい、岩見家は代々進取の気風に富んでいる。悦明さんは大学を卒業し銀行員として数年働いた後、企業的経営を目ざして平成2年に家業に戻ったが、はからずも花き栽培の方向転換を担うこととなった。


 その時期、主流だったハナショウブ、カキツバタ類は生け花人口の減少で需要が減少。新しい園芸分野を探して大学の先生に会いに行ったところ、水辺緑化の分野は未開拓なので有望だと勧められた。また、水生植物にはぴったりの農薬がないので農薬をあまり使うことができないが、そのため圃場に生物が集まってきていると、ある日気づいたときに、水生植物は時代に受け入れられるに違いないと確信したという。


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「環境」「癒し」ブームで経営を拡大
 当初、業者からの引き合いがたくさん来たものの、売れ行きは良いとはいえない状態が続いた。その後「環境」や「癒し」が時代のキーワードになり、ビオトープやウォーターガーデンが注目されるようになると、時代の流れにもうまく乗って経営は順調に拡大した。在来の水性植物で始めて、だんだんと輸入にも力を入れて種類をふやしていった。平成7年に、法人化を実現。平成11年にはHPを立ち上げ、インターネット販売も開始した。とはいえ、手本も見本もない新分野なので試行錯誤の連続だったという。その反面、好きにやれる強みもあった。


販売にも力点、農外からの情報を経営に生かす
 岩見さんの経営の特色は、生産だけでなく販売にも力を入れたことだ。価格の決定権を持ちながら、大手種苗会社等への卸売、ホームセンターや園芸店等の小売への販路も確保した。また、水生植物が普及するにつれてカルチャーセンターの講師や本の監修を依頼されるようになり、テレビやマスコミで取りあげられる機会も増えた。首相官邸の水辺への提案をしたし、京都迎賓館の定期的メンテナンスもおこなっている。知名度アップで思わぬ広告効果が出、また、農業外との接点から新商品や売り方のヒントを得ることも多いという。水生植物への特化とニーズの上手な取り上げ方に、成功の鍵がありそうだ。


ブランド化など新分野に挑戦
 岩見さんの考える今後の事業展開は、1.引き続き生産販売に力を注ぐ、2.貿易部門の充実、3.自社ブランドで商品を提案、である。水生植物のパイオニアだけに全国四七都道府県全県への出荷を誇っているが、今後もこまめに各地の展示会への出品し、また、商品にはラベルをつけてそこに社名をはっきり書く、などの地道な販売努力を続けていく。また、市場を国内に限定せず、たとえば「タイで作ったものを直接オランダ市場向けに売る」等もおこなっていくつもりでいる。


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しゃれたラベルでプラスアルファを提案


 ブランド化は、今年3月から動き出した。デザイン性の高いうつわ等の資材をオランダから輸入し、それに植物をアレンジし、「インテリアの一部」として自社ブランドで販売する。売り先は「花屋」ではなく、「インテリアとして扱ってくれる業種」だ。国内にはあまりない、付加価値を付けて売るという、岩見さんの新しい考え方だ。
 「水生植物の市場はまだまだ伸びます。園芸業界は縮小気味といいますが、工夫次第でまだまだ伸びる余地はあります。花きをもっと普及するためにも新しいことに挑戦して、園芸業界に一石を投じてみたい」と語る岩見さん。伝統の業界へ吹き込む新しい風になるか、目が離せそうにない。(水越園子)
(月刊「日本の農業」2006年4月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)