提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


信州発 “農”と言える日本人 【21】

2010年12月22日

フィリピン視察研修に参加した(1)

        高見澤勇太


視察研修参加の動機は

 今の時代、世界を見て・感じて戦略を練らなければ、農業も先はないだろう。2年に1度行われる南牧村農業後継者海外研修は、そのためにも重要なものと言える。
 前回のアメリカ研修までは、農業先進地・大規模農業を体感することが多く、日本の農政が模索しているアメリカ・ヨーロッパ型大規模農業を求めるものであった。だが、現在の日本の国土面積や環境を見れば、それは現実的だろうか?

 フィリピンは、狭い国土と蒸し暑い気候条件の中でも、標高1500m地帯で高原野菜の栽培がおこなわれている、と聞いた。過酷な条件の中でどうやって農業が行われているのか。実際に現地へ赴き、その実態を見て、生の声を聞いてみたい。自分の農業経営を見直すきっかけにもなるのではと思い、フィリピン海外視察研修に参加することにした。

 ●渡航先   フィリピン・南牧農業後継者海外視察団
 ●日程    平成22年11月25日(木)~11月30日(火)
 ●参加人数 13名


イチゴの栽培指導に日本人が活躍
 まずバギオ市の農家を訪問した。正確に言うと、ベンゲット州のラ・トリニダット町である。
 バギオ市はベンゲット州内、標高1500m前後の高地にある、フィリピンでは有名な避暑地。『フィリピンの軽井沢』とも比喩をされる。行政的には独立しており、州には属していない。バギオ市を除くベンゲット州には13の町があり、その中で1番大きい町、ラ・トリニダット町の人口は約10万人である。


 最初の視察圃場は「ストロベリーファーム」。イチゴはラ・トリニダット町の特産品だ。バスで移動の途中、レタス畑が現れた。前日の雨のせいか、圃場には少し水たまりがあり、品質は悪そうに見えた。
 次にイチゴの品種試験施設を見学した。施設と言っても、簡易な雨よけがあるだけのビニールハウスだった。


 日本の品種は柔らかくて日持ちがしないので、フィリピンの流通では扱えないそうだ。品種改良により、地域に合う、病気に強く、多収で、美味しく、日持ちのする品種を作りたい、と頑張っていた。
 南牧村の農家菊池辰夫氏と農業試験場技師の武井正明氏が、現地に出向いて、栽培技術指導の手解きをしていると知った。自分には、何か人に教えられるものがあるのか? と自問した。


活気溢れる野菜市場
 野菜市場も見学した。バスケットボールのコートをひと回り大きくしたくらいの屋根の下に、野菜がびっしり並び、その周りを、野菜をバラ積みしたトラックが取り囲む。トラックから荷降ろしをすると同時に、ビニール袋に野菜を詰め込み、一袋20kgの商品を作る(キャベツ・ウリ・大根など)。ほとんどの野菜が1kg何ペソという価格だ(1ペソ=約2円)。
 そこで働く男たちは、一袋20kgの野菜袋を3袋、担いで運ぶ。今の日本人にはとても無理だろう。


  


●当日の野菜価格(1kg当たりの価格) 
当日の野菜価格


 ちなみに、コカコーラ500mlは、21.50ペソ(約43円)だった。フィリピンでは、市場価格とスーパー(小売)価格の差が、約4~5倍。日本では約2倍なので、フィリピンでは中間業者もしくはスーパーマーケットが利幅を多く取っている。フィリピンの農家の生活は日本より苦しいだろう。
 このスーパーマーケットは、近代的な複合商業施設内にあった。露店にある小さな八百屋では、この半額と思われる。


当選者の宣誓儀式に立ち会う
 視察に先立って、バランガイ選挙の当選者による宣誓儀式に立ち会った。
約4年に一度行われるバランガイ選挙は、村長+村議会議員選挙に似ている。宣誓儀式とは、大勢の一般住民の前で、これからの職務を忠実公正に執行することを誓う儀式である。

 多くの住民に交じってセレモニーを観覧していると、いきなり「はるばる日本から来た農業青年がこの席に列席しています」と司会者から紹介された。一行は全員で立ちあがり、手を振り挨拶をした。


  


 その後、ラ・トリニダット町長のグレゴリオ氏を表敬訪問した。その席で、ベンゲット州の副知事と州内の町長6人が、平成22年9月20日(月)~26日(日)に日本を訪問し、南牧村のイチゴ栽培農家を視察したことを知った。


  


 今回の視察研修の行程は、この後、バナウェの棚田(世界遺産)・花問屋・米農家と続いて行くが、第一部はこの辺で終了とする。
 次回は第二部・総集編。どうぞお楽しみに。


参考文献
○ウェブサイト 国際農業者交流協会<JICA草の根事業>
○  〃    フィリピンの地方自治「バランガイ」

たかみざわ ゆうた

1964年長野県生まれ 北佐久農業高校卒業後、すぐに家業である農家の後を継ぐ。長野県農業士協会会長(07・08年)、野菜ソムリエながの代表(08・09年) 、南牧村議会議員(07年~11年)。座右の銘は「ゆるく・楽しく・美しく」