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ヒエ栽培

2009年03月02日

概要

「由来と特徴」 
●ヒエ(稗)の原種は、ミズビエまたはノビエだろうといわれています。
●起源地は、ヒエの種類が多く、古くから重要な食用作物であったインドが有力です。
●日本では、縄文時代に中国大陸から朝鮮を経て入り、明治の初期には10万ha以上も栽培されました。
●冷害に強いので、日本全国の山間地や、東北、北海道などの冷害に見舞われやすい地方で栽培され、昭和20年頃までは、3万ha程度作付けされていました。
●東北地方の山間高冷地帯では、古くから、冷水かけ流し田の水口に、ヒエを移植栽培する慣行がありましたが、耐冷性水稲品種の出現によって減少しました。
●戦後、稲作技術の急速な進歩、畑作における商品作物生産拡大、馬産の衰退等のため作付面積は減少の一途をたどりました。
●昭和47年には5000ha以下となり、栽培面積の90%が北東北の山間畑作地帯、やせ地での作付けとなりました。
●近年、雑穀の栄養価の見直し、転作作物として、稲用の機械(田植機、バインダー、脱穀機、コンバイン)や施設がそのまま使え、作業の省力化が可能なことなどから、栽培が復活しています。

「利用法」 
●ヒエの子実は、たんぱく、脂肪、ビタミンB2等の含量が多く、栄養価は米麦に劣りません。
●栄養に富んだ立派な食糧で、味噌、醤油、乳酸等の醸造原料として、価値があります。
●最近は、ヒエの加工食品が、盛んに開発されつつあります。
●ヒエの副産物である、ヒエ糠やヒエ稈(茎葉)は、飼料価値に富んだものです。
●食料、飼料として、今後ますます、試験研究開発が期待される作物です。

「ヒエの精白」  
●ヒエは、千粒重が3g~4gで、粒が極めて小さく、外皮が非常に硬く滑らかです。そのため、米・麦に比べて、精白は極めて困難でした。
●籾すり機械によるヒエの精白は、精白時の籾すり部分の高熱が問題でしたが、近年、機械と技術の進歩によって容易になり、食料や加工品作りも容易になってきました。

●古来、岩手県北地方で行われてきた 1)黒蒸し法、2)白蒸し法、3)白乾し法の特徴は、次の通りです。

1)黒蒸し法
●水浸工程があるので、脱ぷ良好、精白の完全粒歩合が高く、砕粒は少ないです。
●精白歩留まりは高いですが、精白度は中程度で、色沢は灰色です。
●精白所要時間、労力、燃料が多くかかるのが欠点です。

2)白蒸し法
●黒蒸し法に比べて、水浸工程がない分だけ、精白所要時間が短いです。
●精白度はやや良好で、色沢は薄い灰色です。完全粒歩合は、黒蒸し法に比べて低いです。

3)白乾し法
●準備工程が乾燥だけなので、精白所要時間は最も短く、労力が少なくてすみます。
●乾燥した玄ヒエを直接機械で精白するので、完全粒歩合が低く、砕粒歩合が高くなります。
●製品は酸化しやすく、長期貯蔵ができないのが欠点です。

主な品種と種子の入手方法

「品種」 
●子実収穫を目的とする場合、生育日数・子実収量・総収量・稔性・粘質・脱粒性などを考えて品種選定をします。
●早生種は寒地に、中晩生種は暖地に分布しています。
●寒地で中晩生種を栽培すると、熟期が遅延しやすく、葉が繁茂し、成熟不十分になりやすいです。
●逆に、暖地で早生種を栽培すると、生育日数が少なくなり、著しいわい性・小穂となります。
●必ず、類似環境の地帯で栽培されている品種を選ぶのが、安全です。
●青刈りの栽培ヒエは、夏枯れなどによる飼料不足時に活用でき、作期の幅や可動範囲も広いので、作りやすい作物です。
●東北地方の寒冷地、高冷地では、早生、中生種が適し、温暖地では中生、晩生種が適します。
●サイレージ用には、播種後90~100日前後に利用でき、播が繁茂する晩生種が適します。

「入手先」 
●2008年現在のヒエ種子の販売元は、下記の通りです。
 ○尾田川農園 TEL0195-46-2792
 ○(株)軽米町産業開発 TEL0195-46-4222 FAX0195-46-4423
 ○小倉商店 TEL0195-46-2714 FAX0195-46-2143
 ○庄村米穀店 TEL0575-65-2431 FAX0575-65-5540

栽培

「栽培メモ」 
実とりヒエの播種期と収穫期


畑作栽培のポイント・品種:在来種、北東北


水田栽培のポイント・品種:達磨、北東北


●ヒエという呼称はヒエ属全体の総称で、栽培種を「栽培ヒエ」、野生種を「野生ヒエ」と呼んでいます。
●栽培ヒエは環境適応性が大きく、生育適地(畑・水田)は広いです。
●主として、冷涼地帯(東北・北海道)で栽培され、生態的分化ははっきりしませんが、北方に短稈早生種、南方に長稈中晩種が分布しています。
●栽培ヒエは生長力が盛んな上、管理も容易で、畑・水田に栽培でき、実取り・青刈りの両用に使えます。
●冷害・干ばつなどの不順天候下でも減収が少なく、短期間に高い収量を上げられます。
●栽培方法は、畑栽培(子実、飼料)と水田栽培(子実、飼料)に分かれます。ここでは、畑栽培と水田栽培の子実栽培(栽培ヒエ)に絞って説明します。



<畑地栽培>
「圃場の準備」 
●圃場の土は壌土、植壌土が最適ですが、重粘土や浅耕土、砂土などのやせ地でも栽培できます。
●酸性土壌には強く、pH5~6.6と適応範囲は広いですが、4.2以下と7.2以上では生育が阻害されます。
●本田の堆肥は1~2t/10a、施肥量は10a当たり成分量で窒素1~2kg、リン酸8kg、カリ6kgを施します。
●堆肥と化学肥料両方の施用が理想ですが、肥沃地では、前作の残効を利用して、無肥料か、化学肥料だけでも大丈夫です。
●窒素に対して非常に敏感で、多く施すと徒長して倒伏するため、窒素は控え目にします。

「種子の準備」 
●手播きの場合は1~2kg/10a、真空播種機利用では0.5kg/10a、種子を用意します。
●土か溶リンと混ぜると、手播きしやすくなります。

「播種」 
●一般に、霜の心配がなくなった頃が播種適期です。
●畦幅は70~75cm、株間は5~10cmが適当です。

<水田栽培>
●栽培ヒエは、排水不良地でも栽培できる、数少ない畑作物です。栽培は、箱育苗、田植え機移植が一般的です。

「圃場の準備」 
●本田の堆肥は1~2t/10a、施肥量は10a当たり成分量で窒素2kg、リン酸7kg、カリ5kgを施します。

「浸種・播種」 
●充実した種子を500~800g/10aの割合で用意します。
●田植機適応性については、苗マットの縮小、強度等の実用面から、播種量は箱当たり30~40g必要です。
●施肥量は、箱当たり窒素2g、リン酸3g、カリ2gで、稲より少なめとします。
●田植機を利用する場合、10a当たり23~25箱、種子量は1kg用意します。

「育苗」 
●無加温のビニールトンネル内で出芽させます。
●出芽までは保温に努め、出芽後は、硬化期間は低温気味にして、徒長させないようにします。
●ハウス地窓を開放し、日中は換気、育苗後半は全開放とします。
●育苗期間は20~25日が目安です。


「田植え」 
●水稲用の田植機を使用します。
●栽植密度は、畦幅30cm、株間15cmとします(約22株/㎡:5~6本/株)。
●移植後、7~10日で活着します。



以下は、畑地栽培と水田栽培で共通です。
「中間管理」 
●畑作・手播きで、苗が混み合っている場合、1mに10~20本くらいになるように間引きます。
●ヒエが30cmくらいに生長するまでは、畦間、株間の雑草に注意します。水田栽培では、中耕・除草には除草機を利用し、畑栽培では管理機を利用します。
●土寄せ(培土)は2回行います。1回目は、播種から1カ月後くらいに、草丈が30cmほどになった頃、根元の株間が隠れる程度に浅く行います。
●2回目は、1回目の土寄せから20日後頃、草丈が70cmほどになった時に、倒伏防止も兼ねて、20cm位に深く行います。
●土寄せをすることで雑草防除、倒伏防止になり、有効な分けつ茎も確保されます。
●追肥は、生育が良くないときのみ、10a当たり1~2kgを施肥します。



「病害虫防除(対策)」 
●主な病害には、ヒエ黒穂病、ヒエ褐斑病、ヒエイモチ病がありますが、被害は少ないです。
●被害株は焼却します。

●害虫は、アワノメイガ、アワヨトウ、ニカメイチュウなどがあります。
<アワノメイガ>
●アワメイガは、暖地での発生、高温乾燥の年の発生が多いです。
●加害により、有効分けつ茎を多く失い、大きな被害を受けることがあります。
●防除は、被害茎の処理、播種期を遅らせるなどで回避します。

<アワヨトウ>
●アワヨトウは、出芽して間もない幼苗に加害します。
●突発的に大発生し、乾燥年に多く発生します。
●防除は、未熟堆肥を使用しないようにします。明渠遮断などがあります。

<ニカメイチュウ>
●ニカメイチュウは水田栽培で発生が多く、茎葉に浸透して食害し、生長を抑えます。

●栽培地付近の雑草防除に努めます。特に、イネ科の雑草に留意してください。
●ヒエに使用できる登録農薬はありません(2009年2月現在)。

「収穫・調製」 
●出穂期は、早生種で7月下旬から8月上旬、中生種で8月上旬から中旬で、成熟期は出穂後35~40日です。
●茎や茎葉が黄変し、子実が70~80%熟色するのが目安です。
●稈長が130cm以下の場合、自脱コンバイン、豆・そば用コンバイン収穫が可能です。
●稈長が130cm以上では、コンバイン収穫時にロスが多くなるので、バインダーで刈り取るのが良いでしょう。


●「ダルマ」は晩生であるため、適期播種と適期移植を励行します。
●コンバインによる生脱乾燥の場合、通風温度36℃以下とします。
●水分14%を目標に、乾燥させます。
●乾燥後に、動力脱穀機で脱粒します。
●10a当たり子実収量は約350kg、副産物のわら(茎葉)は4~5tの収穫です。
●乾物率は20~25%で茎、葉に富んだ肥料となります。


執筆者 
大野康雄
雑穀研究会 

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