提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ナタネ栽培

2013年01月22日

(2014年5月 一部改訂) 

概要

「由来と特徴」 
●ナタネ(菜種)は、アブラナ科アブラナ属に属する数種類の植物の総称です。ここでは、油料用のナタネ(※)について紹介します。
特段理由がなければ、ナタネは油料用ナタネを意味します

●日本で栽培されているナタネは、セイヨウアブラナ(Brassica napus L.)です。
●日本では、江戸時代に主に灯火用として栽培され、貴重な燃料源であり、絞った油粕は良質な肥料となるため、捨てるところはないといわれていました。
●昭和30年代初期までは、採油用を中心に栽培が盛んで、最盛期の1957年には全国で258,000haの栽培があり、286,200tの生産がありました。
●その後、輸入自由化により、カナダ、アメリカから食用油原料が輸入され、農村労働力の減少、補助金のカット、上記の油脂品質の問題等が重なり、旧来の品種の減少ともに作付けも減り、2011年には、北海道、東北(青森県、秋田県)、九州(福岡県、熊本県、鹿児島県)地域が主な栽培地域となっています。
●現在、需要量のほとんどを外国に依存しており、輸入量220万tに対し、国内生産量は1000tにすぎず、自給率は0.04%程度です。
●2011年に、ナタネが農林水産省の戸別所得補償制度(平成25年度からは「経営所得安定対策」へ名称変更)の戦略作物に指定されたことにより、復活の兆しが見えます。
●ナタネの主要生産国は、中国、カナダ、インド、ヨーロッパ諸国です。

「栽培適地」 
●ナタネは、北海道から鹿児島まで広く栽培されていますが、地域により適品種が異なります。
●適品種については、後述しますが、もよりの農業改良普及センターに相談してください。
●国内の品種は秋播き品種で、各地で秋播き栽培が行われています。
●ナタネは全国各地で栽培され、特定の土壌を選ぶ必要はありませんが、土壌条件に応じた施肥設計が肝要です。土壌診断を実施し、施肥設計の参考にしましょう。
●かつては水田裏作として栽培され、耐湿性が強い作物ですが、降雨による圃場の停滞水では湿害を受けやすく、暗渠や明渠等の排水対策、畦立てによる湿害対策を施す必要があります。
●連作により、菌核病、根こぶ病等の病害が多発します。イネ科作物などと、4~5年輪作します。
●農林水産省の統計によると、冬期間積雪下で生育期間が10カ月に及ぶ東北地方北部、北海道地方が、多収地帯です。

「利用法」 
●搾油され、菜種油として使われます。現在のところ、国産ナタネの生産量は少なく、流通量も少ないため、国産菜種油は高価格で取引されています。
●搾油された油粕(ナタネミール)は、国産の有機肥料として、付加価値の高い農業(有機農業、果樹園、茶園等)に利用されています。
●油は、バイオ燃料としても注目されています。
●緑肥や景観作物として栽培されています。

主な品種と種子の入手方法

「品種」 
●1930年(昭和5年)から組織的育種が開始され、現在までの多数の品種が農林登録されています。
●心臓疾患が心配されるエルシン酸(過剰摂取が心臓疾患を引き起こすと言われる脂肪酸)を含まない無エルシン酸の食用品種は、以下の通りです。
 <寒地・寒冷地向き> 「キザキノナタネ」、「キタノキラメキ」
 <寒冷地南部> 「キラリボシ」、「アサカノナタネ」
 <温暖地> 「ななしきぶ」
  <暖地> 「ななはるか」(2013年育成)

●「キラリボシ」は、ナタネミール中にグルコシノレート(甲状腺肥大に関係する物質)が含まれていないため、飼料利用が可能です。
●食用以外の目的(景観、緑肥、バイオディーゼル等)で栽培する場合も、無エルシン酸品種を利用することが望ましいと考えられます。
●緑肥作物のアブラナ科のカラシナ(Brassica juncea L.)が、ナタネの近くで栽培され、交雑し、食油利用が困難となり、収穫を中止したという事例が報告されています。無エルシン酸菜種油によるバイオディーゼルは、欧米で広く利用されています。
●品種は、それぞれの地方(道県)の奨励品種を選びます。奨励品種のない場合には、最寄りの普及機関に問合せ、上記の6品種から適品種を選んでください。

「入手先」 
●過去、ナタネの育種機関は日本全国で10カ所ほどありましたが、現在は東北農業研究センターだけとなりました。
東北農業研究センターのホームページに、登録期間中の品種の問合せ先が掲載されています(「キラリボシ」、「ななしきぶ」、「キタノキラメキ」、「ななはるか」等)。
●「キザキノナタネ」(北海道、青森県)、「アサカノナタネ」(福島県)は奨励品種採用道県に問合せください。


表1 種子取り寄せ先一覧(2013年1月現在)
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「採種についての注意」 
●ナタネは虫媒花で、訪花昆虫や風によって容易に交雑します。奨励品種採用道県では、指定された圃場で採種がされています。個人や採種技術のない団体では、品種の特性を維持するのが難しい作物です。
●原則として自家採種はやめ、種子は購入種子を利用する方が安全です。

栽培

「栽培メモ」
●ナタネの栽培法には、以前は直播栽培と移植栽培がありましたが、現在は播種から収穫まで機械を利用する栽培が一般的であり、直播栽培が主流です。
●直播栽培には、使用する機械により、散播、条播、密条播他があります。
●種子によって繁殖し、厚く平滑な葉を生じます。茎の高さは1m以上になり、主茎より分枝を出します。
●種子は球形、または扁平球形のものが多く、色は黒色、黒褐色、赤褐色、褐色、黄色などです。
●低温に強く、低温に合うことによって花芽を形成するので、通常、秋に種まきをして、翌春に収穫します。
●出芽後、数枚の葉を出したところで越冬態勢にはいり、葉を地面に張り付けたような形(ロゼット葉という)で冬を過ごします。春、気温の上昇とともに節間伸長をし、同時に多数の分枝をつけます。
●各々の茎の先端には黄色の花(菜の花)を咲かせて、やがて莢の中にたくさんの小さな種子をつけます。

「播種前の準備」
●ナタネは小粒のため、砕土、整地はていねいに行います。
●ナタネはカルシウムの吸収量が多く、生育期間が長いので、耕起前に10a当たり苦土石灰等80~100kg、堆肥1~1.5tを圃場全面に均一に散布します。
●標準的施用量は、10a当たり窒素7~10kg、リン酸8~10kg、カリ8~10kgが目安ですが、火山灰土壌ではリン酸を増やします。さらに、融雪後もしくは抽だいする前に10a当たり窒素3~5kg追肥すると多収であるという報告が多くなっています。
●10a当たり250g~800g播種します。播種量は、播種方法により異なります。

「直播き栽培」 
●直播栽培の場合は適期に播種するのが大切で、早すぎると徒長軟弱化し、遅すぎると越冬前の生育が不良で、どちらも寒雪害の被害を受けやすくなります。

ナタネの栽培歴(全国)

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ナタネの栽培歴(北東北)

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「播種」 
●上記に記した品種は、秋播き品種で、秋に播き、春から初夏にかけて収穫します。
●地域により、適播種期があります。もよりの農業改良普及センターに相談してください。
●寒冷地、寒地では、越冬に必要な草量を確保するため、8月末~9月中旬までに播種します。これ以上早く播くと、草が大きくなりすぎ、一部個体で開花したり、積雪の重みで茎が折れ、ダメージが大きくなります。逆に遅く播くと、越冬前の草量が確保されず、冬損被害が大きくなります。
●温暖地では10月上旬~10月下旬、暖地では10月中旬~11月上旬に播種します。早く播くと、寒波の来る前に開花し、収量が望めません。遅くなると、バイオマス(草量)が確保できず、低収になります。
●播種量は、機械による播種様式によって異なります。
1)ブロードキャスターや動噴で播く散播では、厚めに播腫することが多く、500~800g/10a程度です。



2)豆類のプランターで播く条播の場合には、66~72cmの畦間で、250~300g/10aの播種量になります。畦間はひろくなり、雑草対策のため下記の中間管理が不可欠です。



3)麦類を播くドリルシーダー(密条播)の場合は、畦幅20~30cmの畦間で、250~500g/10aの播種量になります。

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提供:北海道空知農業改良普及センター

●ナタネの種子は小粒であるため、覆土は3cmくらいの深さとします。
●播種後、除草剤トリフルラリン乳剤を300ml/10aを散布します。



「中間管理」 
●機械化されたナタネ栽培では、中間管理も限られ、適期に集中して実施します。
●越冬前の中耕、畦間66~72cmの条播では、播種1カ月後、雑草が目立つので、管理機等による中耕を行います。また、融雪後、圃場に入れるようになったら、中耕作業を行います。融雪後の中耕は、下記の追肥とあわせて行うと、肥培効果が現れます。

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提供:北海道空知農業改良普及センター

●イネ科雑草の多い圃場では、セトキシジム剤(ナブ乳剤)150~200ml/10aを散布します。
●追肥による多収が報告されています(図1)。融雪後、抽苔の始まる前に10a当たり窒素分3~5kgを硫安や尿素で施用します。追肥後の中耕(培土)により肥培効果が増します。



「病害虫防除」
●これまで、限られた地域で栽培されていたため、病害虫の発生はあまり公にされてきませんでしたが、広く栽培されるにしたがい、病害虫の発生が報告されるようになってきました。
●菌核病は、開花、落花以降に発生し、成熟期になるまで病状が進行し、被害が大きくなります。地上20cmくらいのところに褐色の病斑が生じて、後に灰褐色に変化します。被害茎中(疾患部)に鼠糞状の大小不定の菌核ができ、これが地上に落ち、子嚢盤を形成し、胞子を飛散して伝染します。
●菌核病は、連作による被害拡大が報告されています。また、菌核病は多犯性の病害でナス科、キク科、アブラナ科、豆科他に感染するため、発生させると、近接圃場の他作物に広がる恐れもあります。4~5年の輪作を目途に他の作物の組合せが必要です。また、登録農薬は2剤ありますが、同系列の剤です。菌核病は、甚大な被害をもたらす病害です。発生してからの防除は有効ではありません。
●根こぶ病は土壌病害で、これも連作により、被害が拡大します。輪作をすること、土壌pHでの調整等で、予防効果が期待できます。
●他のアブラナ科同様、鱗翅目昆虫の食害を受けます。また、ワタアブラムシ、ハモグリバエの発生もあります。殺虫剤の登録農薬はコナガの1剤(フィプロニル水和剤)のみです。
●除草剤も含め、現在油料用ナタネ栽培に使用できる農薬を表2に示しました。

表2 油料用ナタネ栽培のために使用できる農薬(2013年1月現在)
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「収穫」 
●主茎の上部から3分の2の莢が黒くなったときを成熟とします。成熟以後、数日~1週間後に収穫します。
●収穫が早すぎると油の含量が低く、油の品質も劣ります。また、遅すぎると脱粒が多くなり、減収します。
●耕作放棄地対策等、ナタネ栽培は大規模化していますので、コンバインでの収穫がロスが少なく、省力的です。


 

●収穫した種子は、水分が多く、放置するとカビが生え、品質が低下するため、楯型循環式乾燥機、平型静置乾燥機で十分(水分10%以下)乾燥させます。

「脱穀・調製」 
●乾燥させた種子を唐箕選、ベルト選別等により調整します。
●その後、麻袋、紙袋、フレコン等につめ、出荷します。フレコンの場合、9%以下の水分に調整するようにします。

※農薬の使用に関しては、もよりの農業改良普及センターや農協などにお問い合わせください

執筆者 
本田 裕
(独)農研機構 東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 上席研究員 

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