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食の「ものさし」を捨てるときが来た 【2】

2008年03月13日

「市場規格に合わない野菜」が面白い

    農産物流通・ITコンサルタント 山本謙治


 もう終了した番組だが、「どっちの料理ショー」という人気番組があった。

 僕はこの番組をとても評価している。NHK以外の民放で初めて、「糖度12度にもなるスナップエンドウ!」などのように、品種や生産者にスポットを当ててエンターテインメントにした番組だからだ。茶の間はこのような、「手に入らない品種」や「特殊な栽培方法」などを楽しく観て、こんな美味しそうなものを食べてみたいと思ったはずだ。

 昨今、レストランでは「野菜の時代」を迎え、多くの気の利いた店で農家産直で手に入れた珍しい洋野菜が並ぶようになっている。コールラビや野生種のルッコラ、セロリアックなどのマイナー作物が主役のように扱われ、楽しまれている。


 昨年中にお亡くなりになった、野菜に造詣の深かった江澤正平先生は「野菜は文化、流通は文明」と仰った。文化は開放性のもので、どんどん多種多様に細分化されていく。


  

 しかし、流通というものは閉鎖系で、いかに効率的にさばくかという観点から、規格を決めて固定してしまう。

 だから流通に携わる者は本物の味を識って、流通の仕組みを絶えず見直さなければならないよ、ということを仰っていたと理解している。そういう意味では、消費者のニーズ(欲望)が細分化して「面白い品種」に眼を向けてくれるようになった現在は、とても重要な時代なのだ。


 山形県庄内地方の在来作物を、創意に溢れたイタリアンの逸品に仕立て上げる名人シェフ・奥田さんの名前をきいたことがある人も多いだろう。

 「アル・ケッチャーノ」というその店には連日のように全国から客が押し寄せる。

 彼らが楽しむのは、在来品種である温海カブや平田赤ネギ、ダダチャ豆などがオリーブオイルと塩をベースにしたシンプルな味付けで供される料理だ。こうした料理は、在来品種が珍しくない時代には見向きもされなかったはずだ。


 規格品しか手に入らない現在だからこそ、やんやの喝采を浴びているのだと思う。つまり、耐病性がなく収量も上がらない、作りにくい作物として敬遠されてきた在来品種こそがこれからの主役になるかもしれない可能性を、アル・ケッチャーノは現出しているのである。

  


 ちなみに同店がこうした野菜を使う背景には、山形大学鶴岡キャンパスの農学部の有志達が集う「山形在来作物研究会」の存在がある。

 彼らが山形の在来作物を掘り出して、奥田シェフがそれに合った調理法を考案し、一皿に結実させる。この絶妙な連係プレーが豊かな世界を創り出しているのだ。こうしたコラボレーションのかたちは、全国的に求められていると思う。(つづく

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やまもと けんじ

株式会社グッドテーブルズ代表取締役・農産物流通コンサルタント。
一次産品の商品開発のアドバイザーをする傍ら、全国の郷土食を食べ歩いている。「週刊フライデー」、「きょうの料理」、「やさい畑」などに連載を持ち、著書に「日本の食は安すぎる」(講談社)、「実践農産物トレーサビリティ」(誠文堂新光社)などがある。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」も人気が高い。