提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 作付体系

2010年12月 7日

はじめに

●ムギ類は、冬場に栽培されるため、作付体系に組み込むことで耕地の利用率を高め、農家の収益性、そして食料自給率の向上に役立つ重要な作物です。
●他の作物と組み合わせて連作障害を回避するとともに、効率的な作業体系、施肥体系を構築する必要があります。
●水田輪作体系においては、土壌の畑地化を図る排水対策を見越した作付体系も重要です。

連作障害を回避する作付体系

「連作で被害が増加する病害」
●ムギ類の連作によって被害が増加する病害には立枯病、大麦縞萎縮病、小麦縞萎縮病、麦類萎縮病などがあります。
●立枯病は、乾燥した条件で多発するため、畑や固定転換畑で発生が多くなっています。被害が認められた固定転換畑では、水田に戻し、田畑輪換を行うことで発生を抑制することができます。 


立枯病 (提供 :中央農業総合研究センター 渡邊好昭)

●大麦縞萎縮病はコムギには発生せず、一方で小麦縞萎縮病オオムギには発生しないので、3年程度麦種を切り替えることで、被害を軽減できます。
●小麦縞萎縮病の病原ウイルスの増殖適温は10℃なので、播種時期を遅らせることで、生育初期の発生を抑制することもできます。 
 

 :大麦縞萎縮病 /  :小麦縞萎縮病

「抵抗性品種への切り替え」
●ムギ種の切り替えや播種時期の変更が困難な場合は、近年育成された抵抗性の強い品種への切り替えも有効です。
●六条オオムギでは、「シュンライ」から「シルキースノウ」、「カシマムギ」から「カシマゴール」、二条オオムギでは、「ミカモゴールデン」から「スカイゴールデン」への切り替えなどが効果的です。
●コムギでは、「農林61号」から「イワイノダイチ」、「ふくさやか」、「さとのそら」等の抵抗性品種への切り替えが効果的です。また、北海道向けの新しい品種「きたほなみ」も従来の主力品種の「ホクシン」に比べて抵抗性が向上しています。

輪作による雑草害の軽減

●田畑輪換を行わないで麦作を続けていると、畑雑草が優占してきます。
●特にヤエムグラやカラスノエンドウは出芽期間が長期にわたるため、土壌処理除草剤での防除が困難です。
●雑草防除の観点からも、水稲栽培と組み合わせた作付体系が有効になります。
●前作にソバを栽培すると、収穫時の落ち種が翌春に出芽、結実しやすく、ムギの収穫物に混入すると大きな問題になります。次にムギの栽培を予定している畑では、ソバの栽培は行わないよう作付体系を工夫する必要があります。

水田転換畑における水田輪作体系

●ここでは、今後生産が拡大される水田転換畑における水田輪作体系について述べます。
●水田輪作体系の中で、ムギ類は水稲およびダイズとの輪作体系が組まれることが多いです。
●地域ごとに違いはありますが、この組み合わせの中で作業競合が起きやすいのは、ムギの収穫と水稲の移植、またはダイズの播種、ムギの播種とダイズの収穫作業などです。
●ムギの赤カビ病の防除と水稲の移植作業が競合することもあります。
●これらを念頭において、経営規模に合わせた栽培作物・品種の選定、また作業体系を決める必要があります。
●水稲の移植との作業競合を回避するためには、水稲の一部を直播栽培することも考えられます。
●オオムギは、収穫時期がコムギに比べて2~3週間早いので、水稲との2毛作体系では有利です。

排水性の高い圃場作り

●ムギ類は、乾燥した気候の中央~西アジアが原産の作物なので、保水性を重視した水田での栽培では、湿害を受ける場合があります。
●したがって、積極的な排水対策を実施し、土壌の物理性をできるだけ畑に近づける必要があります。
●播種前の排水対策については、別項の「排水対策」をご覧ください。

「前作物・水稲の管理法」
●ここではムギの排水対策を考慮した、前作物の水稲の管理法について述べます。
●前作の水稲栽培にあたって、後作にムギの作付けを予定している水田では、できるだけ収穫時期が早くなるように水稲の植え付け順序、また品種を選び、水稲収穫後に圃場を干す期間を長く確保します。
●水稲収穫後に、早めに荒起こしを行うことも、土壌の畑地化を促進します。
●水稲の中干しを強めにすることで、土壌中に亀裂の発生を促進することも麦作時の排水性を高めます。
●後作にムギの作付けを予定している圃場では、乾田直播栽培を行うことで、代掻きを行う移植栽培や湛水直播栽培に比べて、排水性が高まり、畑地化も進みます(下写真)。 
 

代掻き移植後(左)と不耕起乾田直播後(右)

●水稲-麦-大豆の2年3作体系より、同じ転作率であれば水稲-水稲-麦-大豆-麦-大豆の4年6作体系の方が2回目の麦および大豆の生産には有利です。

効率的な施肥体系の導入

●近年、肥料価格が高騰して、経営改善のためには肥料代の節約が重要になっています。
●施肥量は、ムギも水稲もダイズも、それぞれの必要量に応じて決められています。
●施肥された肥料の一部は、作物に吸収されることなく土壌中に蓄積し、また、吸収された肥料の一部も藁や莢殻として圃場に還元されます。
●土壌診断に基づいた適切な施肥量の決定は重要ですが、作付け体系を見通した、効率的な施肥体系を導入することも大切です。
●ムギ後のダイズ栽培で施肥が省略されたり、水稲でLP肥料のみの一発施肥が行われたりすることがありますが、長期的に見るとリン酸やカリが不足してくることが予想されます。
●このような場合、麦作時に後作のダイズや水稲が必要とするリン酸やカリを施肥してやる必要が生じます。
●土壌中での移動が少ないリン酸は、ムギの基肥として増施し、またカリはムギ自体の要求量も大きい茎立ち期の追肥時期に増施する、などの工夫が必要になります。

執筆者 
渡邊和洋
農研機構 中央農業総合研究センター 関東東海水田輪作研究チーム
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