提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


フランスまるかじり生活 【6】

2007年10月04日

 人から学ぶこと

    柴田千代


 朝日の眩しさに目を覚ます。
何日ぶりだろうか こんなにすがすがしい朝を迎えたのは。今日は溜まった洗濯物を片付けないと! と気合が入る。
 
 天気の良い日は、牛や野菜たちもご機嫌! 久しぶりの太陽を逃さぬかのように、見つめている。

ニンジン畑の雑草抜き作業

 畑に向かう私たちの足取りも、今日は軽い。午前中の作業内容は、ニンジン畑の雑草抜きだ。軽く長さ300mはある畑に、子指ほどの小さなニンジンたちが芽を出している。その芽の間に生えている雑草を、手で抜くのだ。

 有機農法(ビオロジック)なので科学的な薬品は使わない、だから農薬も除草剤も使わない。機械の入らない作物の間の雑草抜きは、全て手作業で行っている。

 作業を一緒にしている彼に聞いた。

 「何かもっと効率のいい方法はないの?」

 「色々試しては見たんだが、やっぱり手で取るのが一番いいんだ。
手間をかけることを惜しんだら、他の野菜となんら変わらない物になってしまう。
僕たちは僕たちの手で育てたいのだから、この方法が一番なんだ。 
君だって除草剤を使わない人参を食べたいだろう? 
僕はこの野菜たちを食べると自然と笑顔になるよ」


 私は質問したことを少し恥じた。皆、ものすごく手間がかかり、きりなく続く作業を毎日こなしているのだ。

 そして、こんなに一生懸命作った野菜が、なぜ美味しいのかが良くわかった。有機農法はもちろん、野菜にはみんなの心が詰まっているからなんだと確信した。


 遠くで教会の鐘が鳴る。 カラ~ン カラ~ン みんな声を合わせ「やった!お昼だ!」と叫ぶ。


みんなで一緒に昼食


 農場の従業員、フランス農業学校の実習生、ドイツから来ている実習生、そして私、みんなでテーブルを囲む。毎回、話はとても弾むが、気がつくと全員ドイツ語で話をしている。アルザス地方は、昔、ドイツ領だったことから、地名も言語もドイツ語とフランス語が入り混じっている。

 そのため、ドイツから、毎年、学生が3週間の農家実習に訪れる。私と一緒に研修をしているドイツ人の女の子は、歳を聞くと中学生だった(13歳・14歳・15歳)。顔だけ見ると、とても大人びているので、初めはまったく気づかなかった。


 ドイツでは、中学生の夏休みに、農家へ必ず実習に行くという。「こんなに小さい時から、畑で仕事をしているのか」と大変驚いた。


 さらに驚いたことは、ドイツ人の中学生たちが、農場の従業員さんとともに、真剣に農業の話をしていることだった。皆それぞれに自分の意見を持ちしっかりと発言をしている。わからないことは質問をし、自分が知らないことは、ノートにメモを取る。

 私が同じ歳の頃に同じような環境を与えられていたとしたら、ここまで農業に興味を持ち、発言することができたであろうか。いや、できなかったと思う。 

 彼女たちを見ていると、ヨーロッパにおける農業に対する意識の高さを実感する。

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しばた ちよ

東京農業大学 食品理工学研究室(チーズ班) 卒業
新得共働学舎 チーズ工房 2年勤務
フランスワーキングホリデービザにより、現在チーズ製造技術を取得するため、フランスで農家製チーズの技術をじかに学び帰国。