提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ヒゲ親父が語る天敵の話 【13】

2009年08月14日

活躍中! 新規天敵スワルスキー

     山中 聡


 害虫を捕食する「スワルスキーカブリダニ」(商品名スワルスキー)という天敵の農業生産者への販売を、2009年1月中旬から始めました。

 この天敵は、これまでのハダニ類を捕食するカブリダニ類天敵と違って、ウィルスなどを媒介したり、薬剤抵抗性の発達で防除が難しかったアザミウマ類、コナジラミ類の幼虫を主に捕まえては食べてくれる益虫です。


アザミウマを捕食するスワルスキー “スワルスキー”なんて変な名前ですが、約40年前にこのカブリダニを発見したイスラエルの研究者にちなんだ名称です。最近になって、大量に増殖できるように開発されました。

 ヨーロッパでは、2005年のスペインでの使用を皮切りに、キュウリ、ピーマン、パプリカ、なす、豆類、すいか、メロン、ガーベラ、ばら、きく、ハイビスカス、いちご等の果菜類におけるアザミウマ類、コナジラミ類防除で、すでに利用されています。

 中でも、スペインなど南欧では、タバココナジラミの薬剤抵抗性問題、ウィルス媒介問題の解決の切り札として、いくつかの天敵(ハナカメムシや寄生蜂)とともに、利用する防除体系が確立されてきています。


 国内での使用事例も増えてきました。
 3月下旬から4月にかけて、スワルスキーカブリダニを温室内に放します。すると、作物の葉裏などを棲家として、定着します。その後「発生するはずのアザミウマ類、コナジラミ類がぜんぜん増えてこない」、「被害が出なくなった」というような効果が出てきています。


 今現在、うまくいっている作物は、ピーマン、ナス、パプリカ、キュウリ、インゲンなどです。各種作物、作型で実証試験を積んで、国内の条件で、うまく利用できるような体系を構築しているところです。


スワルスキーの雌成虫と卵 「天敵を利用して農作物を作る技術はむずかしい」、「他の農薬が自由に使えない」、「効果がシャープでなく信頼性が低い」などの理由から、天敵は、大半の野菜産地で、面的な利用がされてこなかったと思います。

 しかし、促成イチゴのハダニ防除におけるミヤコカブリダニとチリカブリダニを使った防除体系が、確実な効果あげています。ハダニの薬剤抵抗性の発達の回避、主要殺ダニ剤の使用回数の温存という意味でも、現場への貢献は大きく、徐々に一般的な技術となりつつあります。


 スワルスキーがアザミウマ類、コナジラミ類を良く食べることからみて、他の作物でも、カブリダニを使いながら、天敵に影響の少ない農薬も利用する、という防除体系ができることでしょう。

 さらにこの7月には、ナスでのチャノホコリダニ防除に、スワルスキーを利用できるようになりました。野菜の生産現場での天敵利用が、これから、より広がっていくことを期待しています。


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右上 :アザミウマを捕食するスワルスキー
左下 :スワルスキーは葉裏の葉脈のくぼみを棲家として増殖する性質があります。
雌成虫(矢印)の体長は約0.3mmあります。丸で囲んだのは繊毛の先に産み付けられたスワルスキーの卵


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やまなか さとし

東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長