提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ぐるり農政 【8】

2008年03月05日

食料の値上げは「価格水準の訂正」

     明治大学客員教授 村田 泰夫


 食料品の値上がりが止まらない。昨年夏からマヨネーズ、食用油、カレールー、食パン、インスタントラーメン、ビール、しょうゆなど、あらゆる食品にわたっている。牛乳に至っては、実に30年ぶりの値上げである。


 当然のことながら、消費者にとっては困る。大手スーパーの中には、価格に敏感な消費者の足が遠のかないように、値上げ幅を抑制したり、価格は据え置くが中身を減らしたりして、「値上げ」の印象を消すのに懸命である。しかし、流通業者の頑張りにも限界がある。


 ここに、興味深い調査結果がある。農林漁業金融公庫が2月末に発表した「食品の価格転嫁状況」についての調査だ。

 加工食品メーカーから聞いた調査では、ほとんど全部のメーカーが、原料高などでコストが上昇した。その幅は平均11%である。コスト高を価格に転嫁できた企業は52%あるが、油脂、製粉など原材料比率の高い「川上」企業ほど値上げに成功している半面、スーパーなど「川下」企業は十分に価格転嫁しきれていない。


 一方、消費者から聞いた調査では、ある程度、値上げもやむを得ないと感じていることがわかった。しかし「許容できる範囲は?」と聞くと、野菜、果物、タマゴ、豚肉などについては10%程度でもしょうがないが、それらの加工品については8%程度まで、ファーストフード、コンビニ弁当についてはせいぜい4%程度まで、という回答だった。

 また、「値上したら極力買わないようにする品目」を聞いたところ、菓子、冷凍食品、ファーストフード、コンビニ弁当などの値上げに強い「拒絶反応」を示した。その代わり、野菜、豚肉、鶏肉、タマゴについては値上げしても買うと答えた。肉でも牛肉のみ「値上げしたら買わない」の割合が高かった。


 これらのことから、自衛行動に走る消費者の姿が浮かび上がる。野菜やタマゴ、豚肉などの食材を買って自宅で調理することで、食費の膨張を抑えようとしているのである。


 今回の食料品の値上がりは構造的な原因によるものである。30年前の「石油ショック」とよく似ている。トウモロコシ、小麦、大豆など穀物価格が値上がりすることによって、畜産物から食用油、それらの加工品という具合に、連鎖反応的にほぼ全ての食料品の価格に波及しているのである。


 石油ショック時の価格上昇が、さまざまな物価の水準訂正であったように、いまの食品価格の上昇も避けることのできない水準訂正の過程である。消費者もそうした事実を認識しているから、一定の値上げには理解を示しているのではないか。農水省は小麦粉の値上げに際して、流通業界に値上げを「要請」したとされるが、そうするまでもなく価格はあるべき水準に落ち着くのであろう。 (2008・3・4)


※文中の画像は、EyesPic様よりお借りしました。

むらた やすお

朝日新聞記者として経済政策や農業問題を担当後、論説委員、編集委員。定年退職後、農林漁業金融公庫理事、明治大学客員教授(農学部食料環境政策学科)を歴任。現在は「農」と「食」と「環境」問題に取り組むジャーナリスト。