提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


「野菜ソムリエ」の元気を作るおいしい食卓【24】

2015年12月15日

とちぎのブランドネギ「白美人ねぎ」    

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター 田代由紀子   


 栃木県の野菜の魅力を伝える「とちぎ野菜サポーター」として、12月上旬、産地視察に行ってきました。5名のとちぎ野菜サポーターの皆さんと今回向かったのは、大田原市。栃木県のブランドネギ「白美人ねぎ」の圃場見学です。


 「白美人ねぎ」とは20年ほど前から「白さ・やわらかさ・甘さ」を特徴として人気ブランドとなったネギです。名前は聞いたことがありましたが、現物を見るのは初めて。作り方に特徴があると聞いていたので、興味津々で向かいました。


 最初に見学したのはJAなすのの出荷場。やはり、栃木県! 一番初めに目に入ったのはイチゴの「とちおとめ」です。真っ赤なイチゴがたくさん並んでいました。そのほかにも、ニラや菌床シイタケ、ウドなどの梱包作業が行われていました。

 お目当ての「白美人ねぎ」は、2種類。白いダンボール箱は露地栽培の「白美人」、ブルーの発泡スチロール入りはハウス栽培の「白美人」。どちらも立派なネギです。
 「このあたりの農家さんは負けず嫌いが多いから、ちょっとした曲がりや太さの違いでもB品に回しちゃうんだよね。だから他の産地に比べたら、立派なはずだよ」と、JAなすのの越沼係長が自慢そうに語ってくれました。


tashiro24_image1.jpg 「2人の白美人」とは? それぞれの特徴や栽培方法を学びに、いざ圃場へ!

 最初に訪れたのは露地栽培のネギの圃場です。太くて鍋に入れたら甘そうなネギが、ぎっしり植えられています。3月に種をまき、6月に定植したもの。9カ月もの長期間、手をかけて育てられた立派なネギです。
右 : 鈴木さんと村井さん

 「他の産地のネギに比べたら多少割高かもしれないが、味はもちろん、安全・安心を徹底していることを理解してほしい」と、露地ネギを栽培している鈴木さんと村井さん。「白美人ねぎ」というブランドを守るために品種、栽培方法、使う肥料や農薬まで、すべてマニュアルどおりに、品質の統一を図っているとのこと。


 農薬の散布や土寄せの時期などを記録した栽培履歴も徹底しているので、安全・安心には絶対の自信があるとも話してくださいました。「農薬と聞くとよく思わない方もいるかもしれませんが、ネギは無農薬で育てるのが難しい作物。農薬をうまく使いながら、元気な野菜に育てれば、害虫も病気もおこりにくいんだよ。それに、ネギは38枚の葉でできていて、外側の葉は必ずむいてしまうので、農薬が残ることはないんだよ」と。なるほど! 農薬のことも、ネギが「葉野菜」だということも改めて納得しました。


tashiro24_image2.jpg また、この地区の特徴である黒土がおいしいネギを作るのだそうです。そう、この圃場、もとは田んぼ! 連作障害を防ぐために、ネギを2年育てたら1年は田んぼとして水を入れ、悪い菌をなくすという方法で土壌管理をしているのです。ネギ栽培に適した土、気候、そして日々ネギのようすを見ながら健康な野菜作りに励んでいるからこそ、守られている「白美人ねぎ」の品質なのだと感じました。

 露地栽培の「白美人ねぎ」は、辛味も旨みもしっかりある、ネギらしいネギ。村井さんと鈴木さんにおすすめの食べ方を伺うと、味噌と合わせた「ねぎ味噌」、丸のまま焼いた「焼きねぎ」と。どちらも、おいしそうです。
左 :黒土の圃場


 そして、もう1人の美人さんは、ハウス栽培の「白美人ねぎ」です。もともと夏の需要のために始めたハウスでの軟白栽培こそ、「白美人」の元祖です。20年前に研修で訪れた北海道での栽培法をヒントに始めたという、特別な栽培方法で育てられています。

 「小さな穴に3粒ずつ種をまき・・・」と、ハウスを案内してくださった生産者の増渕さん。さらりと「種をまき・・・」と説明されましたが、1ブロックには440も穴があるので、作業に半日かかるとのこと。
 寒い今の季節は電熱線を使い、温度を保ちながら50日~60日かけて苗を育てます。10cmほどの長さに育った苗を、手作りの道具で1本1本定植していきます。これもまた、気の遠くなるような作業です。


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左 :定植後2週間の白美人ねぎ / 右 :植え付けの道具


 4~5カ月経つ頃には青々とした葉が伸びてくるので、倒れないように紐がかけられます。収穫の1カ月ほど前になると、発泡スチロールの遮光板でネギをはさみ、日を当てずに真っ白なネギを育てます。「こんな感じ」と見せてくれた先には、白くて長いネギが。なるほど! ハウスの「白美人ねぎ」の白い部分が40cmと長いのは、この遮光板の長さだったわけです。増渕さんはハウスと露地栽培の両方を作っているので、比べて見せてもらいました。長さの違いは一目瞭然!


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左 :遮光板 / 中 :出荷直前の白美人ねぎ / 右 :露地栽培(左)とハウス栽培(右)の白美人を持つ増渕さん


 ハウス栽培のものは軟らかく、辛味がマイルド。緑の葉の部分も柔らかいので、全部おいしく食べられるとのこと。増渕さん曰く、「そのまま生でマヨネーズに醤油を混ぜたのをつけるとおいしいよ。細く切ってサラダもいいよね」。

tashiro24_image8.jpg 白くて柔らかいネギを育てるためにはハウスや遮光板といった設備はもちろん、ハウス栽培ならではの細やかな仕事が必要なのだと納得しました。


 お土産にいただいたハウスの美人さん! わが家でも早速生のまま「白美人のゆずポン酢和え」(右)でいただきました。ツンとした香りが少なく、甘みがあるけれど、あとからネギの辛味もやってくる、新しいネギの食べ方が楽しめる「白美人」です。

たしろ ゆきこ

野菜ソムリエ・アスリートフードマイスター。「楽しく、美味しく、健康な生活を!」をコンセプトに野菜についてのコラム執筆、セミナー開催、レシピ考案などを行っている。ブログ「最近みつけた、美味しいコト。。。」で日々の食事メニューを発信中。