提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


家族で築く花経営が原動力 「食卓に花を」多彩な活動で地域に新風

2007年04月02日

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加藤京子さん(神奈川県伊勢原市・加藤花園)


 神奈川県伊勢原市は神奈川県のほぼ中央に位置し、都心から35~40km圏内にありながら、地産地消を始めとする都市型農業が展開されている地域である。伊勢原市池端でパンジー、ビオラ、サクラソウ、マリーゴールド、シクラメン等鉢花50種や苗花、野菜苗を年間30万ポット生産販売する加藤花園の加藤京子さん(45)。温室1300㎡、畑70a、田80aを夫の重治さん(46)とその両親、通年雇用1名、繁忙期の臨時雇用8名で経営する。


 京子さんは2005年3月まで半年間、地元FMいせはらで毎週月曜に15分のコーナーを任され、農家女性からの情報発信をおこなって地域の注目をあつめた、地元の有名人である。また、地域の女性消防隊の一員として2005年、県代表で全国女性消防操法大会に出場した。一方、地区初の神奈川県女性農業経営士であり、神奈川県農業会議常任幹部会議員(女性代表)という堅い仕事も引き受けている。京子さんの多忙、多彩な活動を紹介する。


エディブルフラワーの啓発に取り組む
ガラス温室.jpg 加藤花園の取り組みの一つに、京子さんが力を入れている「エディブルフラワー(=食べる花)」の栽培と普及がある。キクや菜の花などはお浸しにして食べる習慣があるものの、サクラソウ、プリムラ類、ビオラといった洋花を食べることには馴染みがない。「食用と観賞用の違いはありません。たくさんは食べられませんが、目と心で楽しんでもらいたい」。黄色の花にはカロチンが多く、ビオラ(特にオレンジ系)はハーブのような味がするとか。ゼリーにして固めたり、料理の飾り、お酒に入れるなど、工夫次第で食卓が華やかになる。隣の厚木市には、加藤花園の花を使ってつくるサラダやケーキが好評なレストラン、せぞん・ど・小野花(さやか)があるそうだ。


 JAいせはら女性部のフレッシュJAで、京子さんはガーデニングや押花の講師を務める。手芸教室、料理講習会では教わる側に回る。また、野菜と花の農家女性数名で自主グループ「グリーンベル」を結成し、直売所の視察や地元野菜を使った料理の講習会など自己研鑽も欠かさない。

 JAの直売所を一日4カ所ほど回って鉢花や苗の補充、入れ替えをするのも京子さんの日課だ。花壇のデザインを依頼され、花壇づくりの指導をすることもある。また、この20年余で短期長期合わせて5~60人もの内外からの研修生を受入れ、自宅で生活を共にすることも多かったという。


親を見て育つ頼もしい次の世代
 「これが今年の年賀状です」。ハガキの中央には、短大卒業後オランダ留学中の長女蘭さん(21)のにこやかな笑顔が。取り囲むように農学部在学中の長男郷さん(19)、華さん(15)、繭さん(12)のお子さん方が花鉢を抱えて写っている。加藤家は重治さんの両親も含めて八人で暮らす大家族だ。家族こそ、京子さんの元気の源であり拠り所であることがうかがえる。

 市内の畜産農家出身の京子さんは、物心ついた頃から土、自然、人、生き物、植物が大好きだった。ご両親や兄夫婦を見て育ち、農業はいい仕事だと思いながら成長した。高校卒業後、ビジネス専門学校へ。ラジオのパーソナリティやバスガイドなどのアルバイトを経て外資系の会社へ就職。その後地元青年団で出会った重治さんと結婚し、夢どおりに土に触れ、陽を浴びてする仕事を得た。


 上二人のお子さんは早くから親と同じ仕事がしたいと宣言。それぞれ農業高校の農業クラブ活動で全国大会出場等の活躍をし、東京農大に進学した。蘭さんは中学3年の時に農大卒業後オランダへ留学すると決め、実現まで毎日百円ずつ貯金し続けたという。一年間の研修を終えてこの3月に帰国するが、充実した毎日を送っている。郷さんは高校時代、農業クラブのプロジェクト学習で「父をこえる花づくり」をめざすと決意を表明。京子さんは「子供たちには広い視野でアドバイスができる親でありたい」と思っている。


経営の中心として輝く日々
 公私ともに多忙な京子さんは、今年はまずガーデナーの資格取得に挑戦したいと考えている。地場産食材を使った料理やエディブルフラワーの啓発にも取り組みたい。また、昨年病に倒れた義父が引退となると、花部門経営へのかかわりが増えてくるだろう。家の改築や介護も京子さんの肩にかかってくる。

 ポット苗の値段が低迷している現在、鉢花などポット苗に付加価値をつけたもの、またはそれに変わるものを経営の柱の一つとする必要を感じている。そんな中、蘭さんが花栽培に加わるのは心強い。
 

 「何よりも子供の成長が私の喜び。家族が健康で元気に過ごせれば」という京子さん。家族とともに花の、農業の可能性に挑戦し続けていただきたい。(水越園子)
(月刊「日本の農業」2006年3月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)