提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 品種の選定 コムギ

2011年1月 6日

はじめに

 コムギの生産地では、道府県で奨励品種決定調査など、地域の気象条件や、需要の実情にあった品種の選定試験を行っていますので、品種選定の際には、最寄りの農業改良普及センターなどにご相談されることをお勧めします。

地域別品種の紹介と特性

「北海道」
◆ホクシン
●現在、日本で一番作付けの多い品種で、平成7(1995)年に育成されました。
●主にめん用ですが、パン、菓子など、さまざまな用途に使われています。


試験圃場(左 :ホクシン /右 :きたほなみ)
(提供 :北海道立総合研究機構 北見農業試験場)

 
◆春よ恋
●パン用の春播き小麦品種です。
●デンプンの一種アミロースの含量がやや低く、モチモチした食感をもたらすアミロペクチンの割合が高いので、柔らかいパンになるのが特徴です。


春よ恋  :試験圃場 /  :圃場
(提供 :ホクレン農業総合研究所)

 
◆きたほなみ
●平成18(2006)年に育成された新しい品種で、平成23年産からホクシンに替わり北海道の主要品種となります。
●収量が、ホクシンより2割程度多い品種です。
●品質面では、ホクシンより製粉歩留まり(一定量の原麦から粉のとれる割合)が高く、めんの色、食感が優れます。 
 

きたほなみ 栽培風景
(提供 :北海道立総合研究機構 北見農業試験場)



草姿、穂、粒(左 :きたほなみ / 右 :ホクシン)
 (提供 :北海道立総合研究機構 北見農業試験場)


「東北」
◆ナンブコムギ
●昭和26(1951)年に育成された、東北地域で長く栽培されている品種です。
●東北品種の中では比較的早生で、やや長稈で倒伏しやすいです。
●耐雪性に優れますが、縞萎縮病には弱いです。
●めん、パン、家庭用粉などさまざまな用途に使われています。 
 

ナンブコムギ 株と穂と粒
 (提供 :(独)農研機構 東北農業研究センター)


◆ネバリゴシ
●低アミロース品種で、めんのモチモチつるつるした食感が特徴です。
●ナンブコムギ並の早生で、ナンブコムギよりも多収の品種です。


ネバリゴシ  :現地圃場 /  :株標本(左からネバリゴシ、キタカミコムギ、ナンブコムギ)
 (提供 :(独)農研機構東北農業研究センター)


◆ゆきちから
●パン用の硬質コムギ品種で、製パン適性はナンブコムギよりも優れてます。
●中華麺にも多く利用されています。
●耐雪性に優れますが、穂発芽耐性が十分でないので、適期に収穫することが重要です。


ゆきちからパン (提供 :(独)農研機構 東北農業研究センター)

「関東~九州」
◆農林61号
●昭和19(1944)年に育成された古い品種ですが、関東以西で広く栽培されています。
●最近の品種に比べて晩生で、長稈で倒伏しやすく栽培しにくいことから、作付け面積が減少しています。
●めんや菓子など広い用途に使われています。

◆シロガネコムギ
●九州地域を中心とする西日本で栽培されています。
●短稈で耐倒伏性に優れますが、穂発芽耐性が十分でないので、適期に収穫することが重要です。


シロガネコムギ 試験圃場
 (提供 :(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)


◆チクゴイズミ
●初めての低アミロース品種で、めんのモチモチした食感が特徴です。
●九州地域を中心に、西日本で栽培されています。


チクゴイズミ  :圃場 /  :そうめん
 (提供 :(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)


◆ミナミノカオリ
●温暖地向けのパン用硬質コムギ品種です。
●赤かび病耐性、穂発芽耐性が十分ではないので、適期に防除、収穫することが重要です。


 :ミナミノカオリの圃場 /  :ミナミノカオリの粒
 (提供 :2枚ともに (独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)



 :ミナミノカオリ 株、穂、粒 /
 :パン(左から1CW、ミナミノカオリ、ニシノカオリ) 
(提供 :2枚ともに (独)農研機構 九州沖縄農業研究センター)


◆さとのそら
●今後、農林61号に替わる品種として、普及が期待されています。
●農林61号と異なり、一定の低温に遭わないと茎立ちしない秋播性という特性を持っていて、生育が安定しています。
●出穂期、成熟期は農林61号より2~4日程度早い早生品種です。
●農林61号より製粉歩留まりが高く、めんの色が優れています。めんのほか、菓子などへの利用が見込まれます。


 :さとのそら株標本 (さとのそら(左)、農林61号(右))
 :さとのそら生麺 (さとのそら(左)、農林61号(右))
(提供 :2枚ともに 群馬県農業技術センター)

品種選びのポイント

●コムギは冬作物で、栽培期間の気象条件、なかでも冬期の気温条件によって、作付けできる品種が異なります。
●毎年、病気や障害(穂発芽など)が発生する地域では、耐病性、障害耐性をもった品種を選定することが必要です。
●現在の麦流通制度では、実需者(製粉会社や加工業者)との播種前契約によって作付けが可能となるので、実需者の求める特性をもった品種を選定しなければなりません。

●コムギの生産地では、道府県の奨励品種決定調査によって、各道府県内での栽培に適したコムギ品種の選定が行われており、基本的には、これらの品種から、栽培する品種を選びます。

「奨励品種等を作付けするメリット」
●「栽培指針」「栽培ごよみ」が作成されています。
●県の指導が受けやすいです。
●種子が安定的に供給されます。
●通常、実需者との播種前契約は、JAなど集団で行われるので、個人で事務手続きをする必要がありません。

留意点

●実需者との播種前契約が成立すれば、奨励品種等でなくても、作付けはできます。
●奨励品種等でない品種について、農産物検査を受けるには、農政事務所に産地品種銘柄として認定されることが必要です。
●奨励品種決定調査を行っていない都府県でも、産地品種銘柄指定を受けている品種がある場合もあります。また、近隣県の普及品種であれば、比較的栽培しやすいです。
●いずれの場合も、もよりの農業改良普及センターなどにご相談されることをお勧めいたします。

執筆者 
関昌子
農研機構 作物研究所小麦育種グループ
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