提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


エゴマ栽培

2008年11月12日

概要

「由来と特徴」 
●エゴマは、シソ科に属する1年草で、原産地はインド、中国などといわれています。
●栽培分布と利用の点から考えると東部アジアの原産らしく、世界的には栽培分布は限られています。
●近年の発掘調査の結果、日本では、縄文時代前期に当たる5千数百年前には栽培されていたことが明らかです。
●やや冷涼な気候を好むため、東北、長野、岐阜、北海道地方で多く作られてきました。
●乾燥にはあまり強くないものの、吸肥力が強いため、土壌を選ぶことが少なく、酸性の高い開墾地やリン酸の欠乏している火山灰地などで多く栽培されてきました。

エゴマの花エゴマの栽培風景(岩手県滝沢村)
左 :エゴマの花 (提供 :岐阜県飛騨地域農業改良普及センター) /右 :エゴマの栽培風景 (岩手県滝沢村)

●エゴマ油には、α-リノレン酸が多く含まれます。
●その効果は、ガン細胞の増殖を抑える、血圧を下げる、血栓を解消し、血液の流れをよくする、炎症やアレルギーの症状を抑える、などです。
●子実は搾油され、その油は工業用、日常用、食用品として、昔から広い用途がありました。
●栽培、利用とも激減しましたが、近年、健康志向の高まりから見直され、各地で栽培が広まっています。
●2008年現在、青森県、岩手県、宮城県、福島県、山梨県、群馬県、長野県、岐阜県、静岡県、宮崎県の山村で、小面積ながらほぼ自家用として栽培されています(筆者の調査による)。
●エゴマの栽培、普及を目的に、日本エゴマの会が組織され、全国各地で順番に「エゴマサミット」が開かれています。

「利用法」 
エゴマを使ったお菓子 ●エゴマの魅力は多彩な食味にあります。
●近年、昔から食されてきたエゴマの効用が見直され、各地でエゴマの料理集が出されています。
●主なものとして、あえもの(じゅうねみそ、あわもち、くしもち、うちわもち)、じゅうねみそあん(もち、練り物類)、えごませんべい、エゴマ油を活用したドレッシング・マヨネーズ、パンやデザートなどがあります。
●エゴマの葉は、韓国料理にはよく使われます。
●その他、伝統料理や創作料理が多数あります。
写真 :エゴマを使ったお菓子(提供 :岐阜県飛騨地域農業改良普及センター)

主な品種と種子の入手方法

「品種」 
エゴマの種子(左:黒種・右:白種) ●品種は、在来種が数種ありますが、明確なものはなく、異名同種のものが相当多くあります。
●便宜上、種子の色によって白種、黒種に大別しています。
●早中晩種では、早中生種は寒冷地方に、晩生種は暖地に多く栽培されていました。
●在来種の多くは、長年の自然淘汰を受け、その地方の気候風土に最も適応しているので、栽培する場合は、自分の土地の近隣から品種を選定するのが無難です。
●エゴマが栽培されている地域の種子小売店で購入できる場合もあります。在庫がなくても、近隣地から取り寄せてくれることもあります。
写真 :エゴマの種子(左:黒種・右:白種)   

「入手先」 
●参考までに、2008年現在の取扱店を記しました。
 ○日本エゴマの会事務局 TEL0247-86-2319 FAX0247-86-2500
 ○島根・川本エゴマの会(代表:竹下禎彦) TEL/FAX 0855-74-0607
 ○岐阜・白川エゴマの会(代表:服部圭子) TEL/FAX 0574-76-2725
 ○岩手・衣川エゴマの会(代表:鈴木育男) TEL/FAX 0197-52-3820

栽培

「栽培メモ」 
●エゴマの播種は、5月下旬~6月上旬が適期です。開花は8月下旬~9月中旬頃、収穫は9月下旬~10月上旬頃になります。ただし、暖地の晩生種には、収穫が10月下旬~11月上旬になるものもあります。
●収穫量は、10a当たり100~150kgほどです。

エゴマの栽培暦(直播) 
図 :エゴマの栽培暦(直播) 

「播種前の準備」 
●エゴマを栽培する田畑は、前年の秋か早春に、完熟堆肥を前面に散布し、深さ15cm位の深さに耕耘して、土に堆肥がなじむようにします。
●近年、化学肥料を一切使わない有機栽培が盛んですが、米ぬかや油かすを使用する場合は、早めに土壌になじませます。播種直前の使用は、虫発生の原因となります。
●施肥量は、10a当たり成分で窒素3~5kg、リン酸6~8kg、カリ6~8kg、石灰40~60kgを施します。
●特に石灰の効果は大きく、三要素と石灰の施用によって、子実収量、含油率が高くなります。

「播種・直播き栽培」 
●播種期は、地方やその年の気象条件なども考慮します。
●全国的には、5月上中旬から6月上中旬で、その地方に適した時期を選びます。
●過度に早播きすると、出芽に多くの日数を要し、茎葉が繁茂する割合には、子実収量が少なくなります。
●逆に、過度に遅れると温度が急激に高くなり、体(生長)のできないうちに生殖生長に移り、開花結実し収量があがらないので、注意します。
●種子は一株当たり、5~6粒播きます。
●種子は1000粒重で3~5g位です。小粒なので、丁寧に播種と覆土します。
●覆土は、種子が隠れる程度に薄くします。厚くすると、出芽しない、または出芽が遅れることがあり、露出していると小鳥に食べられ、出芽不良になります。

「間引き」 
●出芽して、草丈が5cmごろに1回目の間引きをします。
●1回目の間引きが遅れると、日当たりと通風が悪くなり、苗が腰高となるので注意します。腰高になると苗が徒長し、穂がつく位置が上部になるので、減収してしまいます。
●2回目の間引きは、1回目の間引きから約2週間後、草丈が15cmごろに行い、最終的に1本立てにします。
●不良のもの、徒長したものを除いて、苗と苗の間隔を一定にします。生育のそろった良苗を残すようにします。
●草高を高くすると、倒れやすく、収穫に大変に手間取るので、3~5節残して芯を摘みます。勢いの良いときは2~3回摘心します。草高を120cmくらいに抑えると、収量確保につながります。
●直播きでは、播種後の30~40日頃に、生育初期の除草作業が大切です。

「移植栽培」 
開花前のエゴマ ●自家用として小面積栽培、家庭菜園用、本畑への種播きが遅れる場合に利用されます。
●直播きに比べて手数はかかりますが、生育の揃った苗が得られ、欠株が防げます。また、定植後の苗の生育も良好です。
●施肥量は、直播き栽培の8割ほど施します。
●苗床は通路45cm、幅120cm、高さ5~10cmの短冊挙げ床とします。
●苗床面積が狭いと、健全な良い苗を養成することができないため、本圃の10分の1程度を準備します。
●条間20cmの条播きとして、間引きは草丈5cmと15cmころに2回行います。苗床期間は30~40日が適当です。
●最近、野菜栽培で盛んに利用されているセル育苗も、活用できます。120セルポットの1ポットに4~5粒播いて、出芽後に2回くらい間引きます。
●本葉展開期に、人手か機械で定植します。
●直播き同様に、摘心は効果があります。
写真 右:開花前のエゴマ ((株)佐藤政行種苗育種研究所農場)   

「中耕・培土」 
●直播き、移植とも、中耕(除草)と培土(土寄せ)が必要です。
●草高40cmの頃、管理機やクワなどを使って、土寄せを兼ねて除草します。
●2回目の土寄せは、草高70cmの頃に、株元に20~30cmほど、深く土寄せして倒伏しないようにします。
●管理機で培土する場合は、畦上げ後、クワやレーキでエゴマの根元まで土寄せします。

「収穫」 
開花中のエゴマ 開花結実中のエゴマ ●子実の充実は、開花始めから2週間くらいまでは緩慢ですが、それを過ぎると急速に充実が進み、含油率も高くなります。
●脱粒性はゴマやナタネ以上です。
●開花始めから約30日ほどで、全体の3分の2が黄色くなったら収穫します。この時期に収穫すれば、株を逆さにしても実の脱粒が少なくなります。
●雨後や露のある朝夕、あるいは曇天の日を選びます。
写真 左:開花中のエゴマ  / 右:開花結実中のエゴマ  ((株)佐藤政行種苗育種研究所農場)  

●収穫方法は、手刈りの場合は鎌か、茎が太い場合は根元を小型鋸、剪定はさみで切ります。
●2~3束ごとに束ねて、畑で10日以上、またはハウス、屋根下のシート上で乾燥させます。
●水分が多いと熱やカビが出やすいので、注意します。
●バインダーや、大規模栽培では普通型コンバインを利用することもできます。
●その場合、エゴマのみが黒く熟し始めたら、直ちに刈り取ります。
●刈り取り時、エゴマが熱くなると品質を損なうので、注意しましょう。


写真 左:収穫の様子  / 右:乾燥中のエゴマ (提供 :岐阜県飛騨地域農業改良普及センター) 

「脱穀・選別・水洗い」 
●穂の先が茶色くなってくると、実がこぼれやすくなるので、広いシートの上に積んで、足で踏むか、棒でたたいて落とします。
●ザルで枝葉と実を選り分けます。多量の場合は、唐箕(とうみ)を使います。
●桶に水を張ってエゴマを入れ、かき混ぜると、土や石、砂が底に沈みます。エゴマが水の上に浮かぶので、ザルですくいます。
●もう一度ザルごと新しい水に沈めて、3回ほど水を替えて洗います。
●水の濁りが無くなるまで繰り返し洗うと、搾油の際に、油の色が澄んだ黄金色になります。

エゴマの脱穀(提供 :岐阜県飛騨地域農業改良普及センター)
写真 :エゴマの脱穀(提供 :岐阜県飛騨地域農業改良普及センター)   

「乾燥・保存」 
●網目の小さい網戸のようなものの上で、乾燥させます。
●日陰を選び、4日以上干します。
●洗った水分を乾燥させるだけでなく、子実の持つ水分排出のため、よく乾燥させます。
●未乾燥は、カビ発生による品質低下を起こします。少し湿気が残っているだけで、保存中のカビの原因になるので、よく乾燥させましょう。
●ただし、天日以上の温度をかけると、エゴマが劣化・酸化します。布団乾燥機、椎茸乾燥機、籾乾燥機など、熱を利用しての乾燥は、絶対にしないでください。
●通年食用にするには、保存期間が最長1年になります。よく乾燥した子実を保存します。
●劣化、味落ちを防ぐには、年間8℃以下で保存します。

「病害虫対策」 
●病害ではサビ病に注意します。
●葉の裏に橙色のサビが発生し、落葉します。稔実が不良となって減収し、品質も落ちます。
●発生を防ぐには、日当たりの良い畑を選び、日照に気をつけ、畦間の通風をよくします。
●害虫では、主にシンクイムシ、アブラムシに注意します。
●一般には防除は不要ですが、連作や密植、窒素過多を避けましょう。
●エゴマに使用できる登録農薬はありません。

執筆者 
大野 康雄
雑穀研究会 

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