提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


アマランサス栽培

2009年04月10日

概要

「由来と特徴」 
●アマランサスは、ヒユ科、ヒユ属に分類される一年生草本作物です。
●栽培されるアマランサスの仲間は3種類あり、その総称です。
●原産地は、メキシコ高地(アステカ)、グアテマラのやや低地(マヤ)、ペルー(インカ)の3カ所です。
赤花のアマランサス●キリスト教の布教をめざしたスペイン人によって、邪教の象徴として絶滅寸前に追いやられ、約400年間、「幻の作物」になっていました。
●ヨーロッパ人によって観賞用として導入されたものが、インドからアジアに広く伝わり、野菜や食用種子としても生産されるようになっています。
●日本では、別種のヒユが野菜として畑で栽培されてきました。アマランサス3種は戦後に導入されたもので、古い時代に栽培されていた証拠はありません。
●高温時に光合成能力が低下しにくいC4型作物に属するので、暖地でも乾物生産能力が高い特徴があります。
●イネ科の作物にあるような、モチ性の品種もあります。
●濃赤色の葉の品種は、ベタシアニンという抗酸化力の強いポリフェノールを含んでおり、機能性食品として価値があります。
右 :赤花のアマランサス

「栽培状況」 
●現在の栽培地は、ヒマラヤ山脈周辺の国々が中心ですが、起源地である中南米でも再評価され、栽培が増加しつつあります。種子を食用とするほかに、野菜用、観賞用に栽培されています。
●日本では、東北や中部地方などの冷涼な地域で、稀に栽培されています。

「利用法」 
●メキシコやインドでは、種子を炒ってはじけさせ、「粟おこし」のようにするお菓子があります。
●アジアの国々では、種子を小麦粉などの他の穀物と混ぜて食べたり、葉を野菜として利用します。中国では、濃赤色の品種を、醤油や酢の色づけにも利用します。
●食味に独特のくせがあるため、日本では、種子は白米に他の雑穀とともにブレンドして食べたり、パスタにまぶすのが主流です。
●モチ性の品種は、小麦粉に添加して、餃子の皮などに利用する場合もあります。

主な品種と種子の入手方法

黄花のアマランサス ●世界の地方在来品種は多数ありますが、他殖性なので改良品種と混ざり合い、純粋な在来品種は減りつつあります。
●アマランサスの改良品種は、日本ではきわめて少なく、ニューアステカという品種がある程度です。
●流通している種子は、世界各地の地方在来品種を導入したものが大半であり、日長に対する反応は遺伝的に違います。
右 :黄花のアマランサス

●低緯度地方の在来品種は、日長反応が敏感で、高緯度地方の在来品種は、温度に対する反応が敏感です。したがって、高緯度地方の品種を栽培すると、早く開花して草丈が短くなる傾向があります。
●信用できる改良品種がほとんど無いのが現状なので、栽培地の農家から分けてもらうのが確実な方法です。
●食用として販売されている種子には、精白されていないものも多いので、それを試験的に播いてみるのも良いでしょう。
●草丈が1~2mと高く、また穂が先端に付くために重心が高いので、生育時に倒伏しやすく、また、品種間で大きな差があります。よって、試験栽培をして、適切な品種を選ぶようにします。

栽培

「播種前の準備」 
●アマランサスは、初期成長が早いとは言えないので、雑草防除のために深く(15cm程度)耕す必要があります。
●ロータリー耕あるいは鍬で土を細かく砕いておくと、出芽率が良くなります。
●施肥は、堆肥ならば10aあたり500kgから1tほど施します。ただし、アマランサスは倒伏しやすい作物なので、前作の肥料の残効のある土地では、施肥量を少なめにしましょう。
●堆肥が入手できない場合は、元肥として化学肥料(窒素、リン酸、カリ)を、10aあたりそれぞれ3~4kg程度施用します。

アマランサスの種子
アマランサスの種子

「播種」 
●種子は直径1~1.5mm、1g当たり1000~1500粒で、雑穀の中では最小です。よって、播種機による播種には、かなりの工夫が必要です。
●発芽温度は15℃以上が適当です。それ以下では発芽率が低くなり、発芽時期もそろいません。
●播種は、他の雑穀と同様に、霜のおそれが無く、十分に気温が上がった4~6月に行います。
●畦幅60~90cmで条播か点播し、株間は15~40cm前後にします。
●密植栽培では、倒伏するので、散播はできません。
●種子が小さいので、「10aあたり何g」と播種量の基準を示せません。畦幅80cmで株間30cmならば、10aあたり約420本になるので、5粒を点播すると仮定すると、2000粒、2g程度準備すれば十分です。
●播種深度は0.5~1cm程度とし、深くならないように注意して、丁寧に鎮圧します。 

「セルポット育苗」 
濃赤色アマランサス品種を用いたセル苗の移植作業 ●除草と間引きの手間を考えると、セルポット苗を作ることをお勧めします。
●園芸用の土壌を用い、一穴あたり数粒を播種し、0.5cm程度の伏土をします。
●徒長する前の本葉3枚程度で移植します。アマランサスは活着しにくい雑穀なので、根の切断は避けます。
左 :濃赤色アマランサス品種を用いたセル苗の移植作業

「間引き」 
●間引きは必須であり、一株あたり一個体にします。
●セルポット育苗でも直播でも、本葉2葉程度の時期に間引きします。
●引き抜くと根が傷むので、引き抜かずに、地上部の茎を切断します。

「除草と土寄せ」 
●アマランサスは、除草が必要な作物です。直播では雑草が発生しやすいので、畦間の除草をします。
●土寄せ(培土)をすることで倒伏を軽減できるとともに、収穫量が多くなるので、株元の除草を兼ねた土寄せは、おすすめです。

「収穫・調製」 
●種子の脱粒程度で、登熟程度を判断します。
●コンバインで収穫する場合は、粒のサイズに合わせた機械の改良が必要です。
●手刈りの場合には、穂を刈り取って、ビニールハウス内などに1~2週間程度干します。
●穂は水分を含んでおり、他のイネ科雑穀のように簡単に乾燥することができません。蒸れると食用にならないので、注意します。
●脱穀には、イネ用の脱穀機を代用できます。
●ゴミなどを取り除くための風選と、篩(ふるい)かけは、注意深く行います。
●種子と土壌の比重が近いため、倒伏して土が付いた場合には、土と種子を風選で分けるのは、極めて困難です。土がつかないよう、よく注意しましょう。
●種子のゴミとりは、網戸の網を利用すると効率が上がる場合があります。なお、機械を使える場合には色彩選別機の利用もできます。

「病害虫」 
●病気が少ない作物と言えるでしょう。
●害虫の被害は通常ではほとんど無いのですが、アブラムシが大発生することがあります。
●指定農薬はありません。

執筆者 
井上 直人
信州大学 農学部教授 

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