提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


稲作

夏の高温を見据えた中干しなどの適切な水管理の方法は

 夏の高温条件で玄米へのデンプンの蓄積を増加させるためには、デンプンを入れる籾の数を増やしすぎないこと、蓄積させるデンプンの生産を高めることが重要となります。このことから、高温による品質低下を軽減するための水管理としては、①籾数を適正な範囲に制御すること、②生育後期の稲体の活力を維持すること、が重要となります。


●籾数の適正化

 高温条件では分げつが増加しやすく、穂数の増加により籾数が増加して乳白粒が発生しやすい条件になります。また、分げつの一部は穂を形成せずに枯死しますが、この割合が高まると生育後期のイネの活力が低下します。
 このことから、分げつの増加を抑制するための水管理が第一に必要になります。

(1)中干し
 「中干し」については、①開始時期と終了時期の見極め、②落水の程度と期間の決定、が重要になります。

 中干しの開始は、目標穂数に対応した分げつ数が確保された時期になりますので、例えば60株/坪(18.5株/㎡)植えの場合で、目標穂数が370本/㎡であれば、分げつが株当たり20本に達する時期が目安になります。
 また、中干しの期間が幼穗形成期(幼芽長2mm程度)にかからないように終了させる必要があります。特に、高温年では平年以上に開始時期や終了時期を早める必要がありますので、イネの生育を見極めることが重要です。落水の程度や期間は、圃場の水はけの条件や中干し期間の天候に応じて変える必要がありますが、1週間程度を基本として実施します。

(2)深水
 一方、「深水」については、障害不稔(冷害)への対応技術として知られていますが、高温登熟の対応技術としても有効であることが報告されています。分げつの盛期~最高分げつ期に15~20cmの深水管理を行うことで分げつ発生が減少して極端な穂数増加を防ぐとともに、出穂期以降の葉の窒素含有率が増加するなど登熟期の稲体の活力維持にも有効です。さらに、出穂期までに茎に蓄積されるデンプンの量が増加するため、出穂後に穂に供給されるデンプンの量は増加すると考えられます。
 深水管理は冷害が懸念される地域で中干しができない場合に特に有効ですが、登熟期に向けて土壌の透水性を高めることはできませんので、この場合には登熟期に間断灌漑などで対応する必要があります。


●生育後期の稲体の活力維持

出穂期以降の水管理としては、①早期落水防止と②間断灌漑が重要になります。

(1)早期落水防止
 収穫作業の効率化のために土壌を固めることが重要となるために、コンバインの大型化にともなって落水を早める傾向が強まっています。しかしながら、高温条件下で早い時期に落水すると登熟が不良となって品質や収量が低下しますので、出穂後少なくとも4週間は完全落水を行わないことが重要です。

(2)間断灌漑
 根を健全にし、土壌を固めるためには、間断灌漑が必要です。水管理により土壌の透水性を高めることで土壌中の有害物質が減少し根が健全に保たれ、高温条件でも品質の低下が抑制されます。なお、開花期はイネが最も水を必要とする時期ですので、出穂後5日間は水を切らさないようにし、その後、入水と自然落水を約5日ごとに繰り返すようにします。

(3)掛け流し
 高温登熟は気温だけでなく地温の影響を受けることが知られています。地温を低くするためには用水の掛け流しが有効です。用水の利用に制限がなければ、登熟前期に掛け流しを行うことで白未熟粒や胴割れ粒の発生を軽減できる可能性があります。最も有効な時期は出穂後5~15日頃です。


吉永悟志
(独)農研機構 作物研究所 稲収量性研究チーム 上席研究員