提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


信州発 “農”と言える日本人 【35】

2012年02月24日

炭焼き

                              高見澤勇太


先日、炭焼きを見学に行った。
所は、佐久穂町にある横森さんの炭焼き場である。


『炭焼き』とは、冬場の必需品“コタツ”に使用する炭を作る作業である。
今では珍しい光景となってしまった炭焼きの風景だが、自分が小さい頃は、どの家にも炭を使った掘りコタツがあった。
現在も炭を利用している家庭は、1割前後ではないかと思われる(自分がお邪魔したお宅での掘りコタツの割合で算出)。
さみしい話だが、世の流れには逆らえない。


炭焼きの方法はいくつかあるが、横森さんの場合は、雪国で冬場に作る“かまくら”に似た炭焼き窯を使用する。
その炭焼き窯の中、に50cmほどに切られた木材を立てて、並べる。
並べ終えたら入口を粘土でふさぎ、時間をかけて蒸し焼き状態にする。
窯の中に入る空気の量が多いと早く焼きあがり、
少ないと時間はかかるが、形が良く硬い上質の炭ができ上がる。


炭を焼く際には、副産物として『木酢液』が抽出される。
木酢液は、作物の病害虫予防に効果があるとされる、自然農薬である。
この抽出方法は、炭焼き窯から出る煙を長い煙突に通す。
すると煙突を通った熱い煙は、冷たい外気にさらされ、水滴となって滴り落ちる。
その水滴を集めて精製したものが、木酢液である。


でき上がった炭は、コタツ以外にも、畑にまいて利用する。
畑にまく場合は、専用の機械で細かく砕いて使う。
炭には、微生物のすみかになることや、土の水分調整作用が期待される。

コタツ・木酢液・土壌改良剤として使われるこの炭は、
一挙両得の上を行く“一挙三得”というところだ。
横森さんの窯のそばにはお仲間の窯が二つあり、そこには、10人ほどが入れる小屋がある。
炭が焼きあがるまでの仲間との楽しいおしゃべりは、何にも変えられない『一番のお得』なのかもしれない。


見学当日には、フィリピンからの研修生が訪れていた。
訪れていた方々は農家ではない。
日本でいう町役場の職員と町長さんが、自ら約1週間の研修期間中だった。
最近は、フィリピンでも、無農薬栽培や有機栽培が重要視されている。
行政の職員が自ら、そして町長が、先頭に立って技術を学び、町の発展のためがんばる姿勢は、日本も見習うべきところだ。


横森さんは将来のために、「子どもたちが自給自足できるように考えている」と話してくれた。
日本という国は、農業の将来をどう考えているのだろうか?
大国の真似をした、自分の身の丈に合わない農業を追い求めるのもわからないではないが、
いろいろ形の日本流の農家が、幸せに暮らせる未来になってほしい。

たかみざわ ゆうた

1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」