提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ヒゲ親父が語る天敵の話 【10】

2009年04月20日

天敵に快適な棲家づくり(2)

     山中 聡


防虫ネットを上手に使う

 野外では、春になるといろいろな花が咲き、植物も生育を再開し、越冬していた虫たちも活動を始めます。温室内の天敵も活動を始めていますが、環境条件によっては、天敵よりも害虫の増え方が早くなったり、さらに温室の入り口や側窓から、野外で増え始めた害虫が侵入するようになります。


 天敵を快適に定着、増殖させるためには、餌となる害虫が増えすぎても困ります。このため、温室の開放部に防虫ネットを展張することを勧めています。

  

 ネットの目合いとしては、アザミウマやコナジラミを対象として0.6~0.8mmが適当です。しかし、ネットの展帳は温室内の昇温問題につながり、温度が高くなると困るイチゴなどでは、しばしば敬遠されてしまいます。


 最近面白いことが分かってきました。アザミウマの温室への侵入は、大部分が地上から高さ1m未満付近で起きているのだそうです。側窓のネットを下半分だけ展帳し、上部を開放しておいても、かなりの侵入を阻止できるそうです。ネットの展帳が下半分ならば、温室の昇温問題も解決でき、天敵に快適な棲家を与えてやれると考えています。


紫外線フィルムの効果
トマトハモグリバエの食痕
 もうひとつ。最近、強力な助っ人が現れてきました。それは「紫外線除去フィルム」です。アブラムシ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類等の微小害虫は、近紫外線領域の波長(特に360~380mm)の光へ向かっていく性質があります。これは「走行性」といわれています。

 紫外線除去フィルムは、これらの波長の光を施設内に透過させません。施設に被覆することで、微小害虫の施設内への侵入を防止し、施設内での移動、分散を抑えることができます。

 これに対して、天敵は、比較的紫外線除去の影響を受けにくいようです。もちろん紫外線が必要な作物もありますが、こうした環境整備を進めることで、より天敵の住みやすい空間を作ってやることが、これからの害虫防除のあり方だと考えています。


追)年明けからずっと忙しく、書類に埋もれた生活が続いてきました。すでに啓蟄が過ぎ、土の中からいろいろな虫たちが出てくるのと同じように、これからの季節、コラムへの発信も加速させていきたいと思っています。


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やまなか さとし

東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長