提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ヒゲおやじが語る天敵の話【17】

2011年06月13日

サシェに入った天敵カブリダニ

     山中 聡


 サシェとは、もともと、中にハーブや香木を入れる小さな香り袋のこと。これをヒントに、天敵であるミヤコカブリダニやスワルスキーカブリダニをあらかじめ小袋に入れ、吊り下げて放飼できる製剤が開発されました。


 カブリダニ製剤は、「害虫の発生直前から発生初期に放飼し定着、増殖させることで、後から発生する害虫の密度を長期的に低く抑えることができる基幹防除剤」と、IPMプログラムの中で位置付けられています。ミヤコカブリダニは、イチゴなどのハダニ防除の基幹防除剤、スワルスキーカブリダニはキュウリ、ナス、ピーマンなどのアザミウマ類、コナジラミ類の基幹防除剤として、広く普及されるようになりました。

 これらの製剤はフスマと餌ダニを加えた粉状であるため、直接葉上に散布する方法が主流です。しかし、作物の生育状況により、また、カーネーションなど葉の小さな植物体や、逆に果樹類のような大きな植物では、効率的に放飼することがむつかしく、一時的にティシュペーパーに包んだり、コーヒーフィルターに入れて備え付けたりする工夫が必要な場面もありました。


 そこで開発されたのが、カブリダニをフックのついたサシェに入れて吊り下げる製剤です。


●サシェ製剤のメリットと使い方

1)サシェ製剤は、いわゆるカブリダニの基地としての役割を果たします。カブリダニは吊り下げた小袋から徐々に外に出歩き、広がって行きます。そのため、今までのように圃場の作物すべてに天敵をふりかける必要はありません。数株ごとに吊り下げておけばよく、放飼にかかる時間はこれまで以上に短くなります。

2)対象以外の病害虫を防除するためには、カブリダニに若干影響のある薬剤を使用しなければならない場面もでてきます。隠れ場所のなかったカブリダニは、薬剤の影響で密度が減少することもありました。しかし、サシェ製剤では、袋がカブリダニを保護するシェルターの役目も果たすのです。
右 :試験圃場にて撮影

3)対象害虫の発生は均一ではありません。害虫が発生しやすい場所や、時間が経ってもそれほど発生しない場所もあるなど、ムラがあります。サシェ製剤は、害虫発生初期には均一な吊り下げが基本ですが、その後、害虫発生に合わせて簡単に移動できます。サシェを害虫発生が多く見られる株に移動し、集中的に害虫を捕食させる対応が可能となりました。


●ボトル製剤との併用が効果的

 サシェ製剤を生産者の方々に利用してもらうのは、農薬登録取得後になりますが、ボトル製剤も併売することにしています。ボトル製剤には、サシェ製剤にないメリットがあるからです。
 隣の株と密着している場合、カブリダニはサシェから容易に隣の株に移動しますが、定植直後の幼苗では、隣接している株との間隔が広く、分散が難しいときもあります。栽培初期での天敵利用は、ボトル製剤による全株放飼が効果的です。
 次回は、サシェ製剤の効果と、それらを利用したIPMプログラムをご紹介します。

やまなか さとし

東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長