提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


農業機械よもやま話 【11】

2008年12月25日

全自動ねぎ収穫機の開発

    津賀 幸之介 


 12月に入り、鍋物のおいしい季節になりました。鍋物の主役はいろいろですが、脇役の代表はネギでしょう。特に白ネギ(根深ねぎ)は、軟白部と呼ばれる、白くてやわらかい部分(葉鞘)の独特の甘み辛みが絶妙で、適度な歯ごたえがあり、鍋の煮加減によりお好みでいただけます。


 白ネギの栽培は、図のように溝に植えて ネギの草丈が伸びるに従い、根元に土寄せ(培土)を繰返し、収穫時には30~50cm高畝となります。このように、茎葉に光が当たらないようにして、軟白部を作ります。秋から冬に向かい、寒くなるにつれ軟白部分の甘味が増え、美味しさが増すそうです。



新農業機械実用化促進(株)サイトより作図


 この培土作業もたいへんですが、収穫作業はもっとたいへん。高く盛り上げた畝を崩し、土の中からねぎを傷つけないように、1本1本ていねいに掘り取り、拾い集めて運ばなくてはなりません。生産者は、収穫後の(出荷のための)調製作業を控えているので、なるべく省力化し、能率的に行いたいのが心情です。


 10年程前、「ねぎ収穫機」の開発研究を担当したことがあります※1)。 
 一般に、葉物野菜の機械収穫・収容は難しく、白ネギの場合、高畝の土を削るとネギがバラバラになってしまうので、揃えて収容することができません。また、畝上のネギをはさんで土を削るとネギに傷がついてしまいます。研究当初は、そのタイミングがなかなかうまくあいませんでした。

 そこで、畝全体をすくい上げ、白ネギを根こそぎ持ち上げた後に、ネギの葉を挟んでぶら下げ、重力と振動で土を落とし、ネギ1本1本をバラバラにほぐして、そろえて収容する方式を試してみました。



開発したネギ収穫機※2)


 市販のイモ掘り機をこの方式に改造した試験機で、見事に白ネギを収穫・収容することができました。アイディアは良かったのですが、実用化に至るまでには、ここから苦労が始まりました。
 北海道から鹿児島県まで、30数カ所で試験を行い、乾燥した固い粘土や、干拓地の水を含んだ重い砂地は堀り上げが難しく、また、機械は高畝を崩した跡を走行するため、大きく左・右に傾斜し、真っ直ぐ進むことができませんでした。

 その後、共同研究企業の熱心な取組みもあり、問題点をひとつひとつ解決し、各地の土壌条件に広く対応できる試作機が完成しました※3)。能率も慣行作業の約3倍程度と試算され、各地で高い評価が得られました。

製品化されたネギ収穫機  製品化されたネギ収穫機
製品化されたネギ収穫機


 また、本機の発売開始当時、中国野菜の輸入が話題となり、ねぎ等3品目に関してセーフガード措置が発動され、機械化は、国産ネギの生産費を低減する有効な一手段であり、収穫機の現地導入に拍車がかかりました。

 現在も、当時と同じ型式のねぎ収穫機が普及しており、葉菜類の乗用型全自動収穫機としては、全国で広く利用されている唯一の機械と思われます。そのうちに、この収穫機が中国で利用され、そのネギの輸入される日が来るかも知れません。


※1) ねぎ収穫機((独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センターより)
※2) 開発したネギ収穫機((独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センターより)
※3) 製品化されたネギ収穫機(クボタ電農スクエアより)


(※画像をクリックすると大きく表示されます)

つが こうのすけ

大阪府出身。農学博士。昭和43年農業機械化研究所(現:農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター)入所。農業機械の開発研究に従事。同センター所長を経て、現在:同センター新技術開発部プロジェクトリーダー