提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ヒゲ親父が語る天敵の話 【7】

2008年10月21日

施設の中のガードマン

     山中 聡


コレマンアブラバチ

 まず写真をご覧ください。小さな蜂が体操のあん馬の選手のような格好をしています。人間だったら、かなりの腹筋と力がないと、こんな格好はできません。私には無理です!!
 蜂は、一体何をしているのでしょうか? 


 この小さな蜂は、天敵昆虫アブラバチの1種、コレマンアブラバチの雌の成虫です。おしりの産卵管をアブラムシの体に刺して、卵を産み付けているところです。


 アブラバチ類は、アブラムシの体に卵を産みつけます。孵(かえ)った蜂の幼虫は、その体を食べて成長します。幼虫は蛹(サナギ)になり、成虫となって羽化脱出します。

 アブラバチに寄生されたアブラムシは体の色が茶色や黄金色に変化するので、寄生されているかどうか一目でわかります。このように茶色になったアブラムシは、マミーといわれます。
写真 下:コレマンアブラバチの寄生を受けたアブラムシ(マミー)


コレマンアブラバチの寄生を受けたアブラムシ(マミー) 
 多くの種類があるアブラバチの中で、天敵昆虫として市販されているものに、コレマンアブラバチ(製品名:アフィパール)があります。ワタアブラムシやモモアカアブラムシなどの害虫が発生する、ナス、ピーマン、イチゴ、キュウリなどの果菜類栽培で、施設内のアブラムシ防除に利用されています。


 近年、施設内にアブラムシが発生する前に天敵を増やしておき、害虫が発生したら自然に密度を抑制させる方法が、栽培現場で定着してきています。

 アブラムシの発生に気がつかず、見つけたときにあわてて化学合成殺虫剤等で駆除するのが、今までの流れでした。これでは、薬剤のかけむら等により、アブラムシを完全に抑えることができません。再びアブラムシが増加することも多く、化学合成農薬の処理回数を減らせないことも問題です。

 コレマンアブラバチは、大麦等のイネ科作物を加害するムギクビレアブラムシにも寄生します。そこで、施設内でこの麦類を育て、野菜には影響がないアブラムシをエサとして、天敵であるコレマンアブラバチを増やします。
 こうしてアブラムシの発生前に天敵が「警備」してくれるので、もし発生しても、急激に大発生することがありません。

 栽培作物とは別の植物につく虫を使って、天敵を増やす、この方法は、バンカー植物法と呼ばれています。バンカーは、お金や大事なものを預けて、増やすというバンク(銀行)からきています。

バンカー植物  バンカー植物
写真 :施設内のバンカー植物

    
 栽培された作物の安全安心や、生産者の働く環境の改善、健康への配慮が、今、求められています。そのためにも、天敵の事前放飼によって害虫や病気の発生をおさえることで、益虫に悪い影響を与えてしまう化学合成農薬の使用をひかえ、環境にやさしい薬剤による防除に切り替えていくことがますます重要になってくるでしょう。


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やまなか さとし

東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長