提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 雑草対策

2011年1月18日

(2014年6月 一部改訂) 

はじめに

●麦栽培で高い収量、品質を安定して得るためには、適切な雑草防除は欠かせません。
●一口に雑草と言っても種類は多く、雑草の種類によって、引き起こされる雑草害は変わってきます。
●大量に繁茂して肥料分を奪い取ってしまい、大きな減収を引き起こす雑草や、大きな減収は起きないけれども種子が収穫物に混ざってしまい品質を下げてしまう雑草など、深刻な被害が出る雑草もあります。
●雑草防除の基本は除草剤の使用ですが、除草剤の種類によって、防除できる雑草とできない雑草があります。
●したがって、自分の畑にはどのような雑草が発生して問題となっているのかを把握し、その雑草を防除できる除草剤を選ぶことが必要です。
●また、除草剤の使い方を誤ると、十分な効果を得られない場合があります。
●湛水で安定した条件で栽培する水稲とは異なり、麦栽培では土壌の水分条件や気候条件に影響を受けやすく、除草剤の効果も不安定になりがちです。
●どういう使い方をすれば高い除草効果を得られるかを知っておくことは、安定した雑草防除のために大切です。

除草剤の種類

●麦栽培に使用する除草剤は、大きく分けて次の3つに分けられます。 
 (1)播種前に発生している雑草を枯らす、非選択性除草剤
 (2)播種後発生する雑草を防除するための、土壌処理剤
 (3)生育期に発生している雑草を防除する、茎葉処理剤

除草剤の効果的な使用法と注意点

「非選択性除草剤」 
●非選択性除草剤は、播種前に発生している雑草が多く、しかも耕起で十分に鋤き込めない場合に有効です。
●非選択性除草剤は作物も枯らしてしまうので、周りに作物がないか注意します。

「土壌処理剤」 
●土壌処理剤は、栽培初期に発生する雑草の防除に有効です。
●多くの雑草は栽培初期に多く発生し、栽培初期に発生した雑草ほど雑草害が強くなるので、土壌処理剤の使用は雑草防除の基本になります。
●直接雑草に散布するわけではないので、土壌処理剤の除草効果は、土壌や気象条件の影響を強く受けます。
●土塊が大きいと除草効果が低下するので、砕土を丁寧に行うようにします。
●播種深度が浅い(2cm未満)と、出芽不良や生育抑制などの薬害が生じることがあります。
●播種後できるだけ早く散布したほうが、除草効果は高くなります。

「茎葉処理剤」 
●除草剤の種類によって、効果が高い雑草とほとんど効果のない雑草があるので、雑草の種類を確認した上で、除草剤を選びます。
●生育の進んだ雑草には効果が劣るので、それぞれの除草剤の使用適期に散布します。
●雑草の葉や茎に薬液がかからないと効果がないため、繁茂しすぎる前に散布します。

問題となる主なイネ科雑草の特徴と防除法

「スズメノテッポウ」 
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●東北以南の麦作圃場の主要なイネ科雑草です。
●特に水田裏作で多く発生します。
●繁茂すると大きな減収を引き起こします。
●茎がしなやかなため、繁茂するとコンバインにからみつき、作業性が低下します。
●土壌処理剤の効果が高く、1葉期まで有効な除草剤でも発生する前に散布するほうが安定して防除できます。
●茎葉処理剤のハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)が有効です。
●この剤は5葉期までの個体を防除できますが、2~3葉期頃に散布すると、初期に発生した個体を取りこぼすことなく防除できます。
●一部の除草剤が効かなくなった抵抗性のスズメノテッポウが出現しており、問題となっています。

「カズノコグサ」 
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●暖地、特に九州北部の水田裏作で問題となっています。
●排水性の悪い圃場を好み、発生量、生育量が大きくなります。
●出穂すると草丈が麦よりも高くなることが多く、繁茂すると大きな減収となります。
●土壌処理剤での防除が基本ですが、発生深度が深く、発生量が多い圃場では効果が不安定になる場合があります。
●トレファノサイド(トリフルラリン剤)、ボクサー(プロスルホカルブ剤)、バンバン(エスプロカルブ・ジフルフェニカン剤)、ムギレンジャー(プロスルホカルブ・リニュロン剤)が除草効果が高いと判定されています(2014年6月現在の市販薬剤)。
●茎葉処理剤のハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)は1~3葉期の散布が有効ですが(九州のみ登録あり)、2葉期頃の散布が効果的です。
●ハーモニーだけでは完全に枯らすことが難しく、土壌処理剤との体系処理が必要です。
●弾丸暗渠などにより圃場の排水性を向上させることは、耕種的防除法として大切です。

「スズメノカタビラ」 
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●全国的に発生が見られ、特に北海道では主要なイネ科雑草です。
●東北以南でも、局地的に繁茂している圃場があります。
●草丈は小さいですが、繁茂すると大きな減収を引き起こします。
●種子の結実が早いので、初期に発生した個体の防除が、より重要になります。
●茎葉処理剤のハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)の効果はあまり高くないので、土壌処理剤での防除が基本になります。
●土壌処理剤では、イネ科雑草に効果の高い除草剤を使用するようにします。

「カラスムギ」 
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提供 :中央農業総合研究センター 浅井元朗

●全国の畑麦圃場で広がりつつあり、特に関東、東海では大きな問題となっています。
●種子は湛水で容易に死滅することから、水田裏作では問題になりません。
●深い位置からも発生するので、土壌処理剤の効果は高くありません。
●土壌処理剤ではトレファノサイド(トリフルラリン剤)の効果が比較的高いですが、十分な防除は困難です。
●茎葉処理剤のハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)の効果も低いことから、いったん繁茂すると除草剤での防除は極めて困難です。
●圃場に発生しているのを見つけた場合には、発生量がわずかでも、結実前に抜き取ることが繁茂させないために重要です。
●繁茂した圃場では、結実前に人海戦術ですべて抜き取るか、一年休耕して耕起や非選択性除草剤で防除するなどして、徹底的に防除する必要があります。

「ネズミムギ」 
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●牧草のイタリアンライグラスと同じです。
●関東、東海の畑麦圃場を中心に大きな問題となっていますが、その他の地域でも広がりつつあります。
●種子は、湛水状態でもカラスムギほど容易に死滅しませんが、50日以上連続して湛水状態が続くと、90%の種子が死滅します。
●土壌処理剤ではトレファノサイド(トリフルラリン剤)の効果が比較的高いですが、十分な防除は困難です。
●茎葉処理剤のハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)の効果も低いことから、いったん繁茂すると除草剤での防除は極めて困難です。
●圃場での発生が見られた場合には、発生量がわずかでも、結実前に抜き取って繁茂させないようにします。
●カラスムギと同様、繁茂した圃場では、結実前に人海戦術ですべて抜き取るか、一年休耕して耕起や非選択性除草剤で防除するなどして、徹底的に防除する必要があります。

「コヌカグサ(レッドトップ)、シバムギ」 
●いずれも東北以北、特に北海道で問題となる多年生のイネ科雑草です。
●種子だけでなく地下茎でも増殖します。
●麦播種前にすでに発生している場合は、耕起前にラウンドアップマックスロードや三共の草枯らしなどのグリホサート剤を散布します。
●播種後には、トレファノサイド(トリフルラリン剤)やゴーゴーサン(ペンディメタリン剤)など、イネ科雑草に効果の高い除草剤を使用します。
●地下茎での繁殖を抑制するために、麦収穫後にも、ラウンドアップマックスロードや三共の草枯らしなど(グリホサート剤)を散布します。

問題となる主な広葉雑草の特徴と防除法

「ヤエムグラ」 
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 ヤエムグラ 左から上から 繁茂 / 実生

●茎に小さな棘があり、麦にはうように生育します。
●繁茂すると減収だけでなく、麦を倒伏させたり、収穫機にからみつき、作業能率を低下させるなどの被害が出ます。
●種子は大きくありませんが、表面に小さな刺があり、収穫物に混入することがあります。
●発芽適温は低く、だらだらと発生します。
●深い位置からも発生し、土壌処理剤の効果が不安定になる場合もあります。
●残草が多い場合には、茎葉処理剤の散布が必要です。
●広葉雑草対象の茎葉処理剤はいずれも効果が高いですが、特にエコパート(ピラフルフェンエチル剤)の効果が高く、生育の進んだ個体の防除も可能です。ただし、茎立期以降は薬害を生じることがあります。

「カラスノエンドウ」 
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カラスノエンドウ 左から上から 開花期 / 収穫期 

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種子 

●関東以西で発生が拡大しており、大きな問題となっています。
●種子の大きさや重さが麦に似ていることから選別が難しく、麦製品に混入する被害も出ており、徹底防除が求められています。
●10cmよりも深い位置からでも発生することがあります。
●土壌処理剤ではゴーゴーサン(ペンディメタリン剤)やガレース(トリフルラリン・ジフルフェニカン剤)の効果が比較的高いですが、それだけでは十分な防除は困難です。
●茎葉処理剤の効果は除草剤によって異なり、アクチノール(アイオキシニル剤)の効果は高いですが、エコパート(ピラフルフェンエチル剤)はほとんど効果がありません。
●遅くに発生した個体でも結実することがあるので、土壌処理剤と茎葉処理剤を体系処理して、収穫前に残草している個体は手で抜き取ることが必要です。

「イヌカミツレ、カミツレモドキ、ハルザキヤマガラシ」 
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左から上から イヌカミツレ / カミツレモドキ

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ハルザキヤマガラシ 
(上画像3点提供 :農業・食品産業技術総合研究機構 橘雅明)


●主に寒冷地の麦作圃場で繁茂して、問題となっています。 
●繁茂すると大きな減収を引き起こします。
●除草剤による防除は、土壌処理剤と茎葉処理剤の体系処理が効果的です。
●土壌処理剤では、ガレースなどジフルフェニカンを成分とする除草剤が効果的です。
●茎葉処理剤ではアクチノール(アイオキシニル剤)が効果的です。

「トゲミノキツネノボタン、イボミキンポウゲ」 
●主に暖地の麦作圃場で繁茂して、問題となっています。
●種子は5年以上生存し、いったん繁茂すると長期間の対策が必要です。
●土壌処理剤では、ゴーゴーサン(ペンディメタリン剤)やロロックス(リニュロン乳剤)が効果的です。
●茎葉処理剤ではハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)やバサグラン(ベンタゾン剤)が効果的です。
●深い位置から、だらだらと発生するので、土壌処理剤と茎葉処理剤の体系処理が効果的です。

「タデ類」 
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●ハルタデやサナエタデが繁茂して、収穫前にタデ類の赤い花で圃場が真っ赤に染まることがあります。
●タデ類の発生は遅く、通常の土壌処理剤だけでの防除は困難です。
●茎葉処理剤の効果は高く、ハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)は発生直前の散布でも効果が高く、アクチノール(アイオキシニル剤)は発生盛期以降の散布が効果的です。
●収穫時に大きく成長し、収穫作業の邪魔になるような個体は、手で抜き取る必要があります。

抵抗性雑草対策

「抵抗性スズメノテッポウ」 
●一部の除草剤が効かなくなったスズメノテッポウが九州北部を中心に発生しており、関東や四国でも確認されています。
●効かなくなった除草剤は、トレファノサイド(トリフルラリン剤・ゴーゴーサンも同じ仲間の除草剤で効き目がない)とハーモニー(チフェンスルフロンメチル剤)です。
●それぞれの除草剤が効かないものと、両方ともに効かないものがあります。
●抵抗性スズメノテッポウが繁茂した圃場は、じゅうたん状になります。
●繁茂した圃場では、麦の収量が半減以下になる場合があります。

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「抵抗性スズメノテッポウの防除対策」 
●防除には、抵抗性スズメノテッポウに効果が高いと判定された除草剤を使用します。
●ボクサー(プロスルホカルブ剤)、ムギレンジャー(プロスルホカルブ・リニュロン剤)、バンバン(エスプロカルブ・ジフルフェニカン剤)の3剤が、効果が高いと判定されています(2010年12月現在)。
●麦播種後、できるだけ早く散布したほうが効果的です。
●播種前にすでに大量に発生している場合には、耕起前にラウンドアップマックスロード(グリホサート剤)やバスタ(グルホシネート剤)などの非選択性除草剤を散布して、枯らす必要があります。

「抵抗性雑草の発生予防対策」 
●抵抗性雑草は、同じ除草剤を毎年使い続けることで発生します。
●抵抗性雑草を発生させないためには、異なる除草剤をローテーションして使うようにします。
●ローテーションする場合には、除草剤の種類に注意が必要です。
●商品名が違う除草剤でも、中に入っている成分は同じ場合があります。
●また、中に入っている成分が異なる場合でも、雑草を防除するメカニズムが同じ場合には、ローテーションしてもあまり意味がありません。
●どのような除草剤をローテーションしたら良いかは、最寄りの普及指導センターや農業試験場などに問い合わせるとよいでしょう。

執筆者 
大段秀記
農研機構 九州沖縄農業研究センター 水田作・園芸研究領域 雑草防除研究グループ

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