提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


家族で作業分担し経営を複合化、条件不利地で大規模稲作経営を実現

2007年04月02日

re秋田谷長一郎さん和智さん.jpg
秋田谷長一郎さん(右)、和智さん(左)(青森県五所川原市・(有)秋田谷ファーム)


 青森県旧市浦村(現五所川原市)は、津軽半島西北部に位置する過疎と高齢化の進む地域である。同市相内地区で稲作40ha(自作地17ha、借地23ha)、夏秋トマト約30a、防除作業受託延べ800ha、乾燥調製作業受託5haを経営する秋田谷長一郎さん(57)、和智さん(29)親子は、ヤマセ常襲地帯で十三湖周辺の低湿地、干拓地という稲作には不利な条件の下、規模拡大、複合経営とコスト低減によって、売上4,500万円超の経営を家族三人で実現している。平成17年度全国農業コンクール全国大会で名誉賞と農林水産大臣賞を、農林水産祭農産部門では内閣総理大臣賞を、見事に受賞した。


作業受託は地域からの信頼の証
 中二で父を亡くした長一郎さんは中学卒業後県外で就職、その後北海道で林業に従事した。26歳で結婚を機に帰郷、地元の木材会社で働きながら約20年間、土日と平日の朝晩、農業に従事した。平成元年(8.5ha経営)に専業となり、平成5年に青森県営農大学校を卒業した和智さんが就農したことで、規模を年々拡大してきた。


re入水直後のプール育苗.jpg  re苗の出来を確認.jpg


 6月半ばでもヤマセが吹くことがあるという土地での稲作には工夫がある。「(出穂の早期確保のため)中苗を使って苗を丈夫に作る。コンバインで40haを効率良く刈っていくには、倒伏させないことが絶対条件になる。早めに刈り取って確実に収穫する」。育苗はトマト用大型ハウスの空き期間を利用する。平成15年から約1万箱を全てプール育苗で育て、潅水の手間を減らしている。また、地力向上と春作業の集中分散のために、収穫後、雪の降る前に稲ワラ鋤き込みをすませてしまう。作る米は「つがるロマン」「ゆめあかり」の2品種だ。


 作業受託は、隣近所から防除を頼まれたことから始まった。「丁寧にやってくれる」と信用を得て、防除から刈り取り、田植えと作業も面積も広がっていった。また、地主の許可を得て自ら圃場整備を行い、作業の効率性を高めてきた。整備を手がけた圃場は10haにも及ぶという。受託の中心となるラジコンヘリによる防除作業は、平成9年に37haから始まり、翌年には217ha、平成16年には591haになり、経営の重要な柱のひとつとなっている。


得意分野を生かし、家族で作業分担
 中学生の時にはすでにコンバインで稲刈りをしていたという和智さんは機械が好きで、日常の整備や簡単な修理は自分でする。丁寧に手入れして使う結果、機械を長く使うことができる。また、ラジコンヘリの操作は仲間に助手を務めてもらって和智さんがおこない、地域全体の防除作業の省力化にも貢献している。


re防除作業s.jpg 夏秋トマトの栽培は平成13年から始めた。定植と収穫ピーク時以外はほとんど妻の催子さん(51)ひとりの手によるので、マルハナバチを使い、またビニルハウスはハチの管理が楽なように連結した形に建ててある。もともとは育苗ハウスの空き期間を使ってのトマト栽培であったが、ハウス移転を期にトマト栽培用に大型ハウスを建てた。


 秋田谷さんでは農作業の分担を明確にしている。長一郎さんが水田管理と忙繁期のトマト、催子さんがハウストマト、和智さんが水田管理、防除、農機作業(刈り取りほか。ラジコンヘリも含む)と機械の保守をおこなう。平成12年に家族経営協定を結んだ際に明文化した。


さらなる規模拡大が目標
 平成17年3月に(有)秋田谷ファームを設立し、法人化した。「今後は稲作100ha、夏秋トマト3ha、防除作業受託1000ha、常時雇用10名を目標に、規模拡大をはかっていきたい。そのためには育苗ハウスを増やすこと、そして寒冷地に向く直播技術の導入が今後の課題です」


 なによりも、農業を愛する秋田谷さん親子。「農業の良さは、自分のやり方でどうにでもできること」と父が語れば、息子は「小さいときから手伝っていたので、農業をするのは自然なことだった。人に縛られることなく自分のやり方で仕事ができて農業は楽しい」と言う。和智さんには、妻の静さん(24)との間に、将来の後継者となる男児二人が育っている。北の空の下、秋田谷さんの、さらなる経営の発展を祈りたい。(水越園子 協力・青森県西北地方農林水産事務所普及指導室)
(月刊「日本の農業」2006年2月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)