大豆編 虫害防除
2009年07月15日
主要害虫
●北海道、北東北などの寒冷地では、寒冷地系害虫のマメシンクイガと、ダイズわい化病を伝搬するジャガイモヒゲナガアブラムシが、主要害虫です。
●西南暖地では、暖地系害虫のカメムシ類とシロイチモジマダラメイガ、ダイズサヤタマバエが、主要害虫です。
●西南暖地では、年によっては、ハスモンヨトウが多発して問題となります。
●中間地では、寒い年には寒冷地系害虫が、暑い年には暖地系害虫が多くなります。
●東北以南では、フタスジヒメハムシが問題となることがあります。
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「ダイズの害虫相の地帯区分(Kobayashi,1976 を改変)」
点線は1月の月平均気温が-1.5℃と+2.0℃の等温線を示します。
-1.5℃以北では寒冷地系害虫が、+2.0℃以南では暖地系害虫が主体となっています。
防除上の留意点
●最新の登録情報にしたがって殺虫剤を使用し、周囲へ飛散しないように注意します。
●害虫の発生状況にもよりますが、防除の主な対象は、収量へ直接影響する「子実害虫」です。
●魚毒性の高い殺虫剤を、河川等に流入しないように注意します。
「子実害虫の防除」
●子実害虫の多くは莢の付近にいるため、群落内部にある莢にも殺虫剤がかかるようにします。
●液剤を使う場合は、10a当たり150~200ℓ用意します。
●複数の子実害虫が問題となる地域では、同時に防除すると効率的です。
●殺虫剤を開花期の12日前後と、その後10~15日間隔で2回の計3回散布する体系では、次のように防除します。
1回目(ダイズの開花終期から莢伸長初期) :ダイズサヤタマバエ
2回目(子実肥大初・中期) :シロイチモジマダラメイガ、マメシンクイガ、サヤムシガ類、カメムシ類
3回目(子実肥大中・終期) :シロイチモジマダラメイガ、マメシンクイガ、カメムシ類
「初期害虫の防除」
●北海道と北東北では、ダイズわい化病を伝搬するジャガイモヒゲナガアブラムシに、最も気をつけます。
●未熟な有機物を施用したり、低温で発芽が遅れると、タネバエの防除も必要です。
「茎葉害虫の防除」
●ダイズの莢伸長初期~子実肥大初期に、茎葉害虫が葉を食害すると、収量に最も影響します。
●開花15日前では約50%、莢伸長初期~子実肥大初期で約30%以上の葉が食害されると、減収します。
●防除しすぎると天敵が減少し、これに乾燥が重なると、ダニが多発するので注意します。
子実害虫の防除
「マメシンクイガ」
●日本中に広く分布する寒地系害虫で、冷涼な地域や低温年に多く、関東以西では山間地に発生します。
●ほとんどの地域で、年1回発生します。
●成虫は、場所により8月中旬から9月上旬の特定の時期に、発生します。
●莢伸長期の莢(長さ2~4cm以上)上に好んで産卵します。
●孵化幼虫は、莢内に食入して子実を食害し、蛹化前に莢に楕円形の穴を開けて脱出します。
●被害粒は虫食い豆となります。
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マメシンクイガ 左 :成虫 / 右 :幼虫と被害
<対策>
●防除には、産卵盛期とその7~10日後の2回、殺虫剤(スミチオン乳剤、エルサン乳剤、バイジット乳剤、サイアノックス乳剤など)を散布します。
●ピレスロイド系殺虫剤(トレボン乳剤・粉剤DL、バイスロイド乳剤、パーマチオン水和剤など)は残効性が高いので、1回で高い防除効果が得られます。
●成虫の羽化前が高温だと、発生が長引くので注意します。
●移動性が低いため、連作すると発生量が増加します。3回以上連作すると、被害が急増します。
●被害を回避するには、輪作や小粒種の栽培、または成虫羽化と産卵適期が重ならない栽培をするとよいでしょう。
「カメムシ類」
●主要種はホソヘリカメムシ、イチモンジカメムシ、アオクサカメムシ、ブチヒゲカメムシの4種です。
●ホソヘリカメムシとイチモンジカメムシは主にマメ科植物を、アオクサカメムシとブチヒゲカメムシは、各種の植物を寄主としています。
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ホソヘリカメムシ 左 :成虫 / 右 :幼虫
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イチモンジカメムシ 左 :成虫 / 右 :幼虫
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アオクサカメムシ 左 :成虫 / 右 :幼虫
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ブチヒゲカメムシ 左 :成虫 / 右 :幼虫
●近年、南方系の斑点米カメムシでもあるミナミアオカメムシが、分布域を拡大しています。
●いずれも暖地系の害虫で、成虫越冬し、年間2~4世代発生します。
●成虫、幼虫ともに、口針を莢に差込み吸汁します。
●その結果、莢が落下したり、偏平(板莢)となって収量の減少に、子実が変形・変色して品質の低下に、また、ひどく加害されると葉が青いまま残り、いわゆる青立ちとなります。
●吸汁による被害は、莢伸長期~収穫期の全期間にわたり、特に莢伸長中期~子実肥大中期の約20日間に多発します。
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左 :カメムシ類による不稔被害/ 右 :カメムシ類による変形粒被害
<対策>
●産卵最盛期にも当たる、莢伸長中期~子実肥大中期が、防除適期です。
●防除剤にはピレスロイド系(パーマチオン水和剤、トレボン乳剤・粉剤DLなど)、ネオニコチノイド系(アルバリン・スタークル顆粒水溶剤、ダントツH粉剤DLなど)、有機リン系殺虫剤(スミチオン乳剤・粉剤3DL、エルサン乳剤・粉剤3DLなど)などがあります。
●防除には、残効の長いものを使用します。
●ミナミアオカメムシには、ネオニコチノイド系殺虫剤の効果が高いといわれています。
●7月播種などの遅植えをすると、被害が少ない傾向があります。
●なお、西日本で発生の多いマルカメムシは、茎葉を加害しますが、株当たり30個体程度までは被害が出ません。
「シロイチモジマダラメイガ」
●暖地系の害虫で、主に北陸・関東以西に分布して、年3~4回発生します。
●関東では、5月下旬~11月まで年3回発生します。
●莢伸長終期~子実肥大初期に、最も盛んに莢の根元付近に産卵します。
●孵化した幼虫は、24時間以内に莢内に食入して子実を食害し、蛹化前に莢に円形の穴を開けて脱出します。
●被害粒は虫食い豆となります。
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シロイチモジマダラメイガ 左 :成虫 / 右 :幼虫と被害
<対策>
●防除適期は、産卵食入の多い子実肥大初中期で、スミチオン乳剤、エルサン乳剤、トレボン乳剤、パーマチオン水和剤などを散布します。
●関東地方等では、発生の多い第1、3世代の発蛾盛期と産卵食入時期が重ならないように栽培すると、被害が軽減されます。
「ダイズサヤタマバエ」
●暖地系の害虫で、本州以南に分布し、北海道には分布しません。
●バクチノキなどで幼虫越冬して、5月に羽化します。
●その後、野生マメ科植物やダイズで2~3世代を経過し、10月にバクチノキなどに産卵します。
●成虫の見かけは蚊のようで、花が終わった直後の時期に、最も盛んに莢内に産卵します。
●孵化幼虫は、白色の糸状菌と共生して加害します。
●加害された莢は、一部が小さく膨れて虫えい(虫こぶ)となります。この部分は生長しないため、きわめて小さな莢、あるいは一部が細まった奇形の莢となります。
●被害を受けた莢には、蛹の脱皮殻が付着していることが多く、被害がわかります。
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ダイズサヤタマバエ 左 :成虫 / 中 :被害莢(外観) 右 :被害莢(中)
<対策>
●防除適期は、産卵最盛期の開花終期~莢伸長初期で、スミチオン乳剤、バイジット乳剤、トレボン乳剤などを散布します。
「ダイズサヤムシガ」
●暖地系の害虫で、年2~3回発生します。
●ダイズの生育初期に、新芽や若葉をつづり合わせて食害します。
●莢形成後には、莢同士あるいは茎葉も混ぜてつづり合わせ、内部の子実と同時に莢も食害します。
●被害粒は虫食い豆となります。
●よく似たマメヒメサヤムシガも、ダイズを加害します。
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ダイズサヤムシガ 左 :成虫 / 右 :被害
<対策>
●防除適期は、莢伸長終期~子実肥大中期で、スミチオン乳剤などを散布します。
初期害虫の防除
「アブラムシ類」
●北海道と北東北では、ダイズわい化病を伝搬するジャガイモヒゲナガアブラムシに最も気をつけます。
●クローバー類からダイズへ、わい化病を伝搬します。
●ダイズモザイク病は、各種のアブラムシにより媒介されます。
●ダイズアブラムシにも注意が必要です。
●この2種(ジャガイモヒゲナガアブラムシとダイズアブラムシ)が異常発生し、吸汁害で落葉が早まり、減収することがあります。
●過度の殺虫剤散布による天敵の減少も、原因の一つといわれます。
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ジャガイモヒゲナガアブラムシ 左 :成虫と幼虫 / 右 :被害葉
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左 :ジャガイモヒゲナガアブラムシによる吸汁害 / 右 :ダイズアブラムシ成虫と幼虫
<対策>
主にダイズわい化病対策として、
●播種時に浸透性殺虫剤(ダイシストン粒剤など)を土壌施用すると、防除できます。
●種子にクルーザーFS30を塗沫処理して播種するのも、効果があります。
●飛来の多い場合は、ダイズ出芽期からピレスロイド系殺虫剤(アディオン乳剤、トレボン乳剤など)、あるいはオルトラン水和剤を茎葉散布します。
●ダイズ播種を遅くする(6月)と、飛来最盛期から外れるので、発病は軽減されます。
●べた掛け被覆資材を利用すると、被害防止に効果があります。
主にダイズモザイク病対策として、
●抵抗性の品種の使用や、殺虫剤を施用するなどして、防ぎます。
●種子には、褐斑粒を用いないようにします。
「フタスジヒメハムシ」
●東北以南で問題となり、年2~3回発生します。
●成虫は葉や茎、花を食害するだけでなく、莢の表面を食害するので、黒斑粒になります。
●幼虫は、老熟するまでに数粒の根粒を食害するので、多発するとダイズの生育が悪くなります。
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フタスジヒメハムシ
左 :成虫 / 中 :莢被害 / 右 :加害を受けた莢内の黒斑粒
<対策>
●播種時にダイシストン粒剤などを播種溝散布すると、発生初期の防除効果が高くなります。
●ダイシストン粒剤などは、高温時などに、大豆バサグラン液剤(除草剤)との併用で薬害を生じることがあるので、注意が必要です。
「タネバエ」
●未熟な有機物を施用したり、低温・多雨で発芽が遅れると、タネバエに食害されて発芽不良となります。
<対策>
●播種時にダイアジノン粒剤5・粒剤3などを土壌施用し、防除します。
●粉衣用ノマート25を種子に粉衣して播種するのも、効果があります。
右 :タネバエ被害(提供 :斉藤修氏)
茎葉害虫の防除
「ハスモンヨトウ」
●南方系の害虫で、冬季休眠性を持たないため、ハウス内で越冬して発生、あるいは長距離飛来します。
●発生量は、年次によって大きく変動します。
●成虫は、ダイズの葉裏に数百粒の卵塊を産みます。
●孵化幼虫が集団で葉肉のみを食害するため、害葉は全体が透けて白く見えます(白化葉、白変葉)。
●幼虫が大きくなると食害量が増え、薬剤の防除効果が下がります。
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ハスモンヨトウ 左 :成虫 / 右 :幼虫
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左 :ハスモンヨトウによる白化葉 / 右 :ハスモンヨトウの被害
<対策>
●早期発見と早期防除が基本です。
●白化葉のピーク時と、その7~10日後が防除適期です。
●防除薬剤は、脱皮を阻害するアタブロン乳剤やノーモルト乳剤、神経系を麻痺させるトルネードフロアブル、カーバメート系(ラービンフロアブル)、有機リン系(エルサン乳剤)、ピレスロイド系殺虫剤(トレボン乳剤・粉剤DL)など多種多様です。
●脱皮を促進させて幼虫を殺すため、老齢幼虫にも効果のあるIGR剤(マトリックフロアブル、ロムダンゾル)もあります。
●本種の病原の核多角体病ウイルスを製剤化した「ハスモン天敵」という防除剤もあります。この剤は発生初期に施用します。
「ウコンノメイガ」
●北陸や東北日本海側で多く、年2回発生します。
●孵化幼虫は、はじめ葉縁の一部を折り曲げますが、成長するに応じて大きく葉を巻いて食害します。
●播種期が早いほど、発生量が多いとされています。
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ウコンノメイガ 左 :成虫 / 中 :幼虫 / 右 :幼虫による葉巻被害
<対策>
●防除適期は葉を巻きはじめた頃で、登録農薬にはサイアノックス粉剤があります。
その他害虫の防除
「ダイズシストセンチュウ」
●日本全土に分布しますが、特に北海道や東北等で被害が多く、問題となります。
●根に寄生し、茎葉が黄化して生育不良となり、収量が減少します。
●根粒バクテリアの着生も阻まれ、根には径0.5mm前後の白色または褐色のシスト※1が着生します。
●被害株の多くは、一圃場内でも部分的にかたまって分布します。
右 :ダイズシストセンチュウの寄生で黄化したダイズ
※1 シスト: 包嚢、嚢子と呼ばれる
<対策>
●抵抗性品種を組み入れた4年以上の長期輪作、あるいは田畑輪換を行い、土壌中の線虫密度を高めないようにすると、防除効果があります。
●一度、本種が発生した圃場は、伝染源になります。洗浄するなどして、農機具や作業靴などから他の圃場に線虫が広まらないよう、注意します。
菊地淳志
農研機構 近畿中国四国農業研究センター 上席研究員
※本文中の農薬についての記述は、平成21年6月現在のものです。使用する場合は、最新の登録情報をご確認ください。
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)







