提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

大豆編 大豆の品種と加工適性

2009年8月31日

(2015年7月 一部改訂) 

はじめに

●大豆はタンパク質や脂質に富み、炭水化物が主体の米や麦などの栄養を補完できる、優れた作物です。
●主に豆腐、味噌、納豆、煮豆、醤油など伝統的食品に加工されますが、最近では豆乳類、豆乳アイスクリーム、お菓子など、さまざまな新しい大豆食品が作られています。
●また、分離大豆蛋白は、ゲル化力や粘着力などを利用して、ハムや水産加工品の食感改良材などに用いられています。
●大粒品種などでは、豆腐・煮豆兼用など多用途で用いられる品種もあります。
●用途別の主な品種は、農林水産省のホームページ「国産大豆品種の事典」を参照ください。

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大豆粉を使用したクッキーとパン。
大豆クッキーは小麦粉に対して大豆粉同量、大豆パンは同10%使用。色が濃いクッキー、パンは黒大豆を使用、クッキーの黒い粒は小粒黒大豆

豆腐用~タンパク質含量が高く栽培しやすい品種を選ぶ

「収量が高く栽培しやすい品種を選ぶ」
●需要量が大きいため、ある程度まとまって作付けできる品種が有利です。「フクユタカ」「エンレイ」など主要な品種は豆腐に適しています。
●煮豆用に比べて販売価格が低いので、極端に外観品質が悪くなければ、収量性や栽培のしやすさで品種を選びます。
●豆腐では、煮豆などに比べて子実の外観品質の製品への影響は少ないですが、検査等級に影響しますので、褐斑や紫斑の出にくい品種を選びます。

「タンパク含量が高く凝固性の良い品種を選ぶ」
●豆腐はタンパク質を固めて作る食品なので、タンパク含量が高い品種を選びます。
●極端にタンパク含量が低い品種は、豆腐には向きません。
●最近の研究で、豆腐加工の際に、種子中のカルシウムが凝固剤を補完し、フィチン酸が凝固剤の働きを阻害することが明らかになってきました。
●タンパク含量が同じなら、カルシウム含量が高くフィチン酸含量が低い品種が、豆腐に適すると考えられます。

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豆腐用には蛋白含量が高い品種を選ぶ

「食味の良い品種を選ぶ」
●甘みには糖類が関わるので、甘みを出すには、ショ糖含量が高い品種が向いています。
●硬い豆腐は甘みを感じにくいので、タンパク含量が極端に高い品種は美味しい豆腐には向きません。

納豆用~裂皮の少ない外観品質の良い品種を選ぶ

「外観品質が良い品種を選ぶ」
●裂皮が少なく、へそ色が黄色の外観品質が良い品種が向いています。
●紫斑や褐斑の少ない品種を選びます。
●「スズマル」や「納豆小粒」など、極小粒~小粒の大豆を用いた納豆が多く出回っていますが、大豆本来の味を楽しみたいときは、やや大きめの品種を選びます。
●最近では中粒品種を使った納豆や、「タマフクラ」のような極大粒品種を使った納豆も増えています。

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小粒の「スズマル」(左)と極小粒の「納豆小粒」(右)で作った納豆。最近は中大粒の納豆も増加している

「納豆に適した成分は」
●納豆に適した成分については、まだ十分明らかになっていませんが、納豆菌の栄養分となる全糖含量が高く、脂肪含量が低い品種が向いていると言われています。

「石豆の発生を抑える」
●石豆(吸水しにくい豆)が生じやすい品種や蒸煮した豆が硬い品種は、食感が悪くなるので納豆に向いていません。
●石豆は、過乾燥でも生じるので、適切な乾燥調製を行うことも重要です。また、過乾燥は裂皮や割れを生じることもあります。

「収量を確保する」
●極小粒~小粒の品種は、普通品種に比べて収量が低いので、適切な栽培管理をして収量確保に努めます。

煮豆用~大粒で外観品質の良い品種を選ぶ

「外観品質が良い品種を選ぶ」
●種皮のくすみがなく、へそ色は種皮色と同色で、裂皮しにくい、外観品質が良い品種を選びます。
●煮豆は煮くずれが少なく、煮上がりの外観が良いことが求められます。

「粒が大きい品種を選ぶ」
●煮豆用品種の粒大は、黒大豆では百粒重が50~70g以上、黄大豆では35~40g以上が一つの目安になります。
●必要に応じて、収穫後に選粒して粒大をそろえます。
●大粒品種は裂皮や割れが生じやすいので、適期に収穫するとともに、乾燥調製を適切に行います。

「食味」
●蒸煮した豆が硬い品種は、食感が悪いので煮豆には向いていません。
●「もちっとした」あるいは「なめらかな」食感の品種が向いています。

「成分」
●煮豆に適した成分は、納豆と同じく十分解明されていません。
●一般的には、蛋白含量が中程度で、全糖含量が高いものが適していると言われています。

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黒大豆の煮豆(左)と黄大豆の煮豆(右)。
煮たときに皮切れが少ない大粒の品種を選ぶ

味噌用~蒸煮大豆の色が良い品種を選ぶ

「さまざまな品種が使われている」
●「あきまろ」のような味噌用品種も育成されていますが、味噌用を主目的とした品種は少ないため、煮豆・豆腐用などの中から、条件にあったものを選びます。
●比較的低価格の大豆が使われることが多いので、多収の品種を選びます。

「蒸煮大豆の色調」
●見ばえの良い味噌を作るためには、蒸煮した豆の色調が重要です。
●蒸煮大豆の色合いが明るく、黄色みが強い品種が向いています。
●煮上がりの色が悪い緑大豆は、味噌には向いていません。

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淡色系味噌(左)と赤色系味噌(右)

「蒸煮大豆の硬さ」
●軟らかく煮える品種が味噌に向いています。
●石豆が生じやすい品種や蒸煮した大豆が硬い品種は、味噌の食感が悪くなるので向いていません。

「成分」
●味噌には、全糖含量が高く、脂質が少ない品種が向いているとされています。
●また色調と関連する、カロチノイド含量が高い品種が良いと言われています。

新規用途品種~販売先の確保や普通大豆の混入防止が重要

 近年、中山間地域を中心に地域村おこしのために、緑大豆などの特色ある大豆品種を栽培する動きが強まっています。また機能性表示制度の変更に伴い、新たなビジネスチャンスを求めて、機能性が期待される成分を多く含む大豆についても関心が高まっています。
 こうした新規用途品種は種子の入手や栽培管理に注意が必要ですので、農業改良普及センターや育成地と相談しながら栽培します。

「緑大豆」
●きな粉や浸し豆などに用いられる緑大豆は、色合いが重要なので、子葉色が緑で、かつ緑色が濃く鮮やかな品種を選びます。
●緑色の退色を防ぐために、適期に収穫するとともに、冷暗所で保管します。

「成分を改変した品種」
●大豆の青臭みの原因酵素であるリポキシゲナーゼを欠失した「エルスター」や「すずさやか」などは、おいしい豆乳や豆乳デザートに向いています。
●小麦粉などと混ぜて、大豆クッキーなど、新たな食品の開発にも利用できます。
●リポキシゲナーゼに加えて、サポニンを欠失した「きぬさやか」は、えぐみが少なくなるので、よりすっきりした味わいの豆乳を作ることができます。
●アレルゲンタンパク質の一部を欠失した「なごみまる」は、適切な低アレルゲン化加工技術と組み合わせることによって、アレルゲンフリー食品を作ることができます。

「新規用途品種の栽培」
●新規用途品種は、用途が限られることが多いので、契約栽培などで販売先を確保してから作付けるようにします。
●普通品種の混入を避けるため、コンバインや乾燥施設を別にする、などの工夫が必要です。

「健康機能性」
●大豆にはイソフラボン、β-コングリシニン、サポニンなどの健康維持や増進効果が期待される成分が多く含まれています。
●しかし、「特定保健用食品」や「機能性表示食品」制度に基づいて機能性表示を行う場合、ガイドラインに基づく表現や科学的根拠の提示など、さまざまな制約があります。
●生産から販売まで、しっかりした商品開発戦略を立てておく必要があります。

[β-コングリシニン]
●大豆の主要な貯蔵タンパク質の一つで、中性脂肪低減効果が期待される成分です。
●高β-コングリシニン品種として「ななほまれ」が育成されています。
[イソフラボン]
●骨粗鬆症予防や更年期障害軽減などの健康増進機能性が期待される成分です。
●登熟期の気温が低い地域ではイソフラボン含量が高くなる傾向があり、「ふくいぶき」「ゆきぴりか」など、高含量品種も育成されています。

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さまざまな大豆

執筆者 
羽鹿 牧太
農研機構 作物研究所 畑作物研究領域長

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