提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


稲作

フタオビコヤガ(イネアオムシ)の効果的な防除方法は

 成虫には2本の帯があるのでフタオビコヤガと呼ばれています。幼虫は鮮やかな緑色なので、イネアオムシとも呼ばれます。春に発生する成虫は、夏のものよりも翅の色が濃くなる季節的多型を示します。
 幼虫は腹の部分の脚が退化しているので、尺取り虫のような歩き方をします。また老熟幼虫は特徴のある台形の食痕を残します。蛹になるときは、イネの葉を折りたたみその中に入り込みます。蛹の入った葉はイネ株から下に落ちることがあるので、田面水上に蛹の入ったイネの葉が浮かんでいるのを見掛けることがあります。


●もっぱらイネの葉を摂食

 野外ではイネ以外の有力な寄主植物は見つかっていません。もっぱらイネの葉を摂食する食葉性の害虫です。
 越冬した蛹から春先に羽化した成虫が水田に飛来し、イネの葉に産卵します。これが越冬世代で、暖地では年6回、寒地では年2回程度発生します。2010年に発生予察用性フェロモントラップの市販が始まり、成虫の発生動態を把握しやすくなりました。


●近年、再び多発傾向に

 図に発生面積の推移を示しました。近年一時的に減少していましたが、2000年代に入ってから発生
が全国的に多発するようになってきました。本田での薬剤散布が減少したことが原因の一つかもしれません。
 北海道における調査によると6月下旬、7月下旬、8月下旬で株あたり幼虫がそれぞれ2.7匹、8.7匹、26匹発生すると5%の減収につながるため、薬剤防除が必要とされています。株あたり26匹というとかなりの多発という印象です。見た目の食害に比べると収量に及ぼす影響はそれほど多くないと考えた方がよいでしょう。


フタオビコヤガの発生の年次推移<br />
フタオビコヤガの発生の年次推移
水田における発生面積と水稲作付面積から発生面積率を求めた


●密植や降雨多いと多発

 登録農薬としては、スピノサド(スピノエース)、シラフル(ジョーカー)などがあり、初期の発生には育苗箱施用で、後期の発生には本田散布をします。ただし、有効成分の濃度により農薬登録に違いがある場合があるので使用する際は注意が必要です。
 窒素過多により軟弱なイネになったり、密植すると多発することがあります。密植するとイネ株の間の風通しが悪くなるため湿度が高くなり、幼虫はこのような高湿条件を好むためだと考えられます。山形県の予察灯による誘殺数と気象要因との解析によると、第一世代の生育期に降雨日数が多いときは、第二世代の発生量が多くなるという結果が得られています。これは幼虫が高湿を好むことが原因の一つかもしれません。


●昔は「カイコの害虫」とされた

 かつてフタオビコヤガは「カイコの害虫」であるとされたことがありました。イネしか食べない虫がいっ
たいカイコにどんな「悪さ」をするというのでしょうか。次のようなことが考えられています。フタオビコヤガが大発生するとそれに寄生する緑きょう菌が増殖します。この菌はフタオビコヤガだけではなく、ほかの蛾の仲間にも感染することができます。フタオビコヤガが多発すると緑きょう菌が蔓延し、カイコの病気
が増えるというのです。生きものの間には思わぬ結びつきがあります。自然の複雑な仕組みの一端を垣間見せてくれる事例といえます。


森本信生
農研機構 畜産草地研究所 飼料生産研究領域
病虫害グループ 虫害担当