提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


信州発 “農”と言える日本人 【31】

2011年11月08日

                              高見澤勇太


野菜の収穫作業が終わり、稲作農家から稲藁を買って運ぶ時期になった。
稲藁の利用方法は、牛の餌や敷料、畑の中に刻んですき込むなどが一般的だが、その他に畑の雑草予防や、地温上昇抑制などに利用するマルチシート上の土の流失防止にも利用する。


南佐久地域の白菜・レタス栽培は全面マルチ方式で、畑の表面を被覆する。
そのマルチシートをところどころ土で押さえて、シートがはがれないようにしている。
傾斜地のマルチシート上の土は、集中豪雨があるとほとんど流れてしまう。それを食い止めるために、稲藁を利用するわけだ。

稲藁には、はざ架け米の細い藁束と、コンバインで収穫する太い藁束の2種類がある。
マルチシート上の藁は、細いものでないと通路からはみ出してしまうので、はざ架けの藁を利用する。


最近はコンバインでの収穫が年々増えて、はざ架けの藁が減ってきた。
コンバインで収穫すれば、稲刈りと脱穀が1回で終わる。トラックの荷台に、人力を使わず直接積み込める。あとはライスセンターで乾燥してもらう。作業を委託する農家は、ほとんど労力を必要としない。

一方、はざ架け米では、稲刈りをする→ハゼ棒を用意してハゼ作る→稲をかける→田んぼで2週間ほど乾燥させる→脱穀をする→袋詰めされた米を運び出す→ハゼ棒を片付ける・・・と高齢の農家には重労働である。


春先には困ったことが起きる。
大雨の前にはたいてい、強風が吹く。稲藁をマルチシートの上に敷いて、「これで大雨が来ても大丈夫!」と作付け前の準備をしていても、その強風で、しっかりと敷いたはずの藁が・・・隣の家の畑に、ほとんど飛んで行ってしまう。

そんな残念が、今年もあった。おまけにマルチシートも3割はがれた。
飛んで行った藁を全部拾い集めて、また敷いた。


農業は、そんな困難の連続である。
どんなにがんばっても、失敗したり天災にあったりする。
でも、実りの秋は必ずやってくる。

『溺れる者は藁をもつかむ』というが、『負けてたまるか藁また拾う』
そんな気概で、何度ころんでもまた立ちあがり、どんな困難にも立ち向かう、そんな気持ちを持ち続けていたい。

たかみざわ ゆうた

1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」