提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ヒゲ親父が語る天敵の話 【9】

2009年02月03日

天敵に快適な棲家づくり(1)

     山中 聡


 年も改まり、このコラムも2年目を迎えることになりました。今年もどうぞよろしくお願いします。

 さてこれまで、いろいろな天敵が農作物の病害虫防除に役立つ、という話をしてきました。今回は、天敵が快適に過ごせる環境づくりについて、書くことにします。

 害虫に寄生したり捕食する天敵を利用して、農作物の生産現場で防除プログラムを組みます。このとき、想定外の病害虫が出てしまったら、どのように対応するかについても、考えておくことが大切です。

  


注意して農薬を使う

 天敵も虫の仲間なので、強力な農薬でいっぺんにやられてしまうことがあります。
 イチゴ、ナス、ピーマンの栽培では、ハダニを捕食するカブリダニを天敵として定着させます。ここにアザミウマ類やアブラムシ類が多く発生したので、農薬を使いました。カブリダニに影響がある農薬だったので、せっかく居ついたカブリダニがいなくなり、ハダニが増加してしまったという事例があります。

 殺菌剤は病気の薬だから、カブリダニには影響がないと考えるかもしれません。が、弱いながらも影響を及ぼすこともあります。天敵にとって快適な環境を作るために、その他の防除で利用する農薬の影響もつかんでおくことが大切です。


エサがない時期を乗り切る

 また、天敵のエサとなる害虫が少なくなった時期に、天敵を減らさないように工夫することも大切です。
天敵によっては、エサ害虫の減少とともに減ってしまうものもあります。それに対して、多食性のミヤコカブリダニやスワルスキーカブリダニは、花粉やコナダニ、トビムシ等微小な虫も食べるので、害虫が減っても困りません。盛んに利用されるようになったのは、そのためです。

 害虫が増えるまで、害虫以外のエサを食べられる環境を作ってやることが必要です。通路に、モミガラやワラを敷く方法も有効です。


利用をいつ始めるか

 最後は、天敵利用をいつ始めるかです。気温が上がり、天敵が活動を続けられる時期であることが必要です。暑さ、寒さに弱い天敵もいます。最初に放飼する数は限られているので、減らさずにすぐに定着、増殖ができる状態で始めることが大切です。

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やまなか さとし

東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長