提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

麦編 排水対策

2010年11月17日

排水の目標

●排水対策は、水田での麦作には必須の作業です。
●どのような排水対策を選択するかとなると、排水性が圃場ごとに違うため、一般論として示すことは難しく、圃場毎に最適な方法を選択すべきとしか言いようがありません。
●重要なのは、「地下水位を下げること」、「滞水した時に早く水が引くようにすること」の2点です。
●地下水位の目標値は、できるだけ低い方が良いのですが、現実には50cmあれば良いでしょう。
●多収が得られる畑では、100cm程度まで根系が発達しているというデータがあります。一方、地下水位が20cmでも、600kg/10a以上の収量を得たデータもあります。
●このように、地下水位の目標値は、圃場条件にあわせて設定することが必要です。
●滞水した時に水が引く時間の目標値もできるだけ短い方が良いのですが、1日以内に水が引き、部分的な滞水がおきなければ、大きな問題は生じないと考えられます。

排水の方法

「地表排水と地下排水」
●排水の方法は、「地表排水」と「地下排水」があります。
●地表排水には周囲明渠、基幹明渠とそれにつながる小明渠、また、畝立て栽培では溝部分も含まれます。
●地下排水には、本暗渠と補助暗渠があります。
●補助暗渠には弾丸暗渠や籾殻暗渠などがあり、本暗渠と組み合わせることで威力を発揮します(下図)



2010mugi_haisui_6.jpg  
左から上から サブソイラ+弾丸 / 作業のようす


地中の弾丸

「排水の方法」
●地下水位を低下させるにも、滞水時間を短くするにも、過剰な水をできるだけ早く圃場の外(排水路)へ排出することが重要になります。 
●周囲明渠を掘っても、排水路への口をつながなかったり、周囲明渠と基幹明渠をつなげなかったりすれば、圃場から水は出ていかず、明渠に水がたまるだけで排水の効果は現れません。
●水稲用の排水口は高いところにあるので、これでは麦用には使えません。
●水尻側の明渠を深くして、そこから排水できるように畑作用の排水口を作る必要があります(右写真)
●地下水位を下げることを目標とすると、一枚ごとの圃場の排水対策だけでは限界があります。
●ブロックローテーションを行って区域全体の地下水位を下げます。
●その場合、排水路を境とするブロックにすることが重要です。
●道路を境にすると、道路の下を通って麦の圃場に水が侵入してくる場合があるので注意します。

「排水対策をする時期」
●ムギに対する湿害が著しくなるのは、気温が上昇する春季以降と言われています。
●これは、湿害の原因が土壌中の酸素不足だけでなく、還元が関与しているためです。
●春までに排水対策を実施すれば、かなりの効果が得られることがわかります。
●冬季、ムギの立毛中にサブソイラ作業を実施して排水を良くしたり、土入れと同時にロータリカルチによる溝掘りを行って、排水性を良くすることで、増収が期待できます。

新しい技術の紹介

●播種時に畝立てをすることも、有効な湿害対策になります。

「耕うん同時畝立て播種」
●耕うん同時畝立て播種機は、アップカットロータリの爪の方向を変えることで、播種と同時に畝を作る播種機です。
●表層に細かい土、下層に荒い土塊がくるので、排水性の高い畝ができます。
 
「小明渠作溝浅耕播種」
●小明渠作溝浅耕播種機は、ロータリのサイドに浅い小明渠を掘るディスクを付け、一工程で平畝を作りながら浅耕播種ができる機械です。

「新しい技術のメリット」
●いずれの方法も、できた溝を周囲明渠につなぐことで、排水性が改善されます。
●これらの技術は、大豆300A技術としてダイズ用に開発されましたが、ムギにも利用できて、増収が期待できます。

「地下水位制御システム」
●圃場自体を改造する方法として、地下水位制御システム(FOEAS)が開発されました。
●水位調節器と暗渠、弾丸暗渠を組み合わせた圃場の給水、排水システムで、水位を地下30cmから圃場面+20cmまで制御することができます。
●弾丸暗渠が1m毎に設置されているため、排水性はきわめて良好です。
●出穂期以降に雨が少ない地域では、有効な干害対策にもなると考えられており、高品質化に対する効果が期待されています。

地下水位制御システムマニュアル』(農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター 大豆生産安定研究チーム)

執筆者 
渡邊好昭
農研機構 中央農業総合研究センター研究管理監 兼 研究支援センター長
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

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