提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


消費者ニーズをつかんだ生産と販売で 「企業的経営」農業を実現

2007年04月02日

立川幸一さん(新潟市・(有)エーエフカガヤキ)

立川幸一さん

 新潟市(旧中蒲原郡横越町)沢海の(有)エーエフカガヤキ(カガヤキ農園)。立川幸一さん(52)が代表取締役をつとめ、水稲15ha強(一般900a、有機45a、減々550a)、ナガイモ1.5ha(ジネンジョ、げんこつ芋、大和芋)、スイートコーン2.5ha(8品種)、サトイモ40a、ネギ20a等、作業受託約50ha、除雪2チーム等の生産部門と、米、野菜の宅配、直売所運営等の販売部門とで、売上高1億6000万円(平成17年)をあげ、現在出資社員5人、パート6人、シーズン毎の臨時雇用で経営をおこなっている。


大規模化から一転消費者を向く

 法人化の動機は「広く後継者を求めたかった」から。立川さんは農家の長男だが、長男だから継ぐと決められるのは嫌だった。身近に、農業が大好きなのに非農家なので手段がない知人がいた。自分の子供には職業選択の自由を与えたいこともあった。
 平成4年5月、「有機農業をやりたい」「ひとりでは農業を続けられない」、農協の営農指導員をやめて「より現場に近い仕事がしたい」などの思いを持つ5人で、エーエフカガヤキを立ち上げた。エー(A)は農業、エフ(F)にはファミリー、未来の意味を込め、「輝くように」と名付けた。

 数年は赤字の状態が続いた。創立メンバーから二人がぬけ、売値が下がり、水田の集積がうまくすすまず、苦しい時期が続いた。そんな状態から抜け出すきっかけは、立川さんが10年前に講演会に参加したことだった。福井県の元銀行マンが講師だったが、その後頼み込んで、しばらく教えを請うた。そして、立川さんは180度考え方を変えたのである。大規模化、コストダウンを目指していたが、「起業は環境適応業」「販売なくして事業なし」と教えられた。消費者のニーズをつかみ、それに対応した農業に方向転換した。


宅配に手ごたえ、直売所を開設

サトイモの収穫

 まず目指したのが、特徴のある商品づくりと既存の流通ルートから「はずれる」ことだった。「友の会」を設立し、一口1万円で地域の知人、友人等に口コミで募集、450人を集めた。その“応援団”に、品質に自信があったスイートコーンやナガイモなど季節の野菜や新米を年5回配達した。量販店の野菜よりおいしい、と評判を呼び、「地元の農産物は喜ばれる」と確信した。


 平成11年6月に直売所を立ち上げた。品揃えのため地域の専業農家100戸に声をかけたが「一作物100個なんて」と鼻であしらわれ、既存のルートに乗れない兼業農家や小規模農家、親戚知人約20人に直売所への出品を頼み、スタート。営業は通年8時半(夏は8時)から午後1時まで、月曜、お盆正月休。野菜中心に地元産限定(他産地のものは置かない)で、開店前に行列ができるほどだ。数年は売上が年々倍増し、売上目標だった5000万円はすぐに達成した。


 その後も毎年1、2割の伸びが続く。「相場に左右されず、品質次第で高値取引ができる。個人に直接売ればすぐに反応がわかる。なによりも、自分の作った物が正当に評価されるのがうれしい」。また、直売所の評判が定着してからは、地域の○○名人たちも出品してくれている。

 品質には気を配る。たとえば米の場合、収穫後は低温管理し出荷直前に精米する。
「作るだけの農業」から「作って売る農業」への転換を身をもって体験し、「農業でも「きちんとやることをやれば儲かる。他産業の中小企業はみなやっていることをしただけ」。従業員やパートも、接客や体験農園等で消費者に直接接することを通じて意識が変わった。反省会では工夫したこと、成果が上がったこと等を発表、記録し、翌年以降にも生きるよう、皆の共通のノウハウにするよう心がけでもいる。


ふくらむ事業展開の構想

 ここ数年、いろいろな面で経営が軌道に乗り、可能性が広がってきたと感じている。優秀な人材が働きたいと希望してくるようになり、一昨年、久しぶりに22歳の新入社員を採用した。この春には初の女性社員採用を予定している。また、「今後は加工やレストラン、そして今と違った形の直売所も持ってみたい」という。


 法人設立当時は、「非農家が参加する経営なんてやっていけるはずがない」「8時~5時、日祝休の農業なんて」と周囲は冷たかったが、今では利益を出し一般企業並みに給与を出している。そして作業受託等、地域になくてはならない存在となっている。
 大正生まれの立川さんの父はしょっちゅう病院通いをしていたが、直売の野菜生産で生き生きと元気になった。最初は「忙しくて医者に行けない」、最近では「忙しくて病気になるヒマがない」。立川さんの経営の恩恵を一番受けているのは、父上かも知れない。
(水越園子 取材協力・(財)新潟県農林公社)
(月刊「日本の農業」2006年1月号(全国農業改良普及支援協会)から転載)