提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


みどりの食べ歩き・出会い旅 【7】

2009年04月15日

沖縄大学と農家のコラボで待望の夏野菜、「オキダイナ(沖大菜)」誕生!

         榊田 みどり


 2年ぶりで沖縄に行ってきた。沖縄は4回目。仕事で出張なのに、なぜかリゾート気分、トロピカル気分になってウキウキするのは、沖縄という土地の持つ魅力のなせる業だろうか。

トロピカルフルーツがお出迎え 今回の目的は、南城市(旧玉城村)にある直売所「たまぐすく花野果村(はなやかむら)」を経営する大城浩明さんに会うことだった。

 JAグループに勤め、50歳を前に、「地域起こしの仕事がしたい」と中途退職し、彼の思いに共感する2人の出資者も得て、2002年、全くの民間施設として直売所を建設した人物。「あと7カ月勤務していれば、退職金も格段にアップしたのに」と、周囲からは笑われたそうだが、「どうしても50歳を転機に地域にこだわる仕事をしたかった」と本人は照れ笑いする。
 大城さん自身も、パパイヤ専業農家。温和で控えめで、けれども郷土を愛する心と行動力は熱い、生粋の玉城人である。


 那覇市内から車で約30分。直売所に到着すると、さっそく大城さんがトロピカルフルーツのおやつで出迎えてくれた。スターフルーツ、パッションフルーツ、パイナップル、さらに食用ほうずきまで登場。直売所自慢の「パパイヤ牛乳」も、実においしい。

 直売所のある場所は、少なからぬ著名人が別荘を構える奥武島の入口に近い。開店から7年たった今、直売所は、地元のおじい・おばあを含めて、小規模・兼業・専業農家約800人が出荷し、地域の方々だけでなく、旅行者や別荘を持つ人々も集まるコミュニケーション・スペースになっている。


直売所「花野果村」のベランダ

 話をしているうち、大城さんは、1枚の新聞の切り抜きを持ってきてくれた。
 「講演などに呼んでもらったとき、いつも話すために持ち歩いているんです」という、その全国農業新聞コラムには、こう書かれていた。

 「アメリカ農業は、土地利用にほとんど制約のないフロンティアであるために、大規模化に成功した。しかし、子どもたちはスクールバスがなければ小中学校に通えず、自動車がなければ医療施設にも行けないように、農村地域社会を維持することには失敗した。日本農業は、大規模化には成功しなかったが、農村地域社会の維持にはかろうじて失敗していない」

 旧玉城村も、もともと農村地帯ではあるが、規模拡大が望める土地条件にはない。大城さんは、「規模拡大よりも、地域資源を生かして、観光客や修学旅行生などを受け入れながら、農業生産だけではない農業関連サービスも経営に組み込んで、地域が共生できる農業」に、これからの地域再生と農業再生の可能性を感じている。


 さて、その大城さんが、母校の沖縄大学で開かれる「地域再生システム論」の公開セミナーで講師を務めるというので、私も聴講させてもらった。

これがオキダイナ
 その場で、初めて披露されたのが、大城さんと沖縄大学の共同で、今、地元に普及しようと力を入れている野菜「オキダイナ」。沖大(沖縄大学)が地元に持ち込んだことから、大城さんが命名したニューフェイスの野菜である。

 夏期は40度以上になる沖縄では、夏の葉もの栽培は、今まで僅か数点と言ってよかった。葉ものは鮮度がいのちなのに、長野など本州から、はるばる運ばれてくる野菜を食べるしかなかったのだ。


 ところが、2005年、沖縄大学地域研究所亜熱帯野菜研究班の中国の農産調査で、山門健一教授たちが「油麦菜(中国名)」という野菜を見つけ、種を購入して持ち帰った。キク菜の植物で、ヨーロッパからシルクロードを経て中国に伝わったといわれているらしい。

 F1品種なので、中国から安定的に種子の輸入が必要だが、高温でも栽培でき、病害虫にも強いため、「無農薬でも栽培できる。癖がないので、いためてもサラダでもおいしく食べられる」と、大城さんは昨年夏から試験栽培に参加。直売所では、すでに試験販売が始まっている。


 沖縄の夏野菜として熱い期待を背負う「オキダイナ」。私も食べてみたが、しゃきしゃき感があり、味は癖がなく、食べやすい野菜だった。沖縄の新たな食材として活躍する日が、楽しみである。


写真 上から順番に
●トロピカルフルーツがお出迎え
3月でもトロピカルフルーツが豊富なのが沖縄の魅力。ひそかにマンゴーを期待したが、旬は夏だという。夏にまた行きたい!

●直売所「花野果村」のベランダ
パパイヤの木の向こうに、美しい海を臨む直売所のベランダ。ここでパパイヤ牛乳を飲むと、いかにも気分はトロピカル!

●これがオキダイナ
初めて対面したオキダイナ。葉長は、50cmほどあるだろうか。おおぶりだが葉は柔らかく、サラダ菜に近い食感。味も癖がない。沖縄の夏の葉ものとして定着するか!


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さかきだ みどり

1960年秋田県生まれ。東大仏文科卒。学生時代から農村現場を歩き、消費者団体勤務を経て90年よりフリージャーナリスト。農業・食・環境問題をテーマに、一般誌、農業誌などで執筆。農政ジャーナリストの会幹事。日本農業賞特別部門「食の架け橋賞」審査員。共著に『安ければそれでいいのか?!』(コモンズ)『雪印100株運動』(創森社)など。