提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


放棄されて20年 雑木林が耕作地に再生された!(青森県弘前市)

2010年09月10日

 耕作放棄地に隣接するりんご園や水田の栽培者から、「日当たりが悪くなったり、病害虫の発生源となって大変困っている、何とかならないものか」との苦情が多く寄せられるという。

 今年こそは何とかしなくては、と思っても、あっという間に3年、5年も経つとアシやカヤ、小灌木で覆われてしまう。
 まして20年も放置されると農地としての原型をとどめず、まさに林となっている。
 こうなると、もはや個人や地域の思いや力だけでは、労力・経費等の面からも再生は困難だ。


 今回耕作放棄地の再生に取り組んだのは、青森県弘前市の鬼楢(おになら)営農組合(組合員120名、経営面積約80ha)。青森県中南県民局農業普及振興室(普及指導センター)から、クボタeプロジェクトによる耕作放棄地再生支援の事業の話を聞き、50aの農地再生に取り組むこととなった。

 千葉正則組合長は、今回の再生プロジェクトについて、青森県や弘前市、(株)クボタなど、官民あげての協力があればこそ、難問が解決したと、喜びを語った。再生農地では、この後、水稲・小麦・大豆の2年3作体系に取り組む計画だ。


  
左 :林に隣接する水稲は日照差による生育ムラが発生
右 :放置されて20年経過した水田


りんごにかける地域農業

 弘前市は津軽地域の中核都市であり、日本一のりんご産地でもある。りんごと米の経営形態が多く、りんごに注ぐ農家の情熱と探究心はとどまるところを知らない。篤農家も多く、県内外はもちろん、中国などにもりんご指導に出向いている農家が少なくない。

 農業の機械化が進むにつれて、米は営農組合に任せ、浮いた労力をりんご栽培に振りけ、高品質りんごの生産に命運をかけている農家が多いのも特徴である。
 今回、耕作放棄地の解消に地域ぐるみで取り組もうとしている鬼楢地区も、そのよう地域である。


再生の取組みを全県に発信

 6月29日、県や市、農業委員会、土地改良区、営農組合、クボタの関係者で再生にけて協議を開始。放棄地再生作業の実施日は、りんご作業が忙しくなる前の8月26日決定した。

 農地境界や畦畔確認の草刈り、雑木の伐採・抜根は営農組合が担当、カヤ・ヨシ等の去粉砕、耕耘・整地はクボタが担当するなど、関係機関が分担協力して取り組むこととなった。また、今回の取組みを「耕作放棄地再生モデル地区」として、青森県主催の研修会に位置づけ、市町村など関係者の意識啓発に努めることとした。 


 8月26日は、県内各市町村や土地改良区、農業参入をめざす建設会社等、150名以上が集まった。
 研修会では、千葉組合長に続き、葛西弘前市長も駆けつけ、「鬼楢営農組合の放棄地消の努力をたたえたい」とあいさつした。



研修会での作業機の説明


 その後、組合員によるチェーンソーでの樹木の伐採、サイドカッターによる雑草の剪去粉砕、チッパーによる伐採枝の堆肥化、プラウ・ローリーによる耕耘・整地などを行った。


  
樹木を伐採する組合員


  
左 :樹木の抜根は建設機械を利用 / 右 :サイドカッターで雑草を剪去粉砕


  
左 :クボタ社員も汗を流す 
右 :チッパーで粉砕し、堆肥化して有効利用を図る


 黄昏を迎えるころ、再生不能と思われた放棄地が、地域のエネルーギーの結集により、新しい耕作地に生まれ変わった。
 再生された農地は、高齢で耕せなくなった農家に替わって、来年から鬼楢営農組合が耕作、水稲・小麦・大豆と2年3作体系に取り組むこととしている。


  
左 :プラウ耕の後ロータリーで整地 / 右 :畦畔を補修


●耕作放棄地再生の作業経過
8月16日
 ・放棄地境界と畦畔確認の草刈り(営農組合)

8月17~24日(土・日除く)
 ・樹木の伐採・抜根、残渣処理(営農組合)  

8月25日
 ・樹木の伐採・抜根、残渣処理(営農組合)
 ・サイドカッターでの雑草剪去粉砕、プラウ・ロータリー耕(クボタ)
 ・研修会の会場準備等(青森県、クボタ)

8月26日
 ・樹木の伐採・抜根、チッパーでの堆肥化(営農組合、土地改良区)
 ・サイドカッターでの雑草剪去粉砕、プラウ・ロータリーによる耕耘・整地 (クボタ)
 ・伐採枝等の残渣処理(営農組合、クボタ)


放棄地解消に向けて

 青森県には、現在約7000haの耕作放棄地があり、このうち2割に当たる150haを早急に再生させることとしている。県の担当者は「この研修会が耕作放棄地解消一助となり、少しでも前に進んでくれれば」と語った。
右 :再生され明るくなった農地


 関係機関等が連携し、みんなで支援・協力していくことが農村の元気につながる。
 集落や組織・団体等の力を引き出すことにより耕作放棄地解消を実現し、全国各地で生き生きと農業生産に取り組む姿を再び取り戻すことを期待したい。(みんなの農業広場事務局)