提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 施肥追肥

2010年12月13日

はじめに

●ムギ類は、冬作物なので栽培期間が長く、肥切れを起こしやすい特徴があります。
●基肥だけでなく、栽培期間中に養分、特に窒素を適当な時期に追肥すると、ムギの収量や品質を高めることができます。
●窒素をいくつかの時期に分けて施用することによって、土壌からの窒素の流失が減り、施肥効率(施肥した窒素のうち作物に吸収される割合)が高まります。コストの削減にもなります。

追肥時期

●目的によって、追肥の時期が異なってきます(図1)。 


図1 麦の生育ステージと追肥の効果 (関東地方(茨城)における生育の例)

●収量構成要素(個体数、個体あたり穂数、1穂当たり小穂数、1小穂当たり小花数、小花の稔実歩合、一粒重)や子実タンパク質含有率、それぞれの決定時期に追肥をして、収量や品質を上げることができます。
●追肥には、「融雪後追肥」、「茎立期追肥」「幼穂形成期追肥」「起生期追肥」「穂肥」、「実肥」などがあります。


 :幼穂分化前期のコムギの幼穂
 二重隆起ができることで穂に分化する。これ以降を幼穂形成期とよぶ。幼穂長は約1mm
 :小花分化中期のコムギの幼穂
 節間伸長が急速に始まった頃の幼穂。幼穂長は約3mm


「融雪後追肥」 
●主に積雪地帯で行われる融雪後の追肥は、根雪期間に消耗したムギの生育を回復させたり早めたりします。
●融雪によって失われる基肥窒素を補います。 
 
「茎立期追肥」
●節間伸長が始まる頃の追肥は、ムギの穂数と1穂粒数を増やします。
●葉色の低下を抑えて光合成を盛んにするので、収量を増加させる効果もあります。
●ただし、稈長を長くするので、倒伏には注意します。


茎立期のオオムギ
茎立期のオオムギ 
冬の間ロゼッタ状に寝ていた葉が直立し始め、最下位の節が外からも見えるようになる。稈長が2cmになる頃を茎立期とよぶ 


「実肥」
●止葉展開期から開花期頃の追肥は、子実を充実させます。
●1粒重、容積重、子実タンパク質含有率を上げる効果もあります。
●実肥により小麦粉の白さや明るさが低下する場合もあるので、注意します。
●製パン用や中華めん用、醸造用のコムギなど、子実タンパク質含有率が高いことが特に求められるものでは、遅い時期に追肥すると効果が高くなります。

追肥量

●追肥量は、必要とする全窒素量を、いつの時期に何回に分けて行うかという視点で決めると、過剰施肥を防ぐことができます。
●正常に生育したコムギの場合は、窒素吸収量が増えると子実収量が増えるという試算があります。子実収量400kg/10aの場合、11kg/10aの窒素が必要です(寒地の場合)。
●さらに施肥効率も加味して、実際に施用する窒素量を増やします。
●地力や、堆肥由来の窒素量によっても、変わってきます。
●一般に、秋播の麦では、麦がまだ小さくて多くの窒素を吸収できないこと、冬期の積雪や降雨で窒素が流失することから、基肥の施肥効率は高くありません。
●生育が進み、気温が高くなってからの追肥は、基肥よりも施肥効率が高めです。
●気温が高くなると土壌からの窒素供給が増えるので、地力の高い土壌では、その分の減肥を行わないと、倒伏などの原因となります。
●地域によって、窒素供給量と子実収量の関係や、土壌由来の窒素量は異なります。
●品種によっても、窒素供給量と子実収量の関係が異なります。
●追肥時期や量については、地域の普及指導センターなどの情報を参考にしてください。

追肥上の注意点

●粒状の肥料は、降雨がないと作物に吸収されず、効果がでないことがあります。
●肥効調節型肥料を使って追肥する場合は、土入れなどを合わせて行うと、追肥効果がでやすくなります。
●晩期に追肥する場合は、赤カビ病防除と同時に行う尿素などの葉面散布で追肥することもできます。
●葉面散布では、濃度の濃い溶液を散布すると肥料焼けを起こすので、尿素溶液は2%程度にします。そのため、一回の散布で施用できる窒素の量は、限られます。
●晩期の追肥でトラクタでの作業が困難な場合は、乗用管理機等の最低地上高の高い作業機を使います。


コムギの追肥
乗用管理機による開花期追肥

執筆者 
島崎 由美
農研機構 中央農業総合研究センター関東東海水田輪作研究チーム
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