提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ぐるり農政【113】

2016年08月23日

日本人の食が細くなっている

ジャーナリスト 村田 泰夫


 日本人の食が細くなっている─こんな分析が平成27年度の「食料・農業・農村の動向」、いわゆる農業白書に載っている。国民が実際に食べたカロリーである「摂取熱量」は、昭和45(1970)年から一貫して減少し続けている。


murata_colum11_1.jpg 国民1人・1日当たりの摂取熱量は、約20年前の平成7(1995)年には2042kcalだったのが、平成26(2014)年には1863kcalしか食べなくなってしまった。日本人の胃袋が小さくなっているのである。

 また、国民に対して供給される総熱量(「総供給熱量」)も平成8(1996)年の2670kcalをピークに減り続け、平成26(2014)年は2415kcalになった。「総供給熱量」は破棄された食品や食べ残された食品も含まれ、「摂取熱量」は実際に国民が口にした熱量のことをいう。

 食べ残しが減ったのであれば、それはいいことなのだが、総供給熱量と摂取熱量の双方とも減っている原因が、人口の減少と1人当たりの食べる量が減るというダブルパンチによる食料消費市場の縮小だとすれば、農業生産者にとって由々しきことである。


 総供給熱量を品目別にみると、畜産物や油脂類、小麦、いも類・でん粉の供給に大きな変化はなく、コメや魚介類の供給量が減っている。いわゆる「コメ離れ」が進んでいる。若い女性を中心にダイエット志向が強く、おコメなどの糖質をとると太るということから「糖質制限」の食事が影響しているのかもしれない。

 平成7年から26年までの約20年の間に、摂取熱量がどう変わったかを、年齢別に見てみると、70歳以上層を除いたすべての年齢階層で摂取カロリーが減っている。とくに30歳から49歳までの働き盛りの世代で摂取カロリーの減少が目立つ。


murata_colum11_2.jpg これまで「お年寄りが増える高齢化が食料消費減少の一因」とされていた。確かに1人当たりの食事の量では、お年寄りの摂取カロリーは青壮年層と比べれば少ない。しかし、この20年間の傾向を見れば、70歳以上の高齢者の摂取カロリーは増えている。摂取熱量の減少は、高齢化というよりも、食べる量そのものが減っていることに原因がありそうだ。


 国民1人当たりの食べる量が減ったことと関係ありそうなのが、朝食欠食率の上昇である。平成7年には8.0%だった朝食欠食率は年々増え続け、平成26年には11.6%に上昇している。

 朝食をとらない理由は、さまざまである。「朝起きるのが遅くて、食べる時間がない」「起きたばかりで食欲がない」などと答える人が多い。思い当たる人が多いことだろう。でも、「朝起きるのが遅い」とか「起きたばかり」というのは、昔からあった事情である。近年になって発生した事柄ではない。

 「なるほど」と思える理由は、「夜型生活が増えたから」である。日常的に夜ふかしすれば、朝起きるのがつらくなるだろうし、夜食をとる機会が増えて翌朝の食欲がなくなるかもしれない。しかし、白書に踏み込んだ分析はなく、朝食をとらない人が増えた決定的な理由はみつからない。


 また、27年度の白書では、ほぼ5年ぶりに「食のバリューチェーン」の計算が更新された(図)。平成23(2011)年時点での、わが国の農林水産物の生産から流通、加工、消費の流れを、産業連関表を使って計算したものである。


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 それによると、食用農林水産物10.5兆円(国内生産9.2兆円、輸入1.3兆円)と輸入加工食品5.9兆円が食材として国内に供給された。これらの食材に、食品製造業、食品流通業、外食産業が付加価値をつけることによって、飲食料の最終消費額は76.3兆円となった。この76.3兆円の中身を見ると、おもに家庭で生鮮食材として消費されたのが12.5兆円(全体の16.3%)、加工食品として消費されたのが38.7兆円(50.7%)、外食で消費されたのが25.1兆円(32.9%)だった。


 飲食料の最終消費額は平成7年の83.1兆円をピークに減少傾向にあり、平成23年は平成7年と比べ8%減った。わが国の飲食市場全体が縮小傾向にあることが、この分析でも確認できる。わが国の総人口は、平成8年をピークに減り続けており、人口減少が飲食市場の縮小とリンクしているといえる。


 消費者が支出する飲食料の最終消費額がどの業種に支払われているかをみると、農業生産者などの農林漁業者向けは13.7%に過ぎなかった。食品製造業者向けが31.8%、食品流通業者向けが34.5%、外食産業向けが19.9%だった。いわゆる第二次産業と第三次産業向けに86.3%支払われていたことになる。この比率は、過去20年近く大きく変わっていない。改めて農業の6次産業化の必要性を痛感させられる。(2016年8月22日)

むらた やすお

朝日新聞記者として経済政策や農業問題を担当後、論説委員、編集委員。定年退職後、農林漁業金融公庫理事、明治大学客員教授(農学部食料環境政策学科)を歴任。現在は「農」と「食」と「環境」問題に取り組むジャーナリスト。