提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 品種の選定 六条カワムギ

2010年12月28日

はじめに

●六条カワムギ(皮麦)は、主に精麦(押麦や切断麦などの麦ごはん)用、麦茶用に用いられています。
●現在普及している品種数は、あまり多くはありません。
●用途や気候によって適する品種が異なりますので、適正な品種を選びましょう。

品種の紹介

●以下に、主な六条皮麦品種および新品種についての特性・用途適性・栽培地域などを紹介します。品種選定の参考にしてください。

◆ファイバースノウ (育成地:長野県農業試験場
●精麦適性が優れ、精麦業界からの評価が高い品種です。
●耐雪性が強く、北陸地域を中心に主に寒冷地・積雪地域で作付けされており、六条皮麦の作付けシェアの50%近くを占めています。
●主な栽培県は、福井県・富山県・石川県・長野県・三重県・滋賀県・岩手県・岐阜県・山梨県です(は奨励品種採用県)。


「ファイバースノウ」立毛(提供 長野県農業試験場)

◆シュンライ (育成地:長野県農業試験場
●精麦適性が優れています。 
●強稈(かん)で倒伏に強い品種です。
●主に温暖地北部や寒冷地南部で作付けされており、六条皮麦の作付けシェアの20%以上を占めています。
●主な栽培県は、栃木県・宮城県・兵庫県・群馬県・長野県・福島県・鳥取県です(は奨励品種採用県)。


上から 「シュンライ」の穂 / 「シュンライ」立毛(提供 長野県農業試験場)

◆ミノリムギ (育成地:長野県農業試験場
●やや長稈で、耐寒性が強い品種です。
●かつては主に精麦用として広く栽培されていましたが、近年はファイバースノウやシュンライに置き換わりつつあります。
●主な栽培県は、宮城県・新潟県・滋賀県・岐阜県です(は奨励品種採用県)。 


「ミノリムギ」立毛 (提供 長野県農業試験場)

◆シルキースノウ (育成地:長野県農業試験場) 
●精麦白度が高く、精麦適性が優れる品種です。
●早生・短強稈で倒伏に強く、オオムギ縞萎縮病(I~III型)に抵抗性があります。
●主な栽培県は、茨城県・栃木県です(は奨励品種採用県)。 


左 :シルキースノウ / 右 :シュンライ (提供 長野県農業試験場)

◆はるしらね (育成地:農研機構 作物研究所
●炊飯後の褐変がほとんど起きない'極低ポリフェノール大麦'で、精麦業界からの生産要望が高い品種です。
●精麦品質が優れ、特に切断麦加工に適しています。
●オオムギ縞萎縮病(I~IV型)と、うどんこ病に抵抗性ですが、穂発芽耐性はやや劣ります。
●2009年度に品種登録出願されましたが、まだ(平成22年12月現在)奨励品種採用県はありません。


24時間保温後の炊飯麦
左から はるしらね、シュンライ、シルキースノウ 


◆カシマムギ (育成地:農研機構 作物研究所
●麦茶適性があり、麦茶業界からその適性が高く評価されています。
●早生で、六条皮麦の作付けシェアの約15%を占めています。
●大麦縞萎縮病に弱く、成熟期に稈の中折れが発生しやすいなど、最近の品種と比較すると栽培性がやや劣ります。
●主な栽培県は、茨城県・愛知県・千葉県です(は奨励品種採用県)。


オオムギ縞萎縮病I型ウイルス汚染圃場での発病程度
 :カシマゴール /  :カシマムギ



カシマムギは成熟期に稈の中折れが発生しやすい
 :カシマゴール /  :カシマムギ


◆さやかぜ (育成地:農研機構 作物研究所
●麦茶適性と、精麦適性(押麦用)があります。
●短強稈・多収ですが、カシマムギよりも成熟期がやや遅い中生種です。
●大麦縞萎縮病(I~III型)に抵抗性です。
●主な栽培県は、群馬県・広島県です(は奨励品種採用県)。


「さやかぜ」の穂

◆カシマゴール (育成地:農研機構 作物研究所
●麦茶適性を有します。
●カシマムギ並みの早生で、穂数が多く多収です。
●大麦縞萎縮病(I~III型)に抵抗性です。
●やや小粒です。
●2010年度に品種登録出願され、茨城県で奨励品種に採用されています。 


「カシマゴール」の穂(左からカシマゴール、カシマムギ、マサカドムギ)

品種選びのポイント

●一般的に、精麦用には「ファイバースノウ」や「シュンライ」のような'並性'品種が用いられ、麦茶用には「カシマムギ」や「さやかぜ」のような'渦性'品種が用いられています。
●用途によって、高品質の生産物を得るための適正な栽培方法(土壌条件)が異なります。
●例えば、精麦用は水田などの蛋白質含量が上がりにくい圃場で、麦茶用は畑地など蛋白質含量が上がりやすい圃場での栽培が適しています。
●気象条件によって、同じ品種でも出穂期・成熟期・稈長・穂数などが大きく異なり、収量や品質および病害・諸障害の発生にも影響します。
●播性を含めて品種の特性を把握して、栽培地に適応する品種を選んでください。
●品種によって、栽培適地の範囲が異なります。
●品種選定の際、まずは自県で奨励品種等に採用されている品種を選ぶのがお勧めです。

留意点

●各品種の詳細な特性は、育成地にお問い合わせください。
●どの県でも奨励品種等に採用されていない品種の種苗が必要な際は、育成地から入手することができます。
●精麦業界・麦茶業界では、高品質で安心・安全な国産大麦の増産と、安定供給を強く要望しています。

執筆者 
吉岡藤治
農研機構 作物研究所 大麦研究関東サブチーム長
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