提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


ぐるり農政 【5】

2007年12月12日

むなしさ伴う「地域活性化」政策

     明治大学客員教授 村田 泰夫


 地域活性化策が花盛りである。地方にうっ積した格差問題への不満が07年夏の参院選の「与党惨敗」にあらわれ、政府・与党としても地域活性化策を打ち出さざるを得なくなったのであろう。


 政府は11月30日、「地域再生戦略」を発表した。戦略の目玉は「地方の元気再生事業」である。地方自治体や民間団体が取り組むプロジェクトをそのまま受け止め、政府が直接支援する。

 これまでは、国が細かな基準や規格を決め、それに沿って実施する自治体の事業に対して補助金を支給してきた。国の押し付けではなく、創意と工夫を凝らす地方を支援する手法は評価できる。


 しかし、「これで地方は元気を取り戻す」と、本気で思っている人がいるだろうか。「一時的な助成に終わらせず、地域の自立を促す政策を」、「地域おこしは人づくりから」、「地域の人々の気づきを育む誘導策を」などなど。

 政府や各種報告書のうたう地域振興策に、「なるほど」とうなづきながらも、なぜか、むなしさがついてまわる。


 どんな振興策にも、「既視感」が伴うからではないか。どこかで聞いたり読んだりしたことのある指摘ばかりで、地域は一向に元気にならない。過疎化と高齢化に歯止めがかからない。それどころか、「限界集落」問題が深刻化し、集落そのものが消滅の危機にある。


 先日、地方紙の編集幹部と懇談する機会があった。「人づくりの大切さは20年前から聞いているが、なぜできないのかの総括がない」「農水省は農林業の振興をいうが、中山間地の人たちでさえ農林業で食っているわけではない」「学校はもちろん医療施設やバス路線がなくなるなどコミュニティーの崩壊が問題なのに、役所の縦割り行政にじゃまされて地域をトータルに守る政策が抜け落ちている」


 厳しい指摘ばかりである。さらに、過疎の村の人たちの生の声を聞くと、きれいごとの地域振興策なんて、すっ飛んでしまう。


 ≪ いいこと ≫
 緑がいっぱいで自然がきれい。山の景色がいい。川でイワナが釣れる。山でワラビが採れる。地域のまとまりがよい。人間性がいい。お祭りが楽しい。

 ≪ 困ったこと ≫
 働く場所がない。仕事がない。老人ばかりで若者がいない。買い物をする店がない。道が狭い。バスがない。診療所がない。学校が遠い。サルやシカ、イノシシが畑を荒らす。携帯がつながらない。地域の共同体が維持できない。


 以上は大学の研究者が、北関東の過疎の村で聞き取った意見のほんのさわりである。

 かつて、地域振興策の目玉は企業誘致であった。いまは、地域の人たちによる特産物づくりであったり、都市との交流事業であったりする。でも、地域の人たちの叫びは、町おこし以前のコミュニティーの維持にあるように思える。(2007・12・11)

むらた やすお

朝日新聞記者として経済政策や農業問題を担当後、論説委員、編集委員。定年退職後、農林漁業金融公庫理事、明治大学客員教授(農学部食料環境政策学科)を歴任。現在は「農」と「食」と「環境」問題に取り組むジャーナリスト。