提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


稲作

昨年、ウンカが移す新しいウイルス病(イネ南方黒すじ萎縮病)が発生したという話を聞きました。その病気の特徴や今後の発生の可能性、防除対策について教えてください

セジロウンカ
 イネ南方黒すじ萎縮病は、2008年に中国で報告された新種のウイルスによるイネの病気で、セジロウンカ(写真右)がウイルスを移すことによって発病します。発病によってイネの草丈は著しく萎縮し、また穂が出にくくなるなど、収量に大きく影響します。

 この病気を移すセジロウンカは、日本では越冬できないため、毎年梅雨時期に中国南部などから日本に飛来します。この病気は、セジロウンカの飛来源にあたるベトナム北部や中国南部で、2008年以降に多発生していて、日本への侵入が警戒されていました。

 その中で、2010年8月以降、九州6県(熊本、鹿児島、長崎、宮崎、佐賀、福岡)と広島、山口の計8県で本ウイルス病の発生が初めて確認されました。本ウイルスに感染したイネは、葉先のねじれ(写真左)、株の萎縮(写真右)、株の葉脈の隆起などの症状を示します。

 これまで主に飼料イネ品種で発生や被害が確認されていますが、一部は食用イネでも確認されています。2010年には発病が確認されたものの、収量低下につながる大きな被害はほとんどみられませんでしたが、飛来源の中国南部では発生の拡大が続いていますので、今後も注意が必要です。また、セジロウンカは、西日本に限らず全国に飛来しますので、注意が必要です。


  
左 :イネ南方黒すじ萎縮病の病徴(葉先のねじれ)
右 :イネ南方黒すじ萎縮病によるイネ株の萎縮(左側)


●飼料イネ栽培には発生要注意

 コシヒカリやヒノヒカリのようなジャポニカ(短粒種)の多くの品種では、セジロウンカが産卵することによって稲体内に生体防御反応が誘導され、イネが生成する物質によってウンカの卵が死亡します。一方、インディカ(長粒種)の血が入った飼料イネ品種の一部では生体防御反応の働きが弱いことがわかっています。
 このことが、一部の飼料イネ品種や新規需要米の品種で新規ウイルス病が多く発生した理由と考えられます。このため、飼料イネ栽培においては、今後、セジロウンカによる吸汁害に加えて、イネ南方黒すじ萎縮病の発生にも注意が必要です。

 防除対策としては、まだウイルス病に強いイネ品種があるかどうかがわかっていませんので、まずはウイルスを移すセジロウンカを防除することが重要です。食用イネ品種の場合には、機械移植の当日に育苗箱施用薬剤を使うことが有効です。飼料イネ品種栽培などで育苗箱施用薬剤を使わない場合には、セジロウンカが多飛来した場合に飛来後第1世代幼虫の発生時期(通常は8月上旬ですが飛来の時期によって前後します)に、薬剤を本田散布することが有効です。


松村正哉
(独)農研機構九州沖縄農業研究センター 生産環境研究領域