提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


信州発 “農”と言える日本人 【36】

2012年03月22日

上達の極意

                              高見澤勇太


自分の友人に開業医の女性がいる(以後A子と表記します)。
性格は負けず嫌いで、良い高校を出て良い大学に進み医者になった。
医者としての腕は良く、いくつかの病院で経験を積み、現在は東京都内で開業医をしている。
患者さんの信頼も厚く病院は盛況で、都内の一等地に5階建ての一戸建てを新築した。


そんなA子が3年前からゴルフを趣味にした。
週に1~2回コースに出る。練習場も週2回、専属のコーチに指導してもらう。
ゴルフクラブやゴルフアイテムは一流品しか使用しない。
しかし、なかなか上達しない。
アベレージゴルファーの第一関門1ラウンド100回を切れない。
スポーツ関係は少々、苦手のようだ。


その原因のひとつに、ゴルフに対するA子の考え方がある。
早く上達してゴルフコンペに出たい。
きれいなスイングをしたい。
ドライバーは飛ばしたい。
アプローチは寄せたい。
とにかく、最高のパフォーマンスばかり追い求めている。


ゴルフには目に見えるきれいさや派手さではなく、「上がってナンボ」という言葉がある。
スイングは変則的でも、ドライバーの飛距離が短くても、アプローチがきれいな放物線を描いたボールでなく地面を這うゴロでも、ホールアウトした時にパーで上がればそれで納得する、それを上がってナンボという。

A子はそんなゴルフを求めない。
A子が思い描いているゴルフは、テレビで放映されているプロゴルフのトーナメントのようなシーンなのである。
それをめざすと、一般ゴルファーの場合ひどいスコアーになってしまう。

大概のスポーツは練習をたくさんすれば上達するが、ゴルフは大事なポイントをつかまないと何年、何十年やっても上達しないスポーツである。
逆に、やればやるほど下手になるスポーツだ。


自分はゴルフと人生が似ていると思う。
芸能界やプロスポーツの世界のような派手な職業でなくても、地道にコツコツやっていればそれなりに収入があり、幸せな暮らしができる。
農業も派手さはないが、毎日自然の中で体を動かしストレスが少なく充実感がある、最高の職業だと思う。

すくすく育った野菜の苗を植えたときに微笑み、
畑の草取りをしたとき、おもいきり引き抜き尻もちをついて笑い、
晴れの日が続いて枯れそうな時には水をやり、野菜に「ガンバレ」と声をかけ、
大雨の後、畑を見回り、被害がなければホッとして、
丹精込めて育てた野菜を収穫する喜びは、何にも勝るごほうびである。


A子のゴルフ上達の極意はここにある。
今までの人生が順風満帆だったA子がゴルフでも成果を上げるには、いきなり三段飛ばしでゴルフ上達の階段を駆け上がろうと無理をせず、農業が与えてくれる日々の感動のように、どんなできごとにも感謝できれば、おのずと道は開けるであろう。

たかみざわ ゆうた

1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」