提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


稲作

いもち病の効果的な防除方法は

 イネいもち病は全国で発生し、低温や日照不足、多雨等により発病が促進されることから、冷害年に特に大きな被害をもたらします。病原菌は糸状菌で、イネの全生育ステージで発生し、乾燥状態で越冬した罹病籾、種子、藁等が伝染源です。葉いもちに罹ると、生育が抑制され、ひどくなると枯死します。病斑上に形成された分生胞子が風により飛散し、次の感染・発病をひきおこします。穂いもちでは養分吸収阻害により著しい稔実不良となります。また、いもち病菌には品種に対する病原性が異なるレースが存在し、菌の変異により、それまで抵抗性であった品種が罹病化する場合があるので、抵抗性品種を栽培していても注意が必要です。


 防除の基本は総合防除です。発生の誘発因子を表に示します。病害の発生を助長する栽培を避けることで効果的な病害防除を行うことができます。イネの収量や品質等に大きく影響するのは穂いもちですが、穂いもちの伝染源は葉いもちであり、葉いもちの伝染源は苗いもちや育苗期の葉いもちです。近年、苗で発生したいもち病を持ち込む「持ち込みいもち」により早期に葉いもちが多発生し、穂いもちが多発生する場合が多くみられます。効果的な防除のために、圃場をよく見回り、適正な管理を行い、早期発見に努め、発生を認めた場合には早急に防除することが大切です。


表 いもち病の発生しやすい条件と対策
いもち病の発生しやすい条件と対策
(山口富夫,1987を一部改変)


 農薬防除において最も注意しなければならないことは、薬剤耐性菌です。耐性菌が発生している場合、同一作用機作の薬剤を散布しても防除効果はありません。箱施薬粒剤でも耐性菌の発生が報告されているので十分に注意してください。耐性菌に関する情報は、各都道府県の病害虫防除所に問い合わせてください。

 各防除体系におけるいもち病薬剤施用適期を図に示します。
 いもち病防除薬剤は予防剤が多いことから、適期に遅れないように施用します。箱施用薬剤はその長期有効性が苗いもちや本田での早期の葉いもち発生を防ぐことができるので効果的ですが、東日本地域では7月中旬頃に箱施薬剤の発病予防効果が低下することが多く、同時期に上位葉での葉いもちが急増し、穂いもちが多発生する場合があります。その場合上位葉での葉いもち防除を徹底します。現在、コンピューターを活用して、高精度な葉いもちの発生予察が行われており、その発生予察に基づき、的確な防除が可能です。穂いもち防除薬剤の多くは散布剤なので、出穂期を予測し、穂孕・穂揃期に的確に施用します。穂いもち防除粒剤施用適期は7月下旬~8月上旬です。


いもち病防除薬剤の施用適期
図 いもち病防除薬剤の施用適期
(東北各県の農作物病害虫・雑草防除基準より作成)


 中干し等との関係から散布後に田面を乾燥させている場合がありますが、粒剤は散布後4~5日間湛水状態を保持しなければ十分な効果が得られません。また、穂いもち多発生が予測される場合には傾穂期に追加防除を行います。冷害年には、防除適期に雨が多く、せっかく薬剤散布を行っても雨で流されてしまう場合がありますが、天候の変化に注意し、雨間薬剤散布をこまめに行うことで被害を小さくすることができます。


中島敏彦
(独)農研機構東北農業研究センター 水田環境研究グループ 水田作研究領域