提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


青虫の足あと【35】

2010年06月08日

障害者雇用の壁

    山田早織


4月から、精神障害者の施設に復帰いたしました。

先日イチゴ農家さんから、障害者雇用についての問い合わせをいただき、早速伺ってお話を聞かせていただきました。知り合いの方から障害者雇用の話を聞き、興味を持ってくれたとのこと。ありがたい~!!


まず、年間を通してどんな作業があり、どこに人手がほしいのか、などの聞き取りを行います。
その農家さんは、やはり収穫の時期(11月後半から4,5月くらいまで)がもっとも忙しく、その時期に人手がほしい。でも、年間を通しての雇用ができるほどの作業量はないそう。確かに単一品種を専門で作っている農家さんは、忙しい時期は決まっている。
そう。まずはそこが一番のネック。
年間を通して、なんらかの作業があればいいのだが・・・
ベットでの栽培に草取りは必要ないし・・・育苗も一時忙しいだけで、苗を植えてしまえば終わってしまう。
う~ん。。。  頭を抱える。


次に、作業のあいまいさ。
あいまいと言うと誤解があるかな。
たとえば、イチゴの摘果作業。どれとどれを残してどれをとるのか。
判断がつきにくい。
「花の色が変わってくれればいいのにねぇ・・・。一番花、二番花でさ」なんの解決にもならないとわかっていても思わずつぶやく。


収穫も大変だ。
みかん切りの作業のように、総取りなら迷うことはないが、色を見て判断する・・・というのは限りなくムボーに近い指示だ。
色見本を作ったところで、相手は工業品ではない。自然(?)のものだ。
「この見本はヘタの下がこれだけ白いけど、こっちはここしか白くないです。これはどうですか?? 採ってもいいですか??」というような確認作業で一日終わってしまいそう。もしくは迷った時点で固まってしまうかも知れない。

これは極端な例だけど、実際に確認作業というのはどうしても多くなる。
そうすると、今度は別の問題が出てくる。
それは・・・


一緒に働く人のストレス。

障害者を雇用してくれるのは、会社の社長さんや事業主だ。
だけど、実際に毎日彼らと一緒に働き、時には面倒を見たり、フォローをしたりするのはパートさんだったり従業員だったりするわけで・・・
いろいろな面で負担が行くのだ。
私が携わっている中で感じたのは、やはり「むいている人」とそうではない人がいるということ。それは当たり前だと思う。
それに、知的障害の人にはすごくいいけど、精神障害の人にはちょっと合わない・・・など、障害別でみてもかなり違いがある。


そんな従業員さんと障害者の間に入る、というのも私たちの仕事だ。
正直、障害者雇用というのは、なかなか大変なのである。
でも、うまくマッチングできれば、本当にすばらしい戦力となってくれるのです!!

障害者雇用を進める上で、さまざまな制度を活用することができる。
支払う給料を補助してくれたり、障害者を雇ったときに休憩所をつくるなど、施設を整備するための補助金が出たりするものもある。もちろんジョブコーチを頼むこともできるし・・・
それらの制度を最大限に利用できるよう、私たちも情報を提供する。


ただ・・・制度を利用するのに必要な条件がある。
それは「雇用保険」に加入していること。
まあ、人を雇う上ではそりゃ必要です。でも、個人経営だったり、農家だったりすると、なかなか入れないのが現状。
家族経営が多い農家。たとえば親と息子でやっている場合、世帯が別でないといけない。
(他に従業員がいれば別だけど)
なかなかそんな都合よくいきません。。。
せっかくある制度なのに、就農という枠ではなかなか役に立たないのが悲しい。


もちろん、障害者雇用を機会にいろいろなものを見直し、雇用保険に加入してくれるところもありますが、それはごくまれ。ほとんどの農家さんは制度を使わず、給料を支払って雇ってくれています。
でも、それができるのは、いろいろな意味で「余裕があるところ」だけではないでしょうか??
金銭的な余裕、精神的な余裕。
毎日の仕事に追われていたら、そんな余裕はなかなか生まれません。

今の障害者雇用での(ある意味)メリットになる制度というのは、やはり企業相手に作られているな、と実感します。
法定雇用率も引き下げになり、企業はますます障害者雇用について、考えていかなくてはいけない時期にきています。
私たちも努力して、障害者雇用を促していきたいと思います。


農家向けの制度もぜひ作っていただきたい。
たとえば農家に限り、雇用保険の有無を問わず使えるものや、年間を通じての雇用が難しい場合は、何軒かの農家をグループ化して共同で雇用できるものとか。。。
これからますます障害者と農家のコラボは増えていくだろうし、もっともっと盛んにしたい。
日本の農業を障害者が支え、障害者を日本の農業が支える。
そんな素敵な日本を作ってほしいな。

(新たなる戦力を生み出す努力をするぞ~!! &戦力を持続させるために今日もがんばるぞ~!)

やまだ さおり

静岡県浜松市出身。フランス料理店に勤務後、23歳で起業した(有)しあわせ家族代表取締役、園芸福祉士。培養土、花苗・野菜苗の販売のほか、庭づくりや商店のディスプレー、野菜の宅配など、関心とニーズのある分野に事業とボランティアを展開中。