提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ヒゲ親父が語る天敵の話 【1】

2008年04月10日

自然の営みと生物農薬

     山中 聡


 春の気配が感じられるようになると、夕方、日が暮れる時間が遅くなったと感じられるようになり、春分の頃には、確実に“日が延びた”ことを実感します。このコラムが始まる時期には、桜の花が散っていることと思います。


 私たちは、自然の営みを肌で感じながら生活し、自然によって生かされているのです(なんとなく哲学的になってしまいました)。

 そして、私たち人間とともに、自然の恩恵を一番に受けているのは、農業といえるでしょう。


 戦後の食糧難や、高度成長の時期は、食糧増産が第一の優先課題でした。私たちは力ずくで田畑に作物を植え、環境負荷を気にせず、大量の農作物を作ってきました。

 しかし、そういう時代が過ぎ、科学が発達した現代となり、安全、安心、環境保全が見直される今、私たちは大きなひずみに気がついたと言えるでしょう。


 本来は、「病害虫」も自然の一員として、私たちと敵対することなく、自然界で細々と生き長らえていたようです。

 が、大量生産のために単一の作物が生産されるようになり、それまで保たれていた、生物どうしの共存、とでもいえるような絶妙なバランスにひずみが生まれた過程で、人間の都合によって病害虫に仕立て上げられたのです。



 また、様々な効果を持つ殺虫剤、殺菌剤などの化学合成農薬を利用した慣行防除の下では、抵抗性害虫の出現、作物残留の問題、環境への影響など多くの問題が生じてきています。


 「生物的防除」は、「慣行防除」に対し、自然界に存在する天然の抑制力を人工的に高めたり、増加させたりして、病害虫を制御(=コントロール)します。


 生物農薬は、生物的防除に利用するために、(自然の一員の中から)有益な微生物、天敵昆虫等を増やし、製品化したものです。昆虫病原性線虫、昆虫寄生性糸状菌、細菌、ウィルス、病害拮抗微生物や捕食性昆虫、寄生性昆虫などが生物農薬として使用されています。


 次回から、これらについて順次ご紹介していきたいと思います。


やまなか さとし

東京生まれ、横浜育ち。農学博士。
農薬メーカー研究所にて各種生物農薬の研究開発に従事。
現在、アリスタライフサイエンス(株) IPM推進本部 開発部長