提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


稲作

夏の高温を見据えた適切な施肥管理の方法は

 近年の温暖化傾向のなかで、夏の高温条件での水稲生産では高温で多発する白未熟粒(玄米の一部または全体が白く濁ったもの)の発生を抑えるための栽培法が重要となります。玄米が白く濁るのは、玄米へのデンプンの蓄積が不十分になって玄米内部に隙間を生じることが要因です。デンプンの蓄積を十分に行うためには、デンプンを入れる籾の数を増やしすぎないこと、蓄積させるデンプンの生産を高めることが重要となります。このことから、高温による品質低下を軽減するための施肥法としては、①籾数を適正な範囲に制御すること、②生育後期の窒素供給を一定程度確保すること(稲体の窒素含有量が減ると光合成や登熟が低下しやすくなる)、が重要となります。


●籾数の適正化

 分げつの発生は気温の影響を受けやすく、高温条件では分げつが増加しやすくなります。このため、施肥量が多いと籾数が必要以上についてしまう可能性が高まります。登熟期の気温が高い場合には、籾数増加にともなって乳白粒の発生率が高くなることが知られています。コシヒカリの場合では、地域により異なりますが27000~30000粒/㎡が籾数の目安とされています。地域や品種に対応して定められている籾数、穂数レベルを考慮した施肥が求められます。具体的な施肥法としては、分げつ期の肥料の効きを抑える必要があり、基肥の施用量を減量することが重要です。特に、高温条件では生育初期に土壌から供給される窒素が増加する傾向があるため、基肥の一部を生育中期以降に回すことが合理的です。


● 登熟期の窒素供給の適正化

 化学肥料による窒素施用量は20年前までは全国平均で10㎏/10a以上でしたが、近年は7㎏/10a以下にまで減っています。これは、倒伏しやすいコシヒカリの栽培がこの間に増加した影響もありますが、食味品質向上のために玄米中のタンパク含量を下げる目的で、特に穂肥施用量が減少してきたことが関連しています。堆肥等の有機物施用量も減少しているために、土壌から供給される窒素量が低くなっていることや、高温条件では土壌中の地力窒素も生育前半に吸収されてしまうことを考えると、夏季の高温年に穂肥の量を減らした条件では、登熟期のイネの窒素吸収は必要以上に低下することが想定されます。穂肥の種類や量が外観品質に及ぼす影響については、穂肥の極端な減量により背白粒や基白粒が多発することや、被覆尿素などの緩効性窒素肥料を穂肥に用いることで白未熟粒の発生が低下する、ことなどが報告されています。


●具体的な施用法

 具体的な施肥量は圃場や品種の条件で変動するため一概にいえませんが、施肥法を改善するために考慮する項目は以下のように整理されます。

①生育後半の施肥割合を増加
 例えば穂肥は0・5~1㎏/10a程度増量。

②穂肥のタイミングに注意
 早すぎると籾数を増加させてしまい、遅すぎると食味への影響が懸念されます。出穂15~20日前に1回施用し、葉色が依然として低い場合には追加するなどの対応が必要です。

③被覆尿素等の緩効性窒素肥料の利用
 基肥、穂肥とも緩効性窒素肥料を用いることでイネの活力が向上して品質が向上することが報告されています。この肥料は窒素が徐々に溶け出すためイネの吸収割合が高いのが特徴です。施用する場合には一般の化成肥料よりも20%程度を目安に減量する必要があります。

④食味との関係
 窒素の施肥を減らせば減らすほど食味計による食味値は高くなりますが、極端な減肥では玄米の粒張りが悪くなり、食味も良くなりません。葉色を確認しながら追肥の量と時期を決定する必要がありますが、穂ばらみ期(出穂前10日前)までに施肥を実施する必要があります。


吉永悟志
(独)農研機構 作物研究所 稲収量性研究チーム 上席研究員