提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 乾燥・調製

2011年2月 9日

はじめに

●ムギに限らず、穀物の乾燥は、工業製品とは異なり、同じ種類であっても年次変動や地域性が見られるため、基本を踏まえた上で的確な取扱いをする必要があります。
●ムギ類も水稲と同様に乾燥・調製を行いますが、収穫期間が水稲に比較して短く、荷受けが集中しやすいこと、気温が高く、気温の日較差も大きく、湿度も高いため、運搬・乾燥時に品質事故が起きる危険があります。

コムギの乾燥作業

「乾燥の必要性」 
●乾燥することで含水率を下げ、貯蔵の安全性を高めるだけでなく、品質の劣化を防ぐことや出荷時期を調節することができます。
●コムギの水分が高いと、貯蔵性が悪くなります。
●水分が高いままで製粉をすると、ふすまと粉の分離がうまくいかず、十分な製粉ができないので注意します。  
 
「乾燥方法」 
●乾燥方法は、穀類を堆積したまま乾燥する静置法と、穀物を動かしながら乾燥する循環法に分けられます。
●日本の場合、麦類はほとんど循環法によって乾燥されます。
●作業の概略は図1のようになります。


図1 カントリーエレベータでの麦類の乾燥・調製作業の概略
(クリックすると大きく表示されます) 

 
カントリーエレベータ


麦用大型循環式乾燥機 

詳しくは「稲編 乾燥・調製」を参照してください 

「乾燥前の注意点」 
●乾燥する前に、乾燥機の清掃調製を行います。
●コムギで使う乾燥機は、水稲と共用されることが多いため、水稲などの混入を防ぐためにも清掃を徹底する必要があります。
●異種穀粒や異物が混入すると、品質低下の原因になるので注意します。
●収穫直後のコムギは水分が高いことが多いので、袋詰めやコンテナなどの中でそのまま長時間放置すると、変質して異臭や変質粒が発生し、発芽勢が低下するだけではなく、低アミロ化による1次加工適性(製粉歩留まりなど)や2次加工適性(製麺適性など)の低下につながります。
●天候や温度・湿度によって異なりますが、一般的にはすみやかに(収穫後2~3時間以内)乾燥機に入れる必要があります。 
 
「乾燥時の張込量」 
●コムギでは、張込量を減らすように乾燥機マニュアルなどで指示され、規定量の70~80%程度が目安となっています。
●コムギは籾やオオムギに比べて堆積見かけ密度が大きいため、張込量を減らして、相対的な風量比(穀物重量に対する風量の値)を増し、テンパリング時間を減らします。
●高水分コムギは、乾燥時に茎葉などの夾雑物や湿っている粒同士で付着することから、流動性が悪くなったり、乾燥機のホッパー面等で結露し、乾燥ムラや粒が残留して発酵することもあるので、詰まりがないかなどチェックする必要があります。
●さらに高水分コムギは、乾燥が進むにつれ容積が減るため吹き抜けを起こし、うまく乾燥できないことがありますので、乾燥機の状態に注意する必要があります。  
 
「送風温度」
●穀粒水分ごとの適切な送風温度は、以下の通りです。
●品質変化しない穀粒温度の限界は、穀粒水分20%程度では60℃、穀粒水分40%程度のものでは35℃以下とされます。
●収穫開始穀粒水分である30%程度では、40~45℃くらいと言われています。
●高水分小麦では退色して白っぽい小麦に仕上がることがあるため、送風温度が高くならないように注意を払う必要があります。  

コムギの調製作業

●乾燥を終了したものは、粒選別機、石抜機、比重選別機によって細麦、屑麦や夾雑物を除去し、整粒率を上げます。


 :粒選別機 /  :石抜機 


比重選別機 

●仕上げ後は、梅雨の時期であるため、貯蔵中に水分が戻らないように十分注意します。
●出荷前に水分を確認し、適正水分を超えている場合には再乾燥を行います。
赤かび病に感染したコムギの被害粒は、粒厚が小さく、千粒重が軽いことから、粒厚選別と比重選別を併用すると、デオキシニバレノール(DON)濃度が高い粒を選別でき、低減対策となります。
●乾燥機に入れる前に粒を確認し、被害粒があった場合には仕分けを行い、別に乾燥調製すると効果的です。 
 
コムギの赤かび病についてはこちらから

コムギの乾燥・調製時に品質項目(ランク区分)に影響を与える要因

●コムギのランク区分の品質項目4項目のうち、3項目について改善する方法が示されています。

◆タンパク質含有率
●タンパク値に応じた仕分け乾燥・調製を行うことで、バラツキを解消できます。
◆容積重
●比重選別、粒厚選別を行うことにより、容積重を高めることができます。
◆フォーリングナンバー
●低湿度で貯蔵・保管すると、値が低下する恐れが少なくなります。

コムギの品質ランク区分はこちらから

コムギ以外のムギ類の乾燥・調製作業の注意点について

●オオムギの乾燥・調製作業はコムギとほぼ同じですが、若干異なる点がありますので、ポイントを記します。

「ビール用二条オオムギ」 
●ビール用二条オオムギは、ビールの原料となる麦芽を作るため、発芽勢(※1)が重視されます。
●発芽勢を低下させないため、穀粒水分が25%以下になった時を収穫の目安としています。
●乾燥作業でも、発芽勢を低下させないための注意が必要です。
●穀粒水分は25%程度と他のムギに比べて低い水分で収穫し、乾燥機に張込ます。送風温度は40~50℃で、穀物温度はが35℃程度と他のムギより低く設定します。
●注意点は、剥皮粒の発生を避けるため乾燥時間が長時間にならないようにすること、他の麦より低い仕上げ水分が求められることになります。
(※1)発芽勢とは、発芽時のタネの揃いの度合いをいう。発芽は揃うのが望ましい 

「オオムギ(ビール用二条オオムギ以外)」 
 コムギと同様に、オオムギでも収穫後すみやかに乾燥機に入れる必要があります。
●長時間放置すると、オオムギでは、白度の低下や粒質硬化の恐れがあります。

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●以上がムギの乾燥・調製の概略ですが、地域特性や品種などにより異なる場合も多いので、注意が必要です。

執筆者 
関 正裕
中央農業総合研究センター北陸研究センター 北陸水田輪作研究チーム

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   ※画像はすべて株式会社クボタ機械施設部より提供を受けています。

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